第二章 衆議院予算委員会

小笠原貞弘君の質疑‐一

二〇二X年六月十四日午前九時三分開議

衆議院予算委員会


出席議員

委員長 大垣秀夫君

理事  小笠原貞弘君 岡本三郎君 加藤大君 和泉和子君(以下略)


内閣総理大臣 廣瀬和夫君

文部科学大臣 笠原崇君

厚生労働大臣 磯部昭彦君

経済産業大臣 清水行博君

環境大臣 柴田恭枝君

摩耗核惨事復興担当大臣 志村修平君(以下略)


(大垣秀夫衆議院予算委員会委員長)

 それでは、第二〇X回臨時会衆議院予算委員会を開催致します。(中略)まずはじめに小笠原貞弘君による質疑を行います。小笠原君。


(小笠原貞弘君登壇)

(国民主権党無所属の会小笠原貞弘君)

 国民主権党無所属の会の小笠原でございます。本日は、総理が先の所信表明演説において原子力発電所再稼働に言及されたことについて質問いたします。

 質問に先立ちまして、本件核惨事によって犠牲になられた方々のご冥福をお祈りいたしますと共に、心ならずも避難生活を強いられ、今も苦難の真っ只中に身を置かれている被災者の皆様方にこの場を借りてお見舞い申し上げます。国政に携わる者の一人として、一刻も早い復興に全力を尽くして参る所存でございます。

 さて質問に移りたいと思います。

 総理は今後の復興において、停止中のプラントを再稼働すると陳べられました。このプラントという言葉は、原子力発電所を指すという理解でよろしいですか。お答え下さい。


(廣瀬内閣総理大臣)

 いわゆるプラントにつきましては、原発もそうでありますが、休眠状態の火力発電所などもこれに含みます。委員が指摘されたような、原子力発電所だけに限定した話ではありません。


(小笠原委員)

 ありがとうございます。やはり原発も含めてのプラント、という理解で間違いないということですね。

 それではもう一点総理に伺いますが、本件核惨事におきましては高濃度被曝による急性死者約一〇〇万。強制、自主を含む避難者約六一〇〇万人という大惨事に至りました。

 この惨事の始まりは、正体不明の巨大球体が、当時廃炉作業中だった福島第一原発を襲撃したことに端を発します。その後当該球体を阻止するための自衛隊の出動類型の変遷や住民避難に伴う混乱など紆余曲折を経る中で、球体は北上を続け、同日中に二〇一X年に再稼働した宮城県男女みながわ原発など東北地方に所在する稼働状態の原子力発電所を次々と襲撃いたしました。

 とりわけ致命的だったのは、最初の福島第一原発における襲撃事件の際に、燃料保管用プールが倒壊し、使用済み核燃料が転げ落ちたことにより、放射性物質が大気中において燃焼して、至近の磐城第二原発から作業員を撤退させなければならなくなったことであります。これによって、磐城第二原発の原子炉の安定的な冷却が不可能になり、そのことによって常陸第二発電所からも作業員を撤退させる事態に陥りました。まさにドミノ式に過酷事故が連鎖したわけであり、このことが被害の拡大を招いたことは明らかであります。総理はその点どのようにお考えでしょうか。お答え下さい。


(廣瀬内閣総理大臣)

 委員のご質問の中には事実誤認の内容がありましたのでこの場で訂正させて貰います。

 ただいま頂いたご質問の中に「高濃度被曝による急性死者約一〇〇万人」というご発言がありましたが、これは政府統計に出て来る数字と明らかに異なります。「摩耗」襲撃時や避難の際に、交通事故等不慮の事故で多数の国民が犠牲になったことは間違いありませんが、現在のところ明らかに高濃度被曝による急性死者とされておりますのは九百九十六名の方々でありますので、この場を借りて訂正いたします。

 さて所謂磐城第二原発及び常陸第二発電所の作業員撤退問題につきましては、本来無限責任を負うべき事業者がこれを負わずに、プラントから撤退いたしましたことはまことに遺憾とするところであります。そのために関東電力及び東京原電の経営陣の刑事責任について、現在警察検察等関係機関において捜査中であると聞き及んでおります。


(小笠原委員)

 あのねえ総理。高濃度被曝の犠牲者数について、政府統計と現実の犠牲者数との間に相当乖離があるというのは、統計が発表されてからずっと言われてることなんですよ。例えば高濃度汚染地域に含まれている東京都。東京都のですね、核惨事発生前の人口と、東京都からの避難者数を突き合わせたら約三十五万人の誤差があるわけです。東京都だけでも三十五万人ですよ。未だに相当数の犠牲者のご遺体が、高濃度汚染地域に遺留され放置されているはずなんです。ご遺体の回収が行われていないだけなんですよ。総理がおっしゃる九百九十六名という数字は、汚染濃度が比較的低いところで亡くなり、死因を被曝による急性死と特定できた犠牲者の内数でしょ。

 復興の責任の一翼と申しましょうか、大部分を担う行政府が、被害を過小に評価したり、あたかも被害がなかったかのように振る舞うのはもうやめにしませんか。そんなことばっかりやってたら復興の方向性を誤りますよ。まあこの点に関しましては復興委員会でもしっかり追及させてもらいます。

 それでは総理は、本件核惨事の被害拡大の責任は飽くまで撤退した関東電力と東京原電の経営責任者に帰するというお考えでよろしいですか。

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