醒める落日のあと
ピアノの音でめざめる
カーテンのゆれるような 午後
どこからか花の香りがやってきて
また どこかへと去っていく
熟れきって落ちた紅い果実を
痩せ細ったうさぎが追いかける
とびはねて
とびはねて
そして星々はいっせいにまたたく
ピアノの音は止んだ
暗やみに溶け入るあおがえる
はじまりの時に名前がつくのを
いまかいまかと 待っている
《休符、つまりは沈黙》
《息をのみ、胸をふるわせて、指揮棒を》
《おとせ》
――――はるか。
こずえのほうから
ふらふら、ふら
さいしょの
ともしびが
おりてくる。
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