第7話 会長の片思い

「『暁の原石』会長の家塚 羽衣は片思いの相手がいるようだ」

 いっつも会を取り仕切っている子ね。クラス委員もやってたっけ。

「一応言っておくと汝の事ではないぞ」

 分かってるよ。わざわざ言わなくていいよ。

 普段から場を取り仕切るのが好きな子みたいだけど、やたらエリザを担ぎ上げていたな。

 印象としてはエリザがいなければ彼女がクラスを仕切っているのだろう。もっともエリザは積極的に仕切っているわけではないから、実質クラスの長と言っていい。

 エリザのおかげであまり目立ってないけれど、学校でも指折りの美人とも言われているし、勉強も運動もできる。

 普通の学園物ならエリザの事を目の敵にしそうなキャラだけれど、このお金持ちのお嬢様には敵わないとみて即座に配下に入ったとも言えなくもない。

 強かで世の渡り方はうまいんじゃないかな。

 何人かの女子はエリザの顔色を窺うように僕にもそこそこ優しくしてくれるけど、このエリザの会会長は僕の事など見向きもしない。

 でもそんな子に片思いの相手がいるなんて正直驚きだ。もしかして男関係はからきしなのかも。

「だからきっと僕にも照れているだけで、本当は優しく接したいのに不器用な態度をとってしまうのかもしれない……、なんてわけはないだろう。羽衣は本当に汝の事が眼中にないのだ」

「ってなんだよ! 心を読んだの!?」

「魔術でも何でもない。汝の顔は液晶画面のように考えている事が映し出されておる」

 本当? と顔面をさすってみるが別に平べったくもないしタッチパネルのような感触もない。

「汝に色恋の話をしても無意味かもしれぬが」

 お前に言われたくないよ。僕だって初恋の相手くらいいる。

「というわけで、他ならぬ会長の悩みだ。ここは我が何とかしてやらねばな」

 そういうもん?

「『暁の原石』では階層が決められているようでな。幹部が会長達三人。それ以下は我もよく知らぬ。幹部試験や規則なんかもあるらしいのだが……」

 随分勝手な事やってるんだな。

「力を貸すのは平等であるべきだとは思うのだが、一番貢献してくれている者をないがしろにするのはそれはそれで示しがつかん。なので若干不本意ではあるが、まずは羽衣の願いを叶え、あとは幹部達で順番を決めてもらおう」

「いいのかな? そんな事に魔術を使って」

「何を言う。我らは既に十分彼らに助けられておるのだ。これは当然の恩返しだ」

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