波のように
新吉
第1話
砂浜を歩けば、いやでも聞こえてくる波の音。私はシロを連れている。昼間ではなく、こんな時間に海にいるのは水玉模様が似合うこの人のせい。紫色が似合いますねと言われた。一緒に海に行きましょうとも。私を連れ出してくれる人。それでも私は散歩がてらシロも連れて行くことを伝える。少し恨めしそうにシロを見る彼。嬉しそうに尻尾を振るシロとは正反対。
海の音は大きい、それでいて静か。それなのに心地よいリズムで胸の音をかき消してくれる。隣のその人の話を聞きながら、その後ろでずっと繰り返す波の音。ふと彼が波を、海を見つめる。私もつられて海を見る。夜になりかけた海を見る。いろんな色の混じった海をみる。いろんな生き物がいる海をみる。いろんな想いを飲み込んだ海をみる。町には灯があるけれど、今この波打ち際には2人きり。いいやあなたもいたわね、シロ。いてくれてよかった。
空には月が出ている。もうすぐもっと暗くなる。夜になっていく。迫ってくる波にのまれそうで、私は逃げている。まだ待っていてほしい。まるで波のように揺れている。そんな私を海が見ている。
ゆっくりと歩く
砂の感触
海風が過ぎていく
月も揺らめいて
波はうちよせてくる
隣を歩くその人に
揺られている
波音の合間に
もうそろそろ帰りましょうか
今度は2人で来ましょう
なんて彼が言うもんだから
おもわず笑ってしまう
波のように 新吉 @bottiti
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