風景メモ:北の稲妻




北の空が光る、また光る。

車はびゅうびゅうと遠ざかる。

遠雷というにも遠すぎて

音は掻き消され届いてこない。

東へ流れる川がじゃぼじゃぼ話し続けるのは

三面護岸と鯉のため。

北の空がまた光る。

信号待ちの乗用車から

だれかが顔を出し、そして走り去る。

川の水面を蝙蝠が飛び交っている。

蝙蝠のひらめく向こうでいまだ

北の空は閃く。

また。

車は遠ざかる。

南の空には白い月。満月に多少欠けている。

北の空が光る。光る。光る。

自転車のひとは空を見たか。

走り去る。

北の空が光る。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る