第20話

【紫呂 side】

「戻ったか。」


「瀧!?顔近い!!デカいんだから寄るなよな。」


「返してもらったみたいだな。」


「おう。忘れてたぜ。目も戻ってるだろ?龍と契約した黄金の瞳だ。」


「あぁ。なんとも懐かしい。」


「悪かったよ。自分で置き去りにしたこと忘れてた。」


「だが紫呂が力を戻したことで他の3人が探しやすくなるはずだ。」


「そっか。待ってようぜ。」


「あぁ。」


紫呂は胡座をかき、瀧にもたれ3人が目覚めるのを待った。


【哉汰 side】

「力見ようにも見えないし…無闇矢鱈と歩き回るのもどうかと思う。皆が同じ状況なら何かしら見えてくる…水?」


哉汰が突っ立っていると手に水が当たったように思えた。


「まさか紫呂に先を越されるとはね。思ってもなかったよ。どうしようかな…魔法を使うにも危ないし、紫呂は歩き回ったんだろうけど…灯火トーラ。」


哉汰は紫呂と同じように灯りをつけて周りを見回した。


「うーん…。エン。」


小さな炎を出したつもりが何故か大きな炎となり、そこから誰か現れた。


「僕?」


“正解だよ。”


2人はただ呆然と立ち尽くしている。


「戦う?」


“いや。”


「なんでそんなにボロボロなの?」


“なんでだと思う?”


「なぞなぞは好きじゃないよ。」


“僕もだ。”


「ここから出たいんだけどどうすればいい?」


“僕に聞かないでよ。”


「君が分かるんじゃないんだ。」


“そうだね。”


「自分に対してどうするか。焔は?」


“外にいるよ。”


「ここには入れないの?」


“無理だね。”


「あんまり暇じゃないんだけど。」


“でもここを出たいから僕しかいないんでしょ?”


「力貸してくれないかな?」


“それは出来ない。”


「僕なのに?」


“そう。君なのに。”


「…。」


“君には何かが足りないんだよ。”


「力じゃなくて?」


“力もそうだけど。完全じゃないんだ。”


「それを君が持ってると?」


“正解。”


「なら返してよ。」


“出来ない。”


「何で?僕のでしょ?」


“君のだけど切り離したのも君だから。”


「うーん…。」


“嬉しいなそうやって僕の事だけ考えてくれてるの。”


「ずっとここに居たの?」


“そうだよ。ここで君を待ってた。”


「僕ユピテルにはいたよ。」


“知ってるよ。だから何度も声をかけたけど聞こえてなかったんだと思うよ。”


「それはごめん。」


“いいよ。こうしてまた会えたから。”


「君は昔の僕?」


“正解。”


「疵奈や紫呂、美都のことも知ってるの?」


“一緒だったから知ってるよ。”


「でも死んだんだよね。」


“僕だけ置いて死んじゃった。”


「…僕の記憶の一部ってこと?」


“そうだよ。君の記憶の一部。”


「記憶の一部。…欠けてる。…悲しみ?」


“正解。”


「僕は君を置いていったの?」


“そうだよ。”


「どうすれば戻ってくれる?」


“それは僕にも分からない。”


「怒ってないの?」


“怒ってるよ。炎ってさ暖かいんだよね?”


「え?…うん。 」


“僕の炎は冷たいんだ。何を話しても答えてくれない。昔なら答えてくれたのに。”


「うん。」


“君が起きちゃったから焔の欠片も取られちゃった。”


「うん。」


“今の僕は独りぼっち。”


「この世に生まれて、オリジナルって言われて、父さん、母さんが死んだ時、泣けなかったのは君がいなかったから?」


“そうかもしれないね。”


哉汰はゆっくり自分に近寄った。


「ごめん。」


“いいよ。別に君には僕が必要なかったんだから。”


「違うよ。ごめん。」


“君はいいね。皆がいてくれる淋しくなんてない。”


「ごめん。」


“僕はここでずーっと独りぼっち…。”


「ごめん。」


“謝ったって無駄だよ。なんにも変わらないんだから。君が僕と変わることすら出来ない。”


「ごめん…。」


“楽しかった?嬉しかった?それってどんな気持ち?”


もう1人の哉汰が大きな炎をまといながら近付いてくる。


“無駄だよ。”


哉汰は必死に避けようとするが、もう1人の哉汰にまとっている炎の方が強く意味をなしていない…。


“この力も忘れてるよね。どうせ。ほむら


哉汰は防御技が効かないので素手で押し切るしかない…。


だが一向に痛みは来なかった…。


“……どうして僕も連れてってくれなかったのさ。哉汰…。”


もう1人の哉汰は哉汰に抱きついた。


「…。」


“…ずっとずっと迎えに来てくれるの待ってたんだよ…。”


「ごめん。ずっと淋しかったよね。1人で待っててくれたんだよね。ごめん。」


もう1人の哉汰は声をあげて泣いている。


“次はないからね?絶対だからね!!僕もうひとりはやだよ?”


「勿論だよ。待っててくれてありがとう。」


するともう1人の哉汰もまた光の玉となり哉汰の中に入っていった。


「おかえり。」


「焔…。」


哉汰は焔に抱きついた。


「え?何?哉汰が泣いてる!?何事?へ?」


紫呂はずっと一緒だったが今まで哉汰が泣く所など見たことがなかった。


「そっか。哉汰は悲しみを置いといたのか。」


「紫呂に負けたぁ。」


「それでも泣くのかよ。」


「泣かせてよー。記憶も戻って来たんだよー。紫呂は泣かなかったの?」


「俺苦しみの方が勝ってたしな。賭けてるだけだし。」


「賭け?」


「そう。苦しみが思うようにいかなかったら俺を殺せってな。」


「何か紫呂らしい。」


「2人とも。美都と疵奈を助けなくて良いのか?」


「そうだったな。」


2人は仲良くくっついて胡座をかき手を合わせてなにやら集中し出した…。

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オリジナルとレプリカと なぎさ @kiryu-nagi

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