08. 真の権力者
「おいおい。今回は使えそうな仮想地球じゃないか?!」
男性・
「えー? 第2人類が増えすぎてしまった、っていう状況だったよ?」
女性・
「そんなに増えてたのか?」
「うん……統計データによると、第1人類の人口が1%、第2人類の人口が99%」
「うわ! 人類2.0じゃないか!」
「この仮想地球では、可愛いは正義っていう唯一の物差しで人の上下関係を決めちゃったから……みんな、より可愛いを目指すだけの、単一志向クラスタになっちゃった」
「俺達の世界の、『学力』が、『可愛さ』に置き換わった、みたいな?」
ネクタイを緩める男性・
「違うわ。現実世界では、可愛さも、学力も、それぞれ評価されるじゃない。お金の力だって、スポーツが出来る事だって。まだしも、現実の方が多様性があるもの」
「人類のバリエーションは増やしたのに、評価軸の多様性を削ってしまったのか……」
「仮想地球の
男性・
「えっ? ちょっと待って。81%は高すぎじゃ? 第2人類が人口のほとんどになった仮想地球なんだろ?」
圭の驚きっぷりに苦笑した優は、途中で恥ずかしくなったのか、口元を握りこぶしで隠す。
「現実世界でも、再生医療とか、バーチャルユーチューバーが激増して、
「うーん……それでも、納得出来ない数値だなぁ……」
「そこは私たちが考えてもしょうがないよ。政府のコンピューターをハッキングして、汎用人口知能
「うーん……」
男性・
「優? 今回の仮想地球の、1%だけ残った第1人類って、どんな人達なのかわかる? その情報取れる?」
「え? やってみてもいいけど……」
女性・
「うーん……ログによると、仮想地球の支配者層みたいね。元々は、資本と法と、あと裏の武力とで、仮想地球8108を支配していた。でも、『可愛いは正義党』に、実権を乗っ取られてしまって……」
「旧権力者が、意固地になって抵抗している感じか?」
「うん、そんなところね。『可愛さ』無しではまともな生活が送れない社会環境に変貌しているのに、かつての権力の甘い蜜が忘れられず、資産を食いつぶしながら、復権を狙っている……みたいな」
「そんなの成功するわけ無いのに……。世界が変わってしまったのなら。ともあれ……」
男性・
お茶で口をさっぱりさせてから、言った。
「仮想地球8108は、仮想立法事実としては使わないことにしよう。優」
「いいけど、どうして?」
「優もわかるだろ? この現実世界で実権を握っているのは、『可愛いは正義党』ではないから。むしろ――」
圭は、まばたきを2回して、語を続けた。
「仮想地球の、
「確かにそうね。現実世界の権力者はきっと、仮想地球の、1%に減った第1人類に自分たちを重ね、共感してしまう。そうしたら……」
「だろ? 『優みたいな
結局は、判断する立場に居るものの一存で決まる。
その本質を、男性・
「わかったわ。仮想地球8108も、スルーしましょう」
「だな。今回も骨折り損でごめんな? 優」
男性・
窓から入る風は涼しく、乾いたものだった。
――権力者であると思い込んでいる人類と同様に。
――男性・
現実世界の権力者は、既に、
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