ガラスペンの君




間違うことのない人間だけが、

あのきれいなペンを使えるのだという迷信を、

私はそうと知りつつ持ちつづけています。


あなたはだから間違わない人で、

ペン先は迷いなくインクを吸い上げて、

便箋は疑いもせず染められてゆくのでしょう。

こいあいの文字は伸びやかに、

そのうえ礼儀正しく並び、

最後に打たれた点ですら

優しいこいあいに光っているのでしょう。


あなたはだから神格化されつづけ、

私はずっとその感覚に酔ったままでいます。

こいあいの文字は白けることなく、

神代からそこへあったかのように、

遠くまた近く、

深くあるいは限りなく高く、

言葉をいまも永劫にしているのでしょう。


間違うことのない人間だけが

あのきれいなペンを使えるのだという、

この私だけの信仰を、

どうかあなたの手指とペンで

書き記していただきたいと思い、

この手紙を送ります。



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