10. 署名された言論の自由
「うっわ! エゲツねぇなぁ仮想地球1078。ひくわーこんなの」
男性・
「署名された言論の自由、っていう管理思想らしいよ……? 人間のDNA情報で署名して、暗号通信するんだって。Internet of Things and Humanだって」
女性・
「
男性・
ハッカーは自由を愛する。だから。
「『可民』の世界そのものがビッグデータかよ……。『常民』がビッグデータ独占かよ……あー、終わってるわ。完全にディストピアだわこの仮想地球」
圭がこれほど雄弁に、『管理される事』を毛嫌いするのも、ハッカーとして自然と言えるかもしれない。
「でも、私達の現実世界だって、大して変わらないかも? 匿名なのは、8ちゃんねるぐらいのものでしょ?」
と、優が聞く。
「いんや。あそこもIPアドレスとか、プロバイダ責任法とかで、身元突き止めができたり出来なかったり」
「じゃあ、同じようなものなのかもしれないね……」
「まぁさすがに、俺には監視デバイス埋まってないけどな!」
と圭が言った後、急速にトーンダウンした。
「あ、優さん。ごめんね」
「いいの……」
人の第3類型。
第3人類として、権利を獲得しようとしている女性・
そのボディは、肉ではなく、デバイスが核になっていた。
そこに、培養した肉と、元となる人格とを、インストールしてあるのだ。
圭は何度か咳払いをしたあと、何を言って良いのかわからず困ったのか、無言で優をハグした。しばらくしてから、ようやく口を開いた。
「な、なんかさ。人間が機械化されて第2人類になったり、DNAからID作って署名したり。AIが人間に寄るんじゃなくて、逆に、人間がAIに寄っていく感じだね」
男性・
愛する女性に嫌われたく無いです、と、その口調が物語っているかのようだった。
「そうね……どちらから寄ってもいいと私は思うな。いつか一緒になれるなら」
そう言う女性・
男性・
「あっ。そう言えばさ。優。入瀬が仮想地球で出会った紳士って、何をしてたのかわかるかい?」
「あれね? ええと……自分の書いたビジネス書に、ネット書店で感想をつけてたみたい。『これ凄くいい本だ!』って」
「え」
「ほら、売れる本って、今売れている本だって言うじゃない? 露出が購買の源だから」
「あ……察し。口コミの水増し作業をしてたのか。でも……」
「そうなの。誰がその感想をつけたのか、DNA署名ですぐに分かっちゃうから……」
「その行為を常民達が、『可』としてくれるかどうか、って事か……。なんと窮屈なこって。ちなみにさ? 優。第1078仮想地球の、
「48%って出てる」
「随分低いな」
そうしたら
感情を殺した、抑揚の無い声で言った。
「でも将来は、立法事実に使える『80%超え』になるかもね。現実世界の方から、仮想世界に寄っていくかもしれないから」
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