01. おでかけ

 イルセはあっきあきしてた。


 お兄ちゃんとお姉ちゃんは、まんまるの中。

 背中あわせにすわって、カソーせかいをハッキング?


「パスがとおるまで、まっててね、イルセちゃん」

「パスがとおったら、イルセのジッシンから、カシンをはるからね」

 と、よくわからないことをいうばかり。


 ひまなイルセはもの思いにふけるばかり。


 カソーせかいってなぁに?

 ハッキングってなぁに?

 ジッシンってなぁに?

 カシンってなぁに?


 わからないことがいっぱい。



 ――そこへいきなり、かわいいおねぇちゃんが1人、をかけぬける。


「ちこくよ! ちこく! いもうとをめでるひまもない!」


(あとになって思いかえすと、食パンじゃなくてフランスパンをくわえて走っているし、ここでふしぎがるのがふつうな気もするけれど、イルセはふしぎをたくさん抱えていたから、ついつい流してしまってね)


 おねえちゃんの前にドローンが、ぶんぶん飛びまわってお空にあなをつくったから、イルセもとびあがる。だってびっくりして耳がでっかくなりそう。


 フランスパンをくわえたおねえちゃん。

 スカートヒラリひるがえし。

 あなの穴へと「えーい!」とびこんだ。


 それを見たイルセは気になる気になる。


 走って追うと、ちょうどあなは小さくなりかけてた。

 「ええーい!」飛びこみイルセも後を追う、その先がどこかなんて、戻ってこられるかかなんて、ちっとも考えもせずに。


 イルセがくらいあなを進んでいくと、ツルツルのすべり台があって「あれぇー」どんどんすべる。どんと尻もちをついてもいたくない(だって下が雪だったから)。


 雪の上をシャンシャンと、ベルをならしてソリがきた。

 トナカイが2ひき、ソリをひっぱって(さむくないのかな……)。


 乗っているのは、赤いふくにりっぱな白ヒゲのおじいさん。

「ホーッホッホッ」笑いながら大きな白いふくろをせおってた(おもくないのかな……)。


「あなたはだあれ」とイルセが(お尻がぬれないように立ち上がって)きいたら、「ソンタク忖度ロースじゃよ」とおじいさんは言って、イルセのうでに、金いろの輪っかをはめた。


「せかいを忖度そんたくできるようにする、プレゼントじゃよ。ホーホッホッ」


 そしておじいさんはソリにのってお空へとんでった。(お月様とトナカイとソリがきれいね……)


 イルセはそのまま、お空をながめてた。

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