加藤弘君の質疑-三

(柴田環境大臣)

 ですから、委員になにか良い知恵があれば教えてくださいって言ってるんですよ。(「答弁しろよ」「質問されてるの誰だよ」と呼ぶ者あり)


(廣瀬内閣総理大臣)

 環境大臣に変わってお答えします。

 所謂除染土の再利用基準につきましては、委員ご指摘のとおり二〇一六年三月三月十一日に環境省がキロ八〇〇〇ベクレル以下の再利用基準を新たに示し、その基準に則ってこれまで運用されて参りました。今後の除染活動で生じる除染土総量は福島第一原発事故後の除染活動で生じた除染土総量を遥かに上回ることが確実視される情勢でありますが、この二〇一六年基準を越える除染土につきましては、これは再利用しないことをこの場で明言いたします。


(加藤委員)

 総理、それ間違いないですね。今日は中継も入っております。ご覧になってる国民の皆様方もたくさんおられる中でのご発言です。柴田大臣、よろしいですか。今総理は、二〇一六年基準を上回る運用は考えていないとはっきりおっしゃいました。

 それでは伺います。

 既に指摘したとおり、キロ八〇〇〇ベクレル以下の再利用基準につきましても、これは明らかに原子炉等規制法の基準を八〇倍も上回る法律違反でありますが、総理はこれについても適法の状態に戻すおつもりはないと言うことでよろしいですか。

 お答え下さい。


(柴田環境大臣)

 除染土の再利用に際して重要なのは、人体に影響を与える被曝線量を超えないことでありまして、その点に関しましてはアスファルト、コンクリートで遮蔽することにより十分安全性が確保されているという科学的根拠のもとに二〇一六年基準の運用を行っております。したがって、新たな除活動が必要とされる現下の状況におきましては、二〇一六年基準を法定数値の一〇〇ベクレルに戻す運用は考慮の外でございます。


(加藤委員)

 そうですか。かかる法令違反の状態を、国政の場で適法に戻すつもりがないと明言されるとは思っても見ませんでした。

 先ほど柴田大臣は、委員になにか良い知恵があれば教えて欲しいというようなことをおっしゃったわけですけれども、これまで原発というものは再三その危険性を指摘され続けてきたわけであります。国民だって馬鹿じゃありませんから、立地候補地の住民が訴訟を起こして原発の新規建設計画の破棄を求めたり、稼働停止の仮処分を申し立てて再稼働停止に追い込んだ事例ってのは枚挙に暇がないわけですよ。簡単に訴訟訴訟っていうけれどもね。何の法律的な知識もない一般人が訴訟なんてなかなかできないですよ。それでもね、そうやって高い高い壁を越えて一部の人は反原発の意見を実現しようと頑張ってきた。政治はその意思を汲み取ったことが一度でもありましたか。

 そりゃ、新規建設や再稼働の停止が司法で決定されたなら、その場所での再稼働や新規建設はしてこなかったかもしれないけれども、司法判断が下された場所で駄目だったら他の地域でせっせと原発動かしたり新しく作ってきたわけですよ。民意を無視して。

 原発ってのが一旦事故を起こしたら立地自治体だけの被害にとどまらないことは明白な事実なんですね。それを知りながら司法判断が下された場所だけ避けて、他で原発建ててたら訴訟を起こした意味が全然ないじゃないですか。そういう意味で、民意を無視したり骨抜きにしてきたわけです。我が国の歴代政権は。

 そんな政権に所属している人がね、これだけの事故を起こしておきながら、なにか良い知恵があったら教えて欲しいだなんて、よくもまあいけしゃあしゃあと言えますね。しかも半ばキレ気味に。(「よく言った」と呼ぶ者あり)

 知恵ならとっくの昔に出尽くしてますよ。あんな原発なんてもん、やるべきじゃなかったんです。すぐにでも止めるべきものだったんだ。皆そう言ってたじゃありませんか。

 それを無視して敢えてやったんだから、処理方法はちゃんとあんた方で考えなさいよ。何で除染土が国民の日常生活の場に押し付けられなきゃいけないんだ。再利用基準の緩和は、政府が除染土処理方法をしっかり考えてこなかった証拠ですよ。それこそ原発を動かした者の責任で処分してくれと私は言いたい。除染土はあなた方の家の庭にでも埋めておきなさい。(「言い過ぎだ」「失礼だぞ」「調子に乗るな」と呼ぶ者あり。委員長「静粛に願います」)

 いずれに致しましても被災地域の除染に狂奔するあまり、かえって全国に汚染を拡散させることを容認する政府の姿勢が改めて明らかになったわけです。

 違法状態を継続する姿勢を内閣が明確に示したところで、質問を変えましょう。

 福島第一原発事故後の除染活動で出た除染土のうち、福島県浜通地区に一時的に保管するとされたキロ八〇〇〇ベクレルを越える除染土の総量は、一二〇〇万立方メートルに達するという話を先ほど柴田大臣がおっしゃった。この浜通の中間貯蔵施設につきましては、運用開始から三〇年以内に最終処分場に移設するという福島県との約款に基づいて運用すると決定されました。中間貯蔵施設への除染土搬入開始が二〇一五年三月ですので、二十数年後にはこれを最終処分場に搬入する必要があるわけです。最終処分場は見つかりましたか。


(柴田環境大臣)

 現在のところ、候補地も含めて全く目処が立っていない状況であります。

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