岡本三郎君の質疑-八

(廣瀬内閣総理大臣)

 人口密度に関しましては目下調査中ではございますけれども、我が国の国土面積に変動がない現状におきましては、各地域の人口密度にも大きな変動はなく、既に立地している原子力発電所を再稼働するに際してこれを妨げ要因にはなり得ないと考えております。


(岡本委員)

 ちょっと待ってくださいよ総理。今、国土面積に変動がないとおっしゃいましたね。これは一体どういう意味でそうおっしゃったんでしょう。

 お答え下さい。


(廣瀬内閣総理大臣)

 我が国の国土面積については、委員がおっしゃるように半分に減少した、という事実はございません、という意味です。

 本件摩耗核惨事前を問わず、我が国の国土面積については全く変動はありません。

 

(岡本委員)

 分かりました。では言い方を変えます。我が国の国土面積のうち、本件核惨事によって居住可能地域は惨事前と比較して約半分になりました。人口減少率はこれを大きく下回っておりますので、狭くなった居住可能地域に避難民が流入している現状がございます。

 そうなれば居住可能地域にの人口密度は自ずと高まりますので、そのような状況下におきまして、人口密度の高低についていかが判断されるおつもりか、具体的に数字を挙げて説明してください。

 ご理解いただけましたか。


(廣瀬内閣総理大臣)

 おこたえ致します。

 本件核惨事により、委員ご指摘のとおり、居住可能地域に限定して人口密度を試算した場合につきましては、全体として上昇を示す変動が予想される現状がございます。人口密度の高低につきましては、東日本の非居住区域を除外し、その中で居住可能区域の面積を算出致しまして、人口密度を算定することになろうかと考えます。

 いずれに致しましても、現状では依然、相当数の避難民の皆様方が定住できずに避難地域内を移動しておられ、住民票の異動まで手が回っていない、また自治体等の行政側も詳細な数値を確定させるまで業務が追いついていない現状を鑑みますと、居住可能地域の面積を求め、その区域内における旧来の住民と、避難民の合計を算出して、人口密度の平均値を求める段階にも至っておりません。

 しかし数字自体は全体的に上昇を示すであろうことは間違いありませんし、居住可能地域の人口密度が全体として等しい割合で上昇しているはずとの予測に基づき、それによって人口密度の高低を判断したいと考えております。


(岡本委員)

 数値の算出を待たずに、予測に基づいて原発を動かす、ということですか。


(廣瀬内閣総理大臣)

 もともとの原発立地自治体におきましては、都市部と比較して人口密度が上昇し、原子力発電所の操業を妨げるという事態を想定できる判断材料がないからであります。


(岡本委員)

 人口密度が全国平均を下回ったとしても、居住人口は確実に増加します。例えば人口何万人以下であれば再稼働しない、という考えはございませんか。


(廣瀬内閣総理大臣)

 原子炉立地審査指針に基づいて判断致します。


(岡本委員)

 ちょっと待ってくださいよ総理。

 先ほど、総理はその原子炉立地審査指針を引き合いに出して、万が一被曝という事態が発生した場合において、より迅速に質の高い医療を受けてもらうために低人口地帯に原子炉を置くと説明されました。それは指針に書かれているとおりかも知れませんけれども、住民の総数が増えても、人口密度が平均値を下回っているという理由だけで再稼働すれば、それこそ万が一の事故発生の場合において、被曝者に対して施すことが出来る医療の質は低下すると考えられますよね。人口総数の上昇は、指針に定める「適切な措置を講じうる環境」を損ない得る事情に当たりませんか。人口密度の高低だけで再稼働の是非を判断するのは大変危険であると考えますが、総理はそれでも再稼働方針を変えないということでよろしいでしょうか。

 お答え下さい。


(廣瀬内閣総理大臣)

 除染と復興のためのエネルギー需要は拡大の一途を示しております。一旦過酷事故を惹起せしめれば、その被害は非常に大きなものとなることは、これは本件摩耗核惨事の結果を見るまでもなく明らかであり、私はそのことについてまでは否定致しません。

 しかしながら、現下の我が国の経済状況を勘案すれば、原子力発電所を永久的に停止することは国政に与る者として無責任といかいいようがない状況であることもまた事実なのであります。どうか皆様方におきましては原発再稼働を、除染復興の端緒として位置づけている政府の方針にご理解いただきたいと考えております。

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