代表質問に対する答弁‐三
したがいまして昨日示しましたように、まずは汚染区域の除染を本格化させる橋頭堡を築き、ここに除染復興のための資材を大量に集積して、扇状に除染を進展させてゆく方法を提示したわけであります。
もちろん、除染活動につきましては大まかな方法論を申し上げただけで、具体的に進展してはおりません。また、ゴールへの到達となると、その時期も明確には申し上げることが出来ない現状にはございます。その間、汚染水については海洋に流出し続けるわけでございますが、私は日本国総理大臣として、国際社会にお約束いたします。
我が国には、福島第一原子力発電所事故の折に、汚染水の海洋流出問題に取り組んだ優秀な技術者が多数おります。私は、溶融燃料及び使用済み核燃料の撤去により、汚染水の発生流出問題に根本的解決を見るまでの間、我が国が擁するこれら優秀な技術者の、持てる技術とノウハウを活用し、汚染水問題の処理に責任を持って取り組みます。
続いて国民皆様方の生活に直結する経済政策に関するご質問にお答えします。
本件摩耗核惨事によって国土の大半が立入禁止区域に指定されている現状におきましては、当該地域に立地しておりました事業所等は閉鎖され、これによって大きな打撃を受けた民間企業の多くが倒産に追い込まれました。これによって先ほども申し上げましたとおり、失業者数は昨年同期比で実に六〇〇パーセントもの増加を見たわけであります。
いうまでもなく、行政府は国民の安定的な生活を保障するために雇用の創出を求められます。したがいまして、私は昨日の所信表明演説におきまして、雇用創出の一環として、自衛隊の増員及び稼働停止状態の発電プラントの再稼働を提唱したわけであります。これは、雇用の創出という目的以上の意味を持つものではなく、またそれ以下でもございません。議員ご指摘のような、軍拡による国際社会への恫喝などという目的があろうはずがございません。寧ろ広く国際社会のご助力を賜りたいと、この場を借りて全世界の皆様方にお願い申し上げます。
さて、本件摩耗核惨事による被災者への賠償問題でありますが、これにつきましては現在、無限責任を負うべき各原子炉の運営会社に対し、被災者等からの集団訴訟が本格化いたしております。かかる係争に関連いたしまして、政府として賠償責任を明言することは、三権分立の観点から妥当性を欠くものと信じます。被災者に対する損害賠償につきましては、関係機関におきまして適切に判断されることを期待しているとのみ、申し上げます。
最後に、核種変換技術の確立に向けた教育の推進につきましては野島議員からご質問いただきましたのでお答えいたします。
私は昨日の所信表明演説におきまして、先の二党間合意に拘泥することなく原子力発電所を再稼働することを表明いたしました。この目的とするところは、先ほども説明いたしましたように、世界的に見ても高いレベルにある我が国の原子力技術について、そのレベルを今後にわたって維持し続け、後継者を育成していくことにあります。そうでなければ、本件摩耗核惨事による汚染区域の除染及び将来待ち受けている溶融燃料及び使用済み核燃料の撤去作業という難事に立ち向かうことが出来なくなるからであります。
また、核種変換技術の確立と実用化は、今後の除染活動等を一挙に進展させる可能性を秘めている技術であります。もし皆様方が、核種変換技術に代わる画期的な除染方法等についてご所見をお持ちなのであれば、是非この場においてお示し頂きたいと思います。
私は、原子力技術に関する教育の充実を図ることによって、優秀な技術者を育成し、将来世代に対しても、本件摩耗核惨事による汚染区域の除染復興に責任を持つことを明言いたします。
以上で、野島議員のご質問に対する回答といたします。
いずれにいたしましても、除染及び復興はその端緒に就いたばかりであります。野島議員をはじめ、皆様方から広くご意見とご指導を賜り、この未曾有の国難に立ち向かって参る所存ですので、皆様方にはよろしくご理解とご協力のほどお願いいたします。
以上です。(拍手)
(以下略)
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