第4話 ドン・ジェムストン
「私達、紫門さんのファンクラブを作ったんです。私が会長に任命された
ファンクラブ!?
エリザに向けて差し出された紙を横から覗き見ると紫門エリザの会(仮)と書いてある。会報みたいなものか?
創刊号は主要メンバーの紹介のようだ。真ん中の子が会長で左右にいるのがそれぞれ副会長と補佐。
「クラスの女子は全員会員です。男子も半分は会員です」
その中に僕は含まれているんだろうか、と名簿に目を通すが僕の名はない。彼女達には僕の存在はどう映っているんだろう。
いや別に入れてほしいわけじゃないんだけど。
「規則とかはこれから作っていこうと思うんですけど、第一の決まりは紫門さんに決めてもらおうと思って……、何かないですか?」
「うむ。なら一つ目の決まり事だ。会員は我の事をエリザと呼べ」
皇帝が勅命を言い渡すように、手を払いながらおごそかに言う。
それを聞いた彼女達は表情を明るくする。
「はい! エリザさん!」
名前は是非エリザに決めてほしいと勝手に盛り上がる女子を少し冷めた目で見る。別にないがしろにされた事を怒っているわけじゃないぞ。
「でもいいのかな? こんな騒ぎになって」
魔術なんて、ひっそりこっそりやるもんじゃないの? 別に迫害されるとかじゃなくて、単に恥ずかしいからなんだけど。
「何を言う。魔術の研究も、会員制の魔術クラブも、現実にあったものなのだぞ。その中のどのくらいが本物の魔術師だったかは分からんが、大国の大統領も何人かが会員だった。俗に言う秘密結社も、大抵元は魔術師の集まりだ」
クラスの女子達はエリザの服装に因んで魔術師と呼んでいるつもりのようだ。
中には占いを信じる感覚で本物の魔術師だと思っている子もいるみたいで、一部の女子の信奉ぶりは結構なものらしい。
魔女や黒魔術と呼ばれる事をよく思っていない事は知れ渡っているようで、暗黙のルールとして徹底されているのが分かる。
「暁の金剛石ってのはどう?」
エリザは何の事だ? と言わんばかりに眉を上げる。
「名前だよ。エリザの会の名前」
秘密結社にはそんな名前があったように思う。
一応嫌味でなく本気で考えたつもりだ。
金剛石、ダイヤなんていかにもエリザがたとえられて喜びそうだ。
エリザは小さく笑う。
「悪くないな。だが我はまだ未熟者だ。その名は早すぎる」
意外に謙虚なんだな、と少し笑う。
「我が会の名は『
きゃっきゃと騒いでいた女子達がピタッと収まり、再び沸き上がる。
「それいいですね」
「決まり、早速ロゴデザインしなきゃ」
勝手に盛り上がってめいめい散っていく。
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