第5話
哉汰は答えるように真剣な顔付きで言った。
「変じゃないよ。変って言ったら僕と紫呂の方がよっぽど変でしょ。」
「でもっあの……その時に声がしたんです。…死なせるわけにはいかないって…。」
「…ここでは他の魔法使いが来る可能性もあるから奥に行こうか。本郷さんや紫呂に聞かれても平気?」
哉汰は急に目の色を変え、立ち上がった。
「…。」
「嫌なら場所を変えよう。」
「…嫌われませんか?」
「誰に?」
疵奈は少し震えているように見えた。
「誰も嫌わないよ。」
哉汰はそう言って、いつもの笑顔を見せた。
疵奈は少ししてから哉汰の真剣な眼差しに何かを感じて、小さく頷いた。
そして哉汰に手を引かれ、奥に入った。
そこには紫呂と本郷が和気あいあいと話している所だった。
「何かあった?」
「ちょっと。あまり他に聞かれたくなさそうだったから。」
「儂は外そうかの。」
「本郷さんも聞いてください。」
「なら店を閉めてこよう。」
本郷は立ち上がり、表に行ったと思うとすぐ戻ってきた。
「これで誰も来んよ。」
「紫呂。あれ出して。」
「は?」
「良いから。」
哉汰の真剣な目に紫呂は頷き、2人でローブを脱いだ。
その下は半袖のカッターシャツで肩が見えるまで袖を
「「
すると2人の前にそれぞれ赤と青の珠が現れ、割れた。
中から出て来たのは手のひらサイズの龍と狼のような獣。
疵奈は驚いて
「大丈夫だよ。噛んだりしないから。」
「何で…?」
「本郷さんは知ってるんだけど、オリジナルとレプリカの違いの1つだよ。」
「1つ?オリジナルって…。」
「そう。他には杖がなくても魔法が使えたり、ホウキもなく空が飛べること。その3つが違い。」
「痛っ。何すんだよ!」
紫呂の前に現れた龍は紫呂とじゃれ合って、哉汰の前に現れた獣は大人しく肩に乗っている。
「天瀬さんが聞こえた声は多分、この子達なんだ。声は主である者にしか聞こえない。レプリカは
「精獣?」
「オリジナルだけが持ってる特別な相棒だよ。ホウキや杖みたいな感じかな?」
「…本郷さんは見えないんですか?」
「儂は見えとるよ。」
「本郷さんもオリジナルですか!?」
疵奈は目を見開いた。
「本郷さんは僕達の前のオリジナルの子孫。レプリカだよ。」
「血が繋がってたら見えるんですか?」
「見えない。オリジナルには翼があるんだけど、その翼は一般民や魔法使いに自分達の力が貸せるんだ。そしてオリジナルの術式次第で精獣が見えるようになったりするんだよ。」
「何でそれを私に教えてもらえるんですか?」
「君が僕達の仲間だからだよ。天瀬さん。」
「はい?」
紫呂は自分の精獣とじゃれていたかと思えば顔つきを変え、こちらを見た。
「紫呂。口出し禁止。」
「…はい。」
珍しく真剣な顔つきの哉汰に押され、紫呂はイスに座った。
「ごめんね。さっきも言ってたよね。声が聞こえるって。天瀬さんはまだ完全に覚醒したわけじゃないから魔法学校も避けた方が良い。オリジナルの場合、覚醒しないと魔力はないからね。」
「でも私はっ…!!」
「魔法使いになりたいのは分かるよ。だけど…君はオリジナルなんだ。」
哉汰と疵奈の会話をただ黙って聞いている2人。
「オリジナルだと駄目なんですか?」
「オリジナルは今のところ3人から5人現れてる。その中には差がある。中枢が探してるオリジナルは王族の血を引く者。3人から5人現れる中でのトップ。王族とかの話は知らないけど。早めに見付かったオリジナルは拷問され、王族の居場所を問われる。」
「…君はまだ完全に覚醒した訳じゃない。覚醒すれば拷問でできる傷も簡単に消せるけど覚醒していなければ、それは不可能。死ぬことだって有り得るんだよ。証拠に僕達の仲間であり、本郷さんの孫である女の子が、中枢の管理する牢獄に捕まって毎日のように拷問を受けてる。」
「でもオリジナルは
「学校ではそう教えるんだよ。」
「何でもかんでも良い所しか見ないからな。胸くそ悪い奴しかいねぇ。」
「僕達も揃わなければ何も出来ないんだよ。」
「囚われてる方のお名前って…。」
「
「その方が王族なんですか?」
「それは分からない。人数も分からない。産まれてきたオリジナルが全員、完全に覚醒して始めて分かることの方が多いからね。」
「風閒さんは覚醒されてるんですか?」
「まだしてないと思う。」
「じゃあ尚更助けないと!!」
「助けたとしても風閒さんがオリジナルである可能性は今のところ半分。僕達も会えないから何も分からないんだよ。仲間って言ったのは本郷さんが多分オリジナルだって教えてくれたから。」
「…私には何も出来ないんですか?」
「今はまだダメだよ。覚醒の方法も個々で違うから分からない。」
哉汰、疵奈、紫呂の3人は大きく肩を落とした。
「話は終わったかの。」
「すいません。本郷さん。風閒さんの話も勝手にしてしまって。」
「構わんよ。美都もオリジナルの子孫として産まれた
「…必ず助け出しますから。」
「それよりも天瀬さんを守ることじゃよ。儂の杖に触れて、あれほどの力は紫呂と哉汰以来じゃからな。」
「それは必ず約束します。」
「2人は拷問受けてないんですか?」
「最近はね。前は良くあったけど中枢の誰かが僕達は覚醒したと分かって避けてる可能性が出て来てるから。」
「話はまたにしてお茶にしよう。」
本郷さんがお茶を入れ、3人も一度深呼吸をして座った。
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