加藤弘君の質疑-二

(柴田環境大臣)

 本件摩耗核惨事による汚染区域は委員ご指摘のとおり広大な面積にわたっており、今後除染活動によって発生する除染土の総量は福島第一原発事故の除染活動によって出た除染土総量を大きく上回るとはこれは明らかであります。

 その上で、二〇一六年策定のキロ八〇〇〇ベクレル以下の除染土再利用基準を準用するのか否かというご質問ですが、それにつきましては今後具体的に除染活動が進展して、除染土がどれくらいのペースで排出されてくるかによって適切に決定していくことになるだろうと思われます。しかしながら、二〇一六年基準のキロ八〇〇〇ベクレル以下という数字を大きく上回る除染土を再利用に供することは、現段階では想定しておりません。


(加藤委員)

 分かりました。キロ八〇〇〇ベクレル以下という再利用基準について依然根強い反対意見がある中で、その再利用基準を少なくとも厳格化した基準では運用しない、ということでよろしいですね。


(柴田環境大臣)

 当然二〇一六年基準につきましてはご批判が多数あったことは承知しておりますけれども、この除染土の処理が終了すれば緊急避難的に定めた当該数値をそのまま平時にも準用する、というような運用について考えていたわけでは決してございません。

 しかしながらご承知のとおり、摩耗核惨事の発生によって新たな除染土が、福島第一原発の処理にも増して大量に発生することは、これはもう明らかなんですね。避けようがないんです。

 委員のように教条主義的にですね、法定数値に拘っておれば、これは除染活動が全く進まないわけでして、もし委員がキロ一〇〇ベクレルの法定数値を遵守しながら、かつ除染活動も同時に進めることが出来る何か妙案をお持ちなのでしたら、この際ご意見を賜りたいと思います。


(加藤委員)

 驚きました。まさかこの国政の場で、国務大臣が法廷の数値を遵守しないことをはっきりと口に出しておっしゃるとは思っても見ませんでした。

 そもそも放射性廃棄物を再利用できる基準につきましては、原子炉等規制法より放射性セシウムについては一キログラムあたり一〇〇ベクレルと明確に定められているわけであります。これが二〇一六年三月にですね、法の改正を経ることなく唐突にキロ八〇〇〇ベクレル以下にまで基準が引き下げられた。それまでキロ一〇〇ベクレルまでしか再利用できなかったものが、どうして二〇一六年三月三十日を境にして八〇〇〇ベクレル以下のものまで再利用できるようになったんでしょうか。その日を境に、日本人の放射性物質に対する耐性が向上したんでしょうか。そんなはずはない。

 先ほど大臣は、中間貯蔵施設に搬入する必要がある除染土総量一二〇〇万立方メートルと説明されましたが、残りのじゃあ一〇〇〇万立方メートルの除染土はどうなったのかといいますと、これテレビをご覧の皆さん、皆さんがお住まいの地域の、河川堤防や公園、道路の基礎部分に使われてるんですよ。最近身近なところで道路工事や公園の新設工事がありませんでしたか? そういったところは要注意ですよ。皆さん。

 環境省はですね、アスファルトやコンクリートで覆うので、汚染が環境中に流出することはないと取って付けたような説明をしましたが、どうしてそんなことが明言できるんでしょうか。

 皆さん、車で道路を走っているときに、アスファルト路面に穴が空いているのを見たことはありませんか。あれはポットホールというそうですけれども、そのポットホールが生じるのは決まって雨天時だそうであります。雨によって土砂の一部が流出すると、あとはドミノ形式に、流出した土砂に支えられていた土砂がまた流出して、それに支えられていた土砂が更に流出して、というのを繰り返していくうちに、アスファルト路面を直接下支えしていた土砂までが流出して、下支えの土砂を失ったアスファルトが陥没することでポットホールが生じるんだそうです。

 皆さん高速道路を走っているときに見る光景をちょっと思い出してください。首都高速のような、林立するビルの合間を縫う高速道路ではありませんよ。沿線に田畑を擁する高速道路です。道路を下支えする汚染土が雨で流出したら、こういった沿線の田畑に汚染土が流れ込むわけです。するとどうなるか。作物が汚染されますね。

 雨が降ったときの土砂の流出を、人間が細かいところまで管理できるはずないじゃありませんか。道路ですらそうなのに、絶えず流水に曝されている堤防なんかで除染土の流出を防ぐことが出来るはずがないんです。

 結局環境省は除染活動で出た除染土を全国に再利用名目で拡散したわけですよ。これの何が除染なんでしょうか。除染でも何でもない。汚染を他の地域に移しただけです。被災地の空間線量が下がりさえすれば何をしても良いのか、ということですよ。故意的にやってるんだから、これで健康被害が発生したら犯罪ですよ。

 大臣は先ほど、本件核惨事の除染が進めば、福島と比較にならないほどの除染土が排出されるという認識を示されました。二〇一六年基準を今回も採用されることについて、布石を打っているように見えます。今回も福島第一原発事故のときと同様の基準に依って、或いはその基準を超えて除染土を再利用するんでしょうか。

 柴田大臣お答え下さい。

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