第19話

「なんでこんな事になってるの…。」


4人は王室に向かった。


「あのドラゴンが扱えるなら相当身構えないとですね。」


「私と同等かそれ以上と考えていた方がいいわね。」


4人は防御魔法をしたまま王室に入った。

疵奈は膝から崩れてしまった…。


そこにあったのはバラバラになってどれが何か分からなくなってしまったほど無惨な死体だった。


「疵奈様っ。」


「ごめん…。大丈夫…。」


4人で奥にある階段に向かうと椅子の奥に机があり、その上に生首が4つ置いてあった…。


「どう…して…。」


そこには生みの親と育ての親の物だった…。

疵奈はそこで座り込み吐いてしまった…。


「関係ないじゃない…。」


「疵奈様。」


「疵奈。一度戻ろう。」


「戻ってどうなるの。被害が広がる可能性の方があるのよ。」


「その為に分身の一部はまだ入口に置いてある。なんかあれば本人が気付ける。」


3人は顔色の悪い疵奈をどうにか引き戻そうとしていた。


「このままだと昔と同じ…。乗り越えなきゃ今は独りじゃないんだからっ…。」


3人は何かを思い出したようで引き返そうと言わなくなった。

そして記憶の欠片が3人に戻った…。

たしかに昔…あの時に引き返してさえいなければ疵奈を独りで戦いに行かせることもなかったと…。


「お母さん…お父さん…ごめんね。後でちゃんとお墓作るから…。」


4人は先へと進んだ。

しばらく歩くと突然真っ暗な闇の世界となり、4人はバラバラになってしまった。


【紫呂side】

「やられたな…。瀧出ていてくれ。…瀧?」


何故か反応が帰ってこない。


「瀧も出せないか。」



【哉汰side】

「暗いね…。心の中に入り込もうって散弾とかかな。焔。出られる?」


もちろんというかの如く哉汰の方でも反応がない。


「こんな術得意な人っていたかな…?」


哉汰は冷静に今の現状をとらえようとしていた。


【美都side】

「やられましたね。これでは4人ともバラバラでしょう…。風閒も呼んでいるのに返答がないということは1人で何とかしないといけませんね。さてどうすべきか…。」


美都もまた哉汰と同じく事態を冷静にとらえていた。


【疵奈side】

「暗闇…?零?皆…どこにいるの?」


”独りは怖い?”


「…誰!?」


疵奈は声がした方に振り向くが誰もいない…。


”今までずっと独りだったでしょう?怖くないじゃない。”


「姿を見せなさい!!」


疵奈は構えてはいるがどこに誰がいるかも分からないのに攻撃出来ないでいた。


「…どうしたらいいの?」


“どうもしなくていい。それかここで死ね。”


「あんたに聞いたわけじゃない!!」


疵奈はどうにか位置を特定しようと試みるがどこからとも無く聞こえる声に少し不安が見え隠れしていた。


【紫呂side】

「どうすっかな…。俺、哉汰みたく頭使えねぇしな…。」


紫呂はその場に胡座あぐらをかいていた。


「歩き回ってみるか。そうだな。なんか見つかるかもしれないしな!よしっ。灯火トーラ。」


紫呂は手のひらに小さな明かりを灯し、その明かりであちこちを照らしながら歩き回った。


…5分…10分…15分


暗闇の中での時間は果てしなく長く感じる。

しかも紫呂は行動が長続きしない方だ…。


「やべぇ。飽きた。」


紫呂はその場に寝転がってしまった。


「まじでどうすっかなー。」


紫呂は大の字で寝転び真っ暗な天井を見ていた…。


「待つっての嫌いなんだよな…。」


紫呂は静かにただ天井かも分からない場所を眺めていた。


「水の音?」


紫呂は音を頼りに走り出した。


灯火トーラ。」


走っていくと何故か天井から水が…。


「瀧。…お前なのか…瀧…?俺バカだからさ。皆みたくどうこう出来ないんだって。皆は自分のやるべきことってきっと分かってるんだ。俺だけなんだよ。なーんも出来ねぇーの。」


“ならどうしてまた奴に従う?”


「誰だ!?」


紫呂が飛び起きるとそこに立っていたのは傷だらけの自分だった…。


「俺…?」


“ずっと待ってたんだ。ここで。”


「何で?瀧が返してくれた記憶が全てじゃなかったのか?」


“奴が死んで俺は身もちぎられるような思いだった。”


「ちょっと待て。誰の事を言ってるんだ?疵奈か…?」


“他に誰がいる。だから俺は苦しい思い、悲しい思いを切り離した。”


「ちょっ、ちょっと待てよ。それをしたのは俺だろ?疵奈のせいじゃない!!」


“こんな思いにさせたのはやつだ。”


「だとしても!!そんな弱くねぇだろ?」


“黙れ!!!!”


水が勝手に氷結し紫呂を襲う…。


「は?こんなことまで出来るのかよ…。俺の力の欠片みたい物も持ってるのか?」


“当然だ。俺はお前だからな。”


「じゃぁどうすればいい?」


“なにがだ?”


「俺なら分かるだろ?頭使うの嫌いなんだよ。お前は俺にどうして欲しいんだよ。あっ、死ねとかは無しな。やっと疵奈や哉汰、美都とまた会えたんだ。やりたいこと山ほどあんだよ。」


“俺と手を組め。”


「は?俺はお前だろ?どうやって手組むんだよ。」


“今のお前の力は半分以下ほど。俺の方が勝ってる。俺の中に戻れ。”


「普通逆じゃね?それは反対。別のにして。」


“馬鹿にしてやがんのか?”


「する訳ねぇだろ。俺なんだろ?少しは分かれよ。俺は幸せがいい。」


“なら俺は…?”


「そっか。お前が戻れ。」


“何を言っている?”


「お前が俺の中に戻るんだよ。次に俺が幸せに出来なければ俺を煮るなり焼くなり好きにすればいい。それでどうだ?」


“俺の願いが叶わなかったら命をやるってことか?”


「そうだ。簡単だろ?」


“お前をのっとって仲間を殺してもいいって事だよな?”


「好きにしろ。そうはならないからさ。」


“分かった。”


ボロボロの紫呂は光の玉となり紫呂の中に入っていった。

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