第15話
哉汰と紫呂、美都は生前も同じ場所で仲良くしていた。
城の中、見えるのは赤い
大きな柱が決められた間隔で並び、赤い絨毯が伸びる先、には大きな椅子。
「紫呂。哉汰。美都。」
「「「はい。」」」
3人を呼んだ大きな椅子に腰かける女性。
疵奈にそっくりだ。
「貴方達ならどうする?」
「どのお話ですか?」
「私達が作ってしまった国よ。今回の戦いとなるかもしれないことも含めてね。」
「疵奈様のお考えに僕達は従うだけです。」
「誰にも後悔などして欲しくないのよ。」
「それは重々承知しております。」
「疵奈様。無礼を承知で申し上げます。」
「何?」
「確かにこの国を作ったのも一般民がいる国を作ったのも疵奈様の先祖。その血を引くのが貴方様です。他の方々はお亡くなりになった今は貴方しかおられません。確かに無残なことをしてしまったことは例え王であれども詫びるところは詫びるべきです。ですが疵奈様は全てを背負いすぎです。貴方が全てをされたわけではないじゃないですか。」
「ありがとう。」
「疵奈様。貴方様のお考えをお教え下さい。」
「今度ね。」
「疵奈様。」
「疲れたの。」
3人は唇をかみしめ下がるしかなかった。
だが、それが疵奈と話せる最後の言葉となった。
記憶はそこで終わってしまった。
その後、2人が目覚めたのは暗闇。
哉汰が焰に聞いていたことが紫呂にも教えられた。
2人は個々に暗闇の中で小さくなっていた。
『あの後、疵奈は一人で戦いに行って死んだんだ。そしてそんな疵奈を助けられなかったから自ら命を経ったんだ。』
精獣の声がした。
『地上に降りるオリジナルは皆、生まれ変わったらまたって心の中で約束してる。疵奈も3人に逢いたかったんだ。これで俺達もちゃんと守りたい者を守れる。』
2人が目を開けると、そこには美都と本郷が居た。
「…。」
「おかえりなさい。」
「…ただいま。」
3人は笑って抱き合った。
「美都に寂しい思いさせたな。俺達は3人で守ってきたのに。一番大切な人を忘れてた。」
「大丈夫です。2人が戻ってきてくれた。疵奈様も戻ってきます。信じましょう。」
3人が離れると、それぞれの姿が変わっていた。
「え!?」
「これが本当の姿です。」
哉汰は優しい雰囲気だったのが、髪が黒から所々はねて赤茶色に染まり、ローブはなく、袖のない白のカッターと真っ白のズボン。所々に鎖などの装飾と地位を占めるようなバッチが左胸の部分に複数付いていた。
紫呂の服装は長袖なくらいで後は哉汰と似ていた。
髪は金髪から青と銀色の透き通るような長めの髪に変わっていた。
美都は服装は紫呂と同じ。
岩牢に居た為かぐちゃぐちゃな茶色の短髪だったのが、綺麗に胸元まで伸びた緑とうっすら金が入った優しい感じに変わっていた。
「私が知っていた記憶もあの断片だけです。でもとても幸せで楽しくて、城で生まれ育ち、疵奈様に仕えるようになりました。」
「うん。僕もそれは感じた。」
「俺も。疵奈がとても優しくて誰かのために身を犠牲にする人で。今と何にも変わらねぇ。」
3人は楽しそうに笑い合っていると、それぞれの右腕が炎、水、風が巻き付いているように見えた。
「出せって事か?」
「そうですね。勝手に出てこられる筈なんですけど。」
「そうなのか!?」
「彼等もまた本当の姿に戻りましたから出入りは自由です。」
「出てきていいよ。」
「お前もだ。」
「どうぞ。」
3人がそれぞれの右腕に向かいそう言うと、炎、水、風の塊が出てきた。
「おかえり。
「待たせたな。
「ありがとうございます。
『記憶が戻れば驚きもしないのか。つまんねぇーの。』
『瀧は良いじゃないの。元の体を捨てたような物。』
『それなら風閒の方だ。』
「ちょっと待った。瀧達まで何で姿まで変える必要があったんだ?ましてや名前まで。」
『俺達の記憶も欠けていたんだ。過去、最も力があるとされたお前達3人はとても有名だった。そして俺達もな。名前くらいならあるだろうと流されていただろうが、俺達は別だ。』
「まぁ確かに。」
『その為に私達の記憶も風閒達の名前も隠すしかなかったのです。』
「焔達も昔と同じって事?」
『そうなる。』
「態度は変わらないんだな。」
『当たり前だ。』
「風閒達の名は学校の教科書にも記されているそうですよ。」
「疵奈も?」
「いいえ。疵奈様のような王族の名を記すことは許されていません。」
「てかさ。何でそんな詳しいんだ?」
「哉汰と紫呂は攻撃が主。私は知能や治癒が主。その違いです。」
「簡単に言えば勉強しなかったって事?」
「はい。」
「早いな。」
「美都は前と変わらない。冷静沈着、真面目。」
「それを言うなら哉汰と紫呂も変わりません。哉汰は大人しくて優しいのにいざ魔法を使えば威圧感はとんでもなく、その攻撃力は魔王さえも後退りすると言われてました。紫呂は勢いがあり、何に対しても厳しいですが、本当はとても優しく、広い心の持ち主ではないですか。」
「よく知ってるな。」
「誰かに言われたような記憶がある。」
「疵奈様ですよ。」
「大丈夫か?疵奈。」
「きっと問題ないですよ。あの時は1人で先に行かれてしまいましたが、私達に会うために帰ってきてくださった。信じましょう。」
「…そうだね。」
3人は疵奈を見た…。
まだ優しい顔で寝ている。
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