梨とキュウリの甘酢ごま和え
「……梨?」
いつも通りの何を考えているのか解りにくい無表情で、マグは首を傾げている。自分達はこれから昼食の支度を始めるはずなのに、何でまた果物が当たり前みたいな顔で並んでいるんだと言いたいのかもしれない。
いや、果物が食卓に並ぶのは別にかまわない。デザートに出されることもある。ただマグが首を傾げた理由は、今からおかずを作るよ!みたいなテンションの
そんなマグの気持ちが理解出来たのか、悠利は笑って説明を始めた。
「今日はこの梨とキュウリで副菜を作ろうと思ってるんだよ」
「……梨とキュウリ?」
「大丈夫だから。ちゃんと美味しく食べられるおかずになるから」
「……諾」
本当にそうなのか?みたいな気配が若干マグから漂っていた。確かにまぁ、梨はどこからどう見ても果物であるし、甘くて美味しいけれどおかずになるとは思えないのだろう。しかし悠利は別に嘘は言っていないのだ。一応。
ちなみに悠利が用意した梨は、いわゆる和梨と呼ばれるものの中でも赤梨に分類されるものだ。茶色っぽいちょっとざらざらとした皮が特徴的な色合いの梨である。瑞々しい食感と仄かな甘みが魅力的な品種で、シャクシャクとした食感が楽しめる。
なお、どこで手に入れたのかと言えば、毎度お馴染み収穫の箱庭である。季節ガン無視でありとあらゆる食材が手に入る便利なダンジョンのおかげで、悠利達はいつも美味しい食材を手にすることが出来るのだ。この梨もその一つであった。
「と、いうわけで、今日はこの梨とキュウリで甘酢ごま和えを作ります」
「準備」
「あ、マグも解ってきたね。そう、まずはキュウリを切って塩もみが必要です」
これが必要なんだろう?と言いたげにボウルと塩を出してきたマグに、悠利は満面の笑みで答えた。流石に毎日交代で料理当番を続けているだけあって、マグも色々と段取りというか手順を覚えてきた感じがある。
基本的にキュウリは水分の多い野菜で、調味料の味を馴染ませるために先に水分を抜く必要がある。その作業が塩もみだ。切ったキュウリに塩を揉み込み、しばらく放置することで余分な水が出るのだ。
つまりは、最初にやるべき作業とも言える。キュウリを放置している間に他の準備を進めると段取りが良い感じになるので。
「キュウリは輪切りの薄切りでお願いします」
「諾」
悠利の言葉に、マグは任せろというように頷いた。水で丁寧に洗ったキュウリのヘタを落とし、慣れた手付きで輪切りを作っていく。……マグには若干職人気質なところがあり、こういった同じサイズに切る作業がとても得意なのである。
マグにキュウリの輪切りを任せておいて、悠利は梨のカットに取りかかる。梨はまず四等分にしてから皮を剥き、芯を取ったらそれを半分にして全体の八等分の大きさにする。そして、その梨を端から一口サイズに切っていくのだ。
キュウリは薄切りだが、梨はそれよりも少し厚みがあって食感を楽しめるぐらいのものにする。八等分にしたものを横から一口サイズに切るので、底辺が丸みを帯びた台形のように仕上がっていく。箸で摘まんでひょいと食べられるぐらいが目安だ。
そうして切った梨の一欠片を、悠利はひょいっと口へと運んだ。シャクシャクとした食感を楽しみつつ、梨の味を確かめる。噛めばじゅわりと広がる優しい甘さは、たっぷりの水分とあいまって口の中を楽しませる。梨の甘みはしつこくないのが魅力的だ。
「はい、マグも味見~」
「……?」
「味付けをする前に、梨がどれぐらいの甘さか確認すると、調味料の調整がしやすいかなってことで」
「……諾」
せっせとキュウリの輪切りを作っているところへ口元に差し出された梨に首を傾げていたマグだが、悠利の言葉を聞いて素直に口を開けた。その開いた口へ悠利は梨をぽいっと放り込んだ。マグは小さなそれを味わうように噛んでいる。
しばらくしてマグが梨を飲み込んだのを確認してから、悠利は問いかける。
「どう?」
「美味」
「うん、美味しいよねー。この瑞々しさと甘さを生かそうと思います」
「……諾?」
「あぁ、そこはまだ実感湧かないんだ……」
梨が美味しいのは認めたが、それでもこれがどうしてキュウリと一緒におかずになるのかは解らない、みたいな雰囲気を醸し出すマグ。言いたいことは何となく解ったので、悠利はあまり気にしなかった。確かに馴染みが薄いかもしれないなぁとは思っているので。
ただ、日本人である悠利にとっては、果物をおかずに合わせるのはそんなに珍しいとは思わない。賛否両論あるとはいえ、リンゴや缶詰のミカンが入ったマヨネーズのサラダなどもあるし、大根と人参の紅白なますに干し柿を加えた柿なますなる料理も古くから存在する。意外と果物はおかずにひっそりと交ざっているのである。
外国料理でも、ベリー系などはソースに活用されていたりする。肉料理でも、悠利も以前作ったが、オレンジソースで煮込むものもあったりするので、果物も食材の一つに加えても多分問題はない。後はやはり、馴染みの有無だろう。恐らく。
悠利がそんなことを考えている間に、マグはキュウリの輪切りを終えてボウルの中にキュウリを入れて塩を振っていた。慣れた手付きでもみもみと塩を全体に馴染ませている。作業が終わると、終わったと言うようにマグは悠利を見た。
「あ、キュウリの準備出来た?ありがとう。それじゃあ、甘酢を作ろうか」
「甘酢?」
「甘酢はね、お酢を使った合わせ調味料のことだよ。お酢と砂糖を混ぜて、そこに塩や醤油を入れて味を調えるんだ。砂糖の代わりにみりんでも作れるけどね」
悠利の説明に、マグはそういうものかと言いたげな表情をした。聞き慣れない単語だったので、またぞろ新しい調味料の入れ物が出てくるのかと思ったらしい。ちょっときょろきょろしていたので。
……確かに、現代日本のスーパーでは合わせ調味料として甘酢が売っているので、間違ってはいないだろう。ただ、《
合わせ調味料は便利だが、同時に既に完成しているのでその味でしか使えない。その点、シンプルな調味料の状態で持っていれば、使うときに自分で他の調味料と合わせて微調整が出来るのだ。どちらにも利点があるのです。
そんなわけで、悠利は甘酢を作るための準備を始めた。材料は先ほどマグに告げたものだけだ。お酢、砂糖、そして味の調整に塩もしくは醤油。本日は醤油をチョイスする。
そこで、出汁をこよなく愛する出汁の信者が反応した。悠利の取り出した醤油を見て、一言。
「出汁醤油」
「え……?」
「出汁」
じっと見つめてくるマグ。しばし悠利と無言の見つめ合いが発生する。相手が何を言いたいのかを理解した悠利は、静かに溜息をついてから口を開いた。
「今日は出汁醤油じゃない方が美味しく仕上がる気がするので、普通の醤油です」
「出汁、美味」
「出汁は確かに美味しいけど、今日の甘酢には不要です」
「…………諾」
「頷くまでが長いんだよねぇ……」
せっかく出汁を使える好機だったのに、みたいな雰囲気のマグだが、一応悠利の言い分を理解してはくれた。ただし、納得して頷くまでに長い長い沈黙があったので、心底納得したわけではないのだろう。隙あらば出汁を持ってこようとするのがマグなので。
ボウルにお酢と砂糖を入れながら悠利は思う。何でマグはこんなにも出汁に食いつくようになったのだろう、と。その理由は誰にも解らない。マグ本人にも解っていないようなので。
「甘酢の基本は、お酢と砂糖が一対一、つまりは同じ分量で入れる感じかな。でもお好みで、甘い方が好きなら気持ち砂糖が多め、酸っぱい方が良いならお酢の方が多めに作ると良いよ」
「諾」
「そして、砂糖がちゃんと溶けるまできっちり混ぜます」
「諾」
ぐるぐるとボウルの中身を混ぜる悠利の言葉に、マグはなるほどと言いたげに頷いた。そう、自分で甘酢を作るとこういう利点があるのだ。今日は基本に忠実に同じぐらいの分量で作っているが、お好みで調整出来るのもまた楽しい。料理の幅が広がります。
砂糖がちゃんと混ざったのを確認したら味見をし、そこに少量の醤油を入れる。醤油を入れることで味に深みが入るのだが、今日の味付けのメインは甘酢なので入れすぎないように注意が必要だ。醤油はあくまでも味の調整、隠し味程度の役目なので。
そして、そこに登場するのがもう一つの主役、ごまである。正しくはすりごまだ。ありがたいことにすりごまの状態で販売してあるので、悠利はとても助かっている。ごまを煎って自分ですりおろすところから始めると、結構疲れるので。
悠利がざらざらとボウルにすりごまを入れるのを見ていたマグが、ごま?と小さく呟いた。呟いてから、そういえばそうだったな、みたいな感じで一人で頷いている。そう、今日作ろうとしているのは梨とキュウリの甘酢ごま和えである。最初からそう言っている。
すりごまを入れたボウルの中身を、悠利は丁寧に混ぜる。調味料は全部きっちり混ぜておかないと、具材と合わせたときにきちんと絡まないのだ。地味だがとても大事な作業である。
「それじゃすりごまの入った甘酢が出来たから、ちょっと味見してみる?」
「諾」
「甘酢だしすりごまも入ってるからそんなに酸っぱくはないと思うけど」
そう言って、悠利は小さなスプーンで甘酢を掬ってマグに渡した。ぺろりとそれを舐めて、マグは少し考える。口の中に広がるのは確かにお酢の風味なのだが、砂糖と醤油で味わいとコクを加えられ、すりごまがまろやかさと風味を追加しているのが解る。酸っぱいとは特に感じなかった。
いや、お酢の酸味は確かに解る。解るのだが、思わず顔をしかめるような酸っぱさはない。つまるところ、食べやすい感じの味に調整されているのだ。
「美味」
「大丈夫だった?良かった。それじゃ、具材と混ぜようね」
「諾」
調味料の準備が出来たので、次は具材の最終確認だ。もとい、キュウリの塩もみがどれぐらい完了しているかの確認である。ボウルの中を覗き込めば、じわりと水分が滲み出ていた。
その余分な水分を捨て、キュウリを壊さない程度に軽く絞って梨と共に調味料の入っているボウルに移動させる。ぎゅ、ぎゅ、と絞るのは余分な水分を捨てるためだが、ここでやり過ぎるとキュウリの食感が楽しめないので力加減に注意が必要だ。悠利とマグなので心配はいらないが。
全ての具材がボウルに入ったら、全体に味が馴染むようにしっかりと混ぜる。ぎゅっと絞ったことでキュウリが幾つか重なっている部分も、バラバラにして梨と絡むようにするのがポイントだ。全体に緑と白の色のバランスが美しくなると、見た目が綺麗で食欲をそそるので。
もう一つのポイントは、調味料を作るのを、最終的に具材を全て入れて混ぜるボウルで行うことだ。こうすることで洗い物が一つ減るし、何より作った調味料全てを使い切ることが出来る。
ただし、どれだけの調味料を入れれば良いか解らないなどの不安がある場合は、別のボウルで調味料を混ぜて、具材の入ったボウルに必要分だけ入れるという作業の方が良いかもしれない。悠利は何となくの目分量で作ったところへ具材を入れ、薄かったら調味料を足せば良いやぐらいのスタンスで生きているが。
「さて、全体が良い感じに馴染んだので、味見です」
「…………」
「え、何でマグそんなに反応が微妙なの?」
「……梨、ごま……?」
「……ちゃんと美味しく出来てるから大丈夫だってば……」
味の想像が出来ている悠利と違って、マグは梨とごまの取り合わせに疑問が消えないのだろう。本当にそれで美味しくなっているのか?みたいな気分に違いない。いかに悠利の味覚を信頼していても、あまりにも満ちすぎて意味が解らないという感じなのだろうか。
……なお、甘酢に出汁醤油を使っていた場合は、きっと、こんな反応をせずに早く味見をさせろという方向に舵を切っていただろうマグである。出汁の信者は、出汁が入れば何でも美味しいと信じているので。
百聞は一見にしかずと言わんばかりに、悠利は小皿に梨とキュウリの甘酢ごま和えを入れてマグに渡す。じぃっと小皿の中身を見つめていたマグは、少しして意を決したように口へと運んだ。……そんなに気合いを入れなくても良いのに、と思いながら悠利は既に食べている。
口に入れた瞬間に広がるのは、やはり甘酢の風味だった。砂糖の甘さで優しさを追加しているが、お酢の酸味がふわりと香る。その奥に醤油が全体をまとめるようにひっそりと存在し、すりごまが香ばしさとまろやかさを主張する。
そんな調味料の味わいに、具材も決して負けてはいない。梨はシャクシャクとした食感と瑞々しい甘さで存在感を主張し、キュウリは水分多めにしんなりとしながらも歯応えを感じさせる食感でアクセントを添える。梨の甘さと甘酢の甘さが調和し、そこにキュウリが爽やかな瑞々しさを添えていた。
まぁ、端的に言えば美味しいのだ。少なくとも悠利は美味しいと思っている。梨と甘酢のおかげで甘~く仕上がっており、これならお酢の酸味が苦手な面々も食べやすいだろうなぁと思えた。
悠利はちらりとマグを見た。これは本当に美味しいのか?みたいな疑いを持っていたマグがどういう反応をするのか気になったからだ。食べてみてまだ微妙な反応だったら、それはちょっと考慮が必要だ。
しかし、その心配は杞憂だった。
味見用の小皿にちょっとだけ入れた梨とキュウリの甘酢ごま和えを、マグはぺろりと食べている。口がもごもごしているので、味わっているのだろうか。その表情はいつも通りのスタンダードな無表情で、不快感などは見当たらない。
「マグ、どうかな?」
「……美味」
「……何でそんな不思議そうな顔で言うの……」
美味しいなら美味しいで良いじゃない、とぼやく悠利。しかしマグは、何故コレが美味しいのか解らない、みたいな反応だった。無理もない。マグの中で梨とごまが合うという考えはなかったのだ。
とはいえ、マグの口にも合ったことが判明したので、問題なく本日の副菜として提供出来る。悠利にとって重要なのはそれだけである。
「それじゃ、他のおかずも作っちゃおうか」
「諾」
副菜だけでは昼食は出来ない。悠利とマグは、手分けして他の料理の準備に取りかかるのだった。
「意外なものが意外なものと合うということの見本みたいですね……」
「ティファーナさん、そこまで言います……?」
「あら、ごめんなさい、ユーリ。貴方が作ってくれる料理が美味しいのは知っています。ただそれでも、梨がおかずになるのも、ごまと合うのも意外すぎたので」
本心と言いたげなティファーナの発言に悠利がツッコミを入れれば、麗しのお姉様は優しい微笑みで説明をしてくれる。まぁ確かに彼女の言い分も解るので、悠利も別にそこまで気分を害したわけではない。
ただちょっと思っただけだ。梨ってあんまり料理のイメージがないんだなぁ、と。まぁ、そのまま食べても美味しいので、わざわざ料理に使おうと思うことがないのかもしれない。果物はそういうパターンが多いと悠利は勝手に思っている。
他の仲間達も梨がおかずとして出てきていることには驚いているようだ。それでも、騙されたと思って一口食べたら美味しかったので、特に問題は起きていない。……恐らくそれは、悠利が食卓に出す料理への信頼なのだろう。悠利の味覚への信頼とも言えた。
もっとも、たまーにごく一部にのみ大歓迎される料理というパターンも存在するので、全てが全て諸手を挙げて歓迎されるわけではないが。魚の生食とか、ねばねば系とかは、一部にのみ受け入れられる感じのやつである。悠利は全部美味しいと思っているのだが。
「それにしても、どうして突然梨をおかずにしようと思ったんですか?」
「別に深い意味はないんですよ。美味しそうな梨があったし、キュウリもあったから、それじゃあ甘酢ごま和え作ろうって思っただけなんです」
「あら、本当にそれだけだったんですね」
「そうです」
皆には珍しい食材の使い方かもしれないが、悠利にしてみればいつものメニューの決め方なのだ。思った以上に梨をおかずにすることに仲間達の反響があっただけで。
そんなことを考えながら、悠利はもりもりと梨とキュウリの甘酢ごま和えを食べている。我ながら美味しく出来たとご満悦だ。作ってすぐに食べるのも美味しいが、ちょっと時間をおいて味が馴染んだ状態で食べると更に美味しい。
ただし、あまり長くおいておくと、キュウリから水が出てきて味が薄まる危険性がある。キュウリはほぼ全てが水分なので、どれだけ塩もみで水を抜いても水は出るのだ。夏場にはもってこいの野菜だが。
なお、悠利が甘酢ごま和えを選んだのは、皆にお酢を摂取して貰おうと思ったからだ。お酢は疲労回復に効くとか、夏バテに効くとか言われる調味料なので、暑い季節にぴったりだと思ったのである。
ただ、レモンなどの柑橘類以外の酸味は不得手な面々もいるので、少しでも食べやすいようにと甘酢にしてみたのだ。砂糖の甘みのおかげで酸っぱさが軽減されているので、きっと食べやすいだろう、と。
その目論見は成功し、仲間達は美味しそうに梨とキュウリの甘酢ごま和えを食べてくれている。瑞々しい梨の甘さと、馴染みのあるキュウリの食感を楽しみながら、すりごまのおかげでまろやかになっている甘酢の風味を堪能している。良いことだ。
それに、梨もキュウリも水分多めの食材なので、そういう意味でも持ってこいだった。勿論、直接水を飲むなどで水分補給をするのが大切だが、食事から得られる水分というのもバカには出来ないのである。
「これ、面白いですねぇ」
「面白いってなんですか、ジェイクさん……」
「あぁいえ、美味しいのは勿論なんですが、何というか、不思議に調和するなぁと」
「はぁ……」
にこにこ笑顔で梨とキュウリの甘酢ごま和えを食べる学者先生。彼が何を言いたいのか、イマイチ悠利には解らない。ティファーナに助けを求めるような視線を向けるが、お姉様にも解らないのか小さく首を左右に振っていた。
「キュウリが色々な味付けに調和するのは何となく解るんですよ。水分が多くて味の自己主張が少ない気がするので」
「はぁ」
「ですが梨は、独特の甘みと食感で確かな存在感がありますから、この甘酢ごま和えと合うのが以外だなぁと思いまして」
楽しげに語るジェイク。どうやら、学者先生の中の何かのスイッチを押してしまったらしい。もぐ、と甘酢ごま和えを口に運んで梨とキュウリの食感を楽しんでいた悠利は、別にそんな小難しいことを考えて料理はしてないですという言葉を、悠利は飲み込んだ。
確かに、科学的な側面とかのアレコレを考えて料理を分析するとかはあるらしいと知っている。知っているが、悠利は何となく美味しそうだからという理由でしか料理をしていない。もしくは、食べたことがあるから、だ。
一人でうきうきと色々考えて楽しそうにしているジェイクを見て、ティファーナを見る。お姉様は何を考えているのか解らないアルカイックスマイルを浮かべていた。
「……とりあえず、楽しそうなので放置で大丈夫ですかね?」
「まぁ、ジェイクですし」
「解りました。放置しておきます。ご飯美味しいー」
自分にとって大事なのはそっちだと言わんばかりの悠利に、ティファーナは楽しそうに笑った。そうですね、と同意してくれる程度には、お姉様もジェイクの語るアレコレには興味がなかったらしい。
意外な食材を使った料理は、仲間達に驚きを与えつつも受け入れられ、梨ってこんな食べ方もあるんだねーとしばらく話題になるのでした。料理の可能性は無限大です。
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