第14話
「…お爺ちゃん。」
「問題ない。」
美都は記憶が先だったため、目覚める力も最初から本物、何も起こらなかった。
「お願い。無事に戻ってきて。」
美都は光に包まれて宙に浮いている3人に向かい膝をついて願った。
「すまんな。美都。」
「何?」
「王族と同じくらいに辛いのは風の力を持つ者と昔から決まっておった。まさか美都が風の力を貰うとは思わなんだ。」
「仕方ないよ。風は癒やしにもなり、攻撃にもなる。それが本郷家から風閒家に受け継がれたモノ。私はオリジナルであること恨んだりしてないよ。」
美都はそう言って笑った。
そしてまた祈り始めた。
【紫呂SIDE】
『紫呂。目覚めろ。』
真っ暗な何もない空間の真ん中に浮く紫呂。その近くで声が響いた。
「…誰?」
『もう忘れたか?早く起きろ。』
紫呂は聞き慣れた声に驚き目を開けた。
「イオン!?もう大丈夫なのか!?」
『これが王族の力だ。』
「疵奈の…?どういう事だよ?知ってたのか?」
『知っていた。だが話せば禁忌。ケガ程度では済まされないのだ。ただ記憶を封じたのは王族だ。』
「ここは?」
『紫呂の心の中だ。』
「俺の?」
『そうだ。』
紫呂は辺りを見回した。
「俺の体は?」
『何の問題もない。しばらく昏睡しているだけだ。』
「俺達も疵奈と同じモノが見られるのか!?」
『それは無理だ。』
「俺のオリジナルって…?」
『王族直属の兵士。』
「哉汰や美都も?」
『そこまでは知らん。』
「でも何で俺まで昏睡しているんだ?」
『誠の力を戻すためだ。生身の状態で戻せば普通の人間と同じで危険になる。心の中から行えば、その心配はない。』
「力って…記憶なのか?」
『そうだ。』
「だから疵奈は辛いのか?」
『王族の記憶は俺達にも分からない。知るのは主となる者の記憶だけだ。』
「そうか。」
『良いか?』
「ああ。」
紫呂はその場で目を閉じた。
【哉汰SIDE】
『哉汰。いつまで寝るつもり?』
「…焰?」
哉汰はゆっくり起き上がった。
『遅い。』
「…ごめん。ここは?」
『哉汰の心の中。』
「僕の…?」
『そう。哉汰の心の中。』
「焰。」
『何?』
「大丈夫なのかな?」
『何が?』
「色々。」
『無理だと思うなら逃げれば?』
「何で簡単に言える?僕達が居なくなれば世界は壊れる。」
『そうだよ。けど1人だけが生き残るわけじゃない。生き残ったとしても4人の誰か。2人かもしれないし3人かもしれない。』
「それを背負って行けって?」
『そうだよ。それがオリジナル。』
「オリジナルっていったい何?」
『昔話。人として産まれた2人は禁断の果実を食べました。』
「それって誰もが知るアダムとイブの話でしょ?」
『そう。その
「…ちょっと待って。」
『何?』
「じゃあこの国を作ったのは疵奈の先祖って事?」
『正解。だから昔は一般民なんて存在しなかった。居たのは王族とオリジナルとレプリカだけ。』
「王族から産まれた者は王族でしょ?」
『王族は産まれながらに力を持った者か力が1番強い者。王族からレプリカが産まれることだってある。アダムとイブの子供だって伝えられてる話では3人。そのうちの2人が力を持ってた。力を持ってた1人が禁断の果実を食べ、もう1人と子供を授かり、その血を繋ぎ力を持っている者が王族。』
「残りの1人は?」
『知らない。』
「一般民は?」
『最初のレプリカはその残された1人だって話。言ったでしょ?オリジナル同士でも産まれるのはオリジナルだけじゃない。』
「じゃあ僕の先祖は疵奈?」
『違うかもしれないけど遠い親戚みたいな感じ。王族はこの世界の生みの親。』
「この国を守る結界の名前は?」
『ラピスラズリ。』
「それって国が守ってる石なんじゃ!?」
『そうなってるね。そしてそれがただの結界じゃなくてオリジナルと王族だけの城があるとしたら?』
「…。」
『オリジナルがレプリカと一般民はいらないと切り捨ててるとしたら?』
「ちょっ…。」
『上の者がレプリカや一般民からオリジナルは産まれないと馬鹿な考えしてたら?』
「待って…。」
『千年に一度の災いや中枢が行うことが城からの言いつけだとしたら?』
「疵奈には重すぎるって!!」
『僕の推測。本当かどうかは知らない。けど僕らはオリジナルにのみ仕える。』
「待ってよ。オリジナルから産まれるのはオリジナルだけじゃないなら城で産まれたレプリカはともかく、一般民は?」
『そこは王族しか知らない。王族の血族として産まれた者の運命だよ。』
「簡単に言うなよ。」
『哉汰。』
「何?」
『哉汰がここで話している間も時間は流れるからね。』
「先に言ってよ!どうしたら出られる?」
『大抵は話したけど記憶が力だから記憶を返す。』
「焰が僕の記憶を持ってるって事?」
『そうだよ。僕だけじゃない。イオンもそう。風の子はどうしたのか知らないけど。聞こえてた感じだと夢の中で少しずつ記憶を渡したんだろ。それなら風の子が力が戻る前、拷問の傷が消えていても記憶が力少しづつ戻したことになるから納得はできる。』
「とりあえずその記憶を。」
『返すよ。目覚めたらまた話せるんだ。僕らはいつだって話せる。』
「聞きたいことは山ほどあるから逃げないでよ。」
『そっちこそ。』
哉汰は微笑み返すと、ゆっくり目を閉じた。
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