デザートは果物たっぷりフルーツタルト

 食事を終えて一段落した一同。その中で、悠利ゆうりは満を持してと言わんばかりにそれを取り出した。


「今日は食後のデザートもあります!」


 満面の笑みで悠利が取り出したのは、トレイに載った様々なフルーツタルトだった。ミニと呼んでも良いだろう、小さな丸形のタルト達だ。具材はフルーツで、一つ一つは小さいが様々な種類が用意されていてカラフルだった。

 突然出されたミニフルーツタルトに、一同はきょとんとする。そして次の瞬間、アリーはブルックの肩をがしっと押さえた。大人しく座っていろという意思表示に、立ち上がりかけていたブルックが動きを止める。

 

「……ユーリ、そういうもんを出すときは、先に言え。このアホが反応する」

「……あ、すみません」


 甘味大好き剣士殿の反応速度をうっかり忘れてしまった悠利だった。普段ならば忘れたりしないのだが、今日は他の方に意識が向いていたのでうっかりしてしまったのだ。誰にでもそういうことはあります。多分。

 気を取り直して、悠利はブルックに待っていてくれるように目で訴えてから説明に入る。今日のデザートの内容を説明するべき相手はブルックではないのだ。それは、目の前で不思議そうな雰囲気を出しているマギサなのだ。


「あのね、マギサ。このタルトに使われてる果物は、マギサの果物なんだ」

「エ?」

「これはね、マギサにいつもありがとうって気持ちでルシアさんが作ってくれたんだよ」


 そう、悠利が伝えるべきはそこだった。今日のデザートはマギサのために準備されたものなのだ。

 ルシアというのは、大食堂食の楽園で働くパティシエのお姉さんだ。悠利とも仲が良く、いつでも笑顔で美味しいスイーツを作ってくれる。彼女の作るスイーツはとても美味しく、多くの人に愛されている。

 そして、そのルシアはここ、収穫の箱庭の恩恵を受けていると言っても過言ではない。何せこのダンジョン、季節の法則を無視して食材が手に入るのだ。完全にランダムで、いつ何が出現するかは解らないが、とりあえず季節外の食材が手に入るという特別仕様だ。

 多少季節外れでも依頼でスイーツを作らなければいけないときなど、一縷の希望に縋るように利用される場所である。実際に何度もそうやって危機を乗り越えてきたらしい。しかも、ダンジョン食材は美味しいというのがお約束。その例に漏れずここの果物は大変美味しい。

 また、収穫の箱庭へ赴いたが望む果物がなかったとき、悠利がマギサからお土産として貰った果物をお裾分けしたこともある。ちなみに何故悠利がそんなことをしたかというと、大好きな友達を助けたいヘルミーネに助力を請われたからだ。

 とにかくそんなわけなので、ルシアはマギサに感謝の意を示したいと常々思っていたらしい。そこへ、悠利が遊びに行く予定を聞いたことで、何かお礼が出来ないかという相談が舞い込んだのだ。

 そこで悠利が考えたのが、収穫の箱庭の果物を使ったスイーツをお土産にすることだった。

 マギサは、自分が生み出した食材が外の食材と一緒に料理されるのを好む。ならば、ルシアの見事な腕前で素晴らしいスイーツに仕上げれば喜ぶに違いないと思ったのだ。

「僕、何モシテナイヨ?」


 ルシアを知らないマギサは、悠利の言葉の意味が理解出来なかったようだ。不思議そうに小首を傾げている。そんな姿も愛らしい。


「ルシアさんはスイーツを作るお仕事をしている人なんだけど、ここの果物に助けられているんだって。だから一度、マギサにお礼がしたかったらしいんだ」

「ソウナノ……?」

「そうなんです。マギサが喜ぶものが何か解らないっていうから、マギサの果物でスイーツを作ってもらったんだよ」


 ダンジョンマスターに渡すべきお礼の品など解らないが、こうして持ってきたタルトをマギサが喜んでくれるという確信が悠利にはある。説明を聞いたマギサは悠利の顔と、悠利が手にしているタルトを見比べている。頑張って情報処理をしているというところだろうか。

 しばらくして状況を理解したらしいマギサが、そぉっとミニフルーツタルトに手を伸ばす。触れはしないが、そこにあることを確かめるように手を近づけていた。

 そして、そこに使われている果物が紛れもなく自分が生み出したものだと理解して、ぱぁっと顔を輝かせた。


「僕ノ果物!」

「うん、マギサの果物だよ」

「コレ全部、僕ノ果物ナノ?」

「そうだよ」

「凄イ!」


 そこで興奮が頂点に達したのか、マギサはその場でくるくると回り出した。空中に浮かぶ幼児がくるくると回る不思議な光景だが、慣れている悠利は気にしない。ルークスも同じく気にしない。

 別に慣れているわけではないが、相手がダンジョンマスターで常識を求めても色々と無駄だと思っているアリーとブルックも、あまり気にしていなかった。悠利から色々と話を聞いているのも理由だろう。なので、驚いたような反応をしているのはフレッドだけである。

 それはともかく、マギサに説明がちゃんと通じたのを理解した悠利は、トレイに載ったミニタルトを示して口を開いた。


「そんなわけだからマギサ、好きなのを選んで良いよ」

「エ?」

「マギサへのお礼だからね。一番に選ぶのはマギサだよ」

「ワァ……」


 そんな贅沢をしても良いのかと言わんばかりの喜びようだった。てっきりいつものように、悠利が「これがマギサの分だよ」と言って渡してくると思っていたのだろう。自分で選んでも良いと言われて、それも沢山ある中から選んでも良いのだと言われて、マギサは大喜びだった。

 どれにしようかと一生懸命悩みながら、マギサはフルーツタルトを見比べている。……ダンジョンマスターであるマギサに、食事の必要はない。味覚はあるが、別に食べなくても生きていける。それでも悠利達と一緒に食事をするのは楽しいらしく、普通の子供のように喜ぶのだ。

 しばらく考えてマギサは、一つのタルトを指差した。


「僕、コレニスル」

「イチゴのタルトだね」

「ウン」


 満面の笑みを浮かべるマギサに、悠利は真っ赤なイチゴが艶々と美しいミニタルトを小皿に載せて渡した。お皿を手にしたマギサは、その状態で再び空中でくるくると回り出した。「僕ノ果物デ作ッタ素敵ナタルト」と言いながら、とても嬉しそうだ。

 優先順位一位のマギサにタルトを選ばせた悠利は、次の相手に選んで貰おうと身体の向きを変えた。……何やら突き刺さってくる慣れ親しんだ視線は、とりあえず無視をした。


「それじゃあ、次はフレッドくんが選んでくれる?」

「え?僕で良いんですか……?」

「フレッドくんはお客様だからね。優先順位が上です」


 えっへんと言い切る悠利に、フレッドは笑った。やんごとなき身分の誰かに対する優先順位ではない。自分の大事なお友達でお客様だからなのだという悠利の主張に、フレッドは嬉しそうに笑うのだ。……そんな扱いすら、普段は望めないのが彼の立場なので。


「それでは選ばせていただきますね。……それにしても、とても美味しそうなタルトですね」

「ルシアさんのスイーツは最高に美味しいから」

「そのルシアさんという方は、それほどの腕前なのですか?」

「んー、僕が知る中では一番かな。パティシエさんなんだよ」


 悠利の説明を受けたフレッドは、あぁ、と納得したように頷いた。パティシエは悠利が発見した職業ジョブで、ルシアが第一号みたいな感じではあるが、そういう職業ジョブがあることは知られるようになった。お菓子作りの専門家として。

 フレッドは博識なので、新しく発見された職業ジョブの情報もきちんと知っていたのだろう。説明が早くて助かるなぁと悠利は思った。


「作り手がパティシエで、使用している果物がここの食材、と」

「そう」

「……それは、最強の組み合わせなのではありませんか?」

「個人的には最強だと思ってます」

「ですよね」


 お菓子作りのプロに、とっても美味しい迷宮食材の果物を与える。それによって生み出されたスイーツが、美味しくないわけがない。自明の理である。

 そんな雑談をしつつ、フレッドは真剣にタルトを選んでいた。常日頃、こんな風に自分の目で見て感情一つで選ぶことがないのだろう。ほんの少し優柔不断みたいになっているが、目移りしてしまうのも無理はないほどにどれも美味しそうなので仕方ない。

 ……ただ、順番待ちをしている誰かさんの視線が、じりじりと悠利に突き刺さっているだけである。そこで割り込まず、一応は大人しく待っているだけ大人と言えるだろう。

 なお、相棒のことをあまり信じていないのか、アリーはブルックの肩に手を置いたままだたった。力では負けるが、それでもそうすることで大人しくしろという意思表示をすることは出来る。

 しばらく悩んでから、フレッドはタルトを指差した。彼が選んだのは、真っ白な果肉が美しい白桃のタルトだ。


「こちらの桃のタルトをお願いします」

「はい、どうぞ」

「ありがとうございます」


 小皿に乗せられた白桃のタルトを受け取って、フレッドは嬉しそうに笑った。マギサと二人、皿に載せたタルトを見せ合いながらニコニコしている。皆の手元に渡るまで先には食べない辺りが、行儀が良いとも言えた。

 そして、悠利はトレイを持ったまま大人二人の元へと近づいた。


「ブルックさん」

「何だ」

「とりあえず、まず、一つです。お代わりは後です」

「承知した」


 悠利がトレイを持って近づくと、すぐにどんなタルトがあるのかを確認するように身を乗り出してきたブルック。そのブルックに、悠利は静かな口調で釘を刺しておいた。まぁ、ブルックは独り占めするような男ではないので心配はしていない。

 ただ、ルシアのスイーツに目がないブルックなので、念のため釘を刺しておこうと思っただけだ。ブルックの隣でトレイを見ているアリーが、悠利に問いかける。


「俺はあんまり甘いのは得意じゃねぇんだが、良さそうなのはあるか?」

「大丈夫です。こっちのグレープフルーツとか、ベリー系とかは酸味が強めなので甘さ控えめですよ」

「んじゃ、そっちのグレープフルーツで」

「了解です」


 決めきれないと言わんばかりに悩み続けているブルックの傍らで、アリーはさくっとタルトを選んだ。小皿に乗せて渡す悠利に、助かると一言告げたのは、本心だったのだろう。

 アリーは別に甘味が食べられないわけではない。ただ、甘ったるいスイーツよりは塩気のあるものを好む傾向が強い。クリーム系のケーキよりはチーズ系のケーキを好むような感じだ。また、梅農家育ちで梅干しを普通に食べる彼は、酸味を忌避しない。なので先ほどの悠利のチョイスになる。

 そして、まだ選ぶことが出来ないでいるブルックを、悠利は大人しく待った。急かすことはしなかった。気の済むまで悩んで、好きなモノを選んで貰えば良いと思っている。相手は甘味大好き剣士殿である。迂闊なことを言って逆鱗みたいなものに触れたくないのだ。

 悩みに悩んで、ブルックが選んだのはオレンジが載ったタルトだった。悠利はいそいそと小皿にタルトを盛り付けるとブルックに渡す。それが終わると、自分の分のタルトを選ぶ。悠利が選んだのはキウイが載ったタルトだ。


「それでは皆さん、実食をどうぞ。あと、お代わりはまだあるので、好きに食べてください」


 そう告げて、悠利はトレイの上に残りのタルトも追加した。……同行者にブルックがいると聞いたルシアが、数を多めに持たせてくれたのだ。ありがたいことである。

 それに、ミニタルトなので悠利でもお代わりが出来そうなのだ。色々な味を少しずつ楽しめるのはとても嬉しい。なお、お代わりがあると解った瞬間ブルックの目が光った気がしたが、悠利は見なかったフリをした。世の中には、知らない方が良いこともあるのだ。

 甘味に取り憑かれたような剣士殿がどういう行動をしようが、悠利には関係ない。悠利にとって重要なのは、この、とてもとても美味しそうなフルーツタルトを堪能することなのだから。

 あーんと口を開けて、悠利は手にしたフルーツタルトをかじる。ミニサイズの円形なので、手に持ちやすいのがありがたい。上に乗った果物から下のタルト生地まで一気にがぷりと噛んで口の中に入れれば、美味しさが一気に広がる。

 最初に感じるのは果物の瑞々しい食感だ。悠利が選んだのはキウイだが、よく熟しているのか甘みが強い。そのキウイを受け止めるのは甘さ控えめの牛乳の風味が際立つ生クリーム。まるで包み込むような優しさでまろやかさが口中を満たす。

 そして最後に、タルト生地。囓ったときから解っていたが、固くもなく、柔らかくもなく、絶妙の食感だった。ザクザクとホロホロの間という印象だろうか。フォークで食べたとしても簡単に切れそうな固さに調整されている。そして、バターの風味が豊かだ。

 個人的にこのタルト生地の食感が絶妙だと悠利は思う。口の中で簡単に砕けて解けるので、果物やクリームと混ざり合うのだ。一緒に味わうというのはそれぞれの美味しさを引き立てるらしい。

 幸せそうな顔でタルトを食べていた悠利は、ちょんちょんと突かれて視線をそちらに向けた。そこには、イチゴのタルトを半分ほど食べたマギサが、顔を輝かせていた。


「マギサ?どうかした?」

「美味シイ……」


 ほわっと笑うマギサの口から零れたのは、その一言だった。真っ赤に熟したイチゴの甘さと酸味、カスタードクリームの濃厚な旨味、そしてタルト生地の食感とバターの風味。口の中に広がる味を思い出しているのか、とてもとても嬉しそうだ。

 また、味が美味しいというだけではないのだろう。僕ノ果物、とマギサはにこにこしながらイチゴを示している。自分の生み出した果物を、こんな風に美味しくしてくれたという喜びが溢れている。そして、その喜びをお友達の悠利に伝えたかったのだろう。


「美味しかった?それなら良かった。ルシアさんも喜ぶよ」

「アノネ、アノネ、僕ノイチゴダケド、チョット違ウノハ何デ?」

「え?違う?」


 マギサの言葉にどういうことだろうと考えた悠利は、イチゴが艶々と光っているのを見て理解した。その状態が当たり前で悠利はあまり気にしていなかったが、果物の乾燥防止や固定のために塗られている透明なジュレ状の物体だが塗られているのだ。ナパージュという手法で、場合によっては色や味を付けることもあるが、今回ルシアが用いたのは無色透明のものだ。おかげで果物の味を邪魔していない。


「えーっと、崩れたり、乾燥したりしないように、イチゴの上に透明のジュレが塗ってあるんだよ。それでちょっと見た目や食感が違って思えるんじゃないかな」

「工夫?」

「そう、美味しく食べて貰うための、綺麗に作るための、工夫だよ」


 悠利の言葉に、マギサは感心したように艶々と輝くイチゴを見ていた。……世間知らずのダンジョンマスターにとっては、そんなことも世紀の大発見になるらしい。凄い凄いと言いながら、イチゴをじぃっと見ている。

 気に入ってくれたのなら良いやと、悠利は視線をフレッドに向けた。手づかみでタルトを食べる経験はなかったのだろう。少し躊躇いながら囓る姿は微笑ましい。

 フレッドが選んだのは白桃のタルトで、柔らかな桃の果肉が簡単に噛みきれる。たっぷりの生クリームが桃の甘さを包み込むことでくどさがなく、タルト生地の食感が彩りを添える。白桃の甘さを生かしつつ、クリームがそれを引き立てるようなバランスだ。


「どう、フレッドくん?」

「とても美味しいです」

「良かった」

「ただ」

「ただ……?」

「こんな風に手で持って食べるのは馴染みがないので……」


 悠利が見ていて思った通りの感想だった。やっぱり普段はフォークを使って食べているんだなぁと理解する。いや、悠利も切り分けたタルトの場合はフォークで食べるけれど。

 何となくだが、掌にすっぽり収まるサイズのミニタルトは手に持って囓りたいのだ。後、彼らは今屋外で食事をしている状態だ。テーブルもないので、こちらの方が食べやすいというのもある。

 そしてフレッドも、慣れないと言いつつも別に嫌がっている素振りは見せなかった。むしろ、困惑しつつも楽しんでいる感じだ。……きっと、護衛や従者がいたら出来ない経験だと思っているのだろう。その可能性は否定できないなと思う悠利だった。

 そんな風に少年二人がにこにこしている傍らで、トレイの上のミニタルトはどんどん減っていた。……決して味わうことなく食べているわけではないのだが、ブルックが次から次へとお代わりをしているのだ。

 普段の食事と同じだ。静かに黙々と食べているので気付かれにくいが、彼は食事のスピードが速いのだ。一口が大きいのもあるかもしれない。悠利やフレッドがちょっとずつ囓っているタルトを、一口で半分は食べていた。

 勿論、口の中に入れたタルトを味わうのは忘れていない。ルシアのスイーツの大ファンであるブルックは、その美味しさを確かめることに余念がないのだ。……その状態でも食べるのが速いだけである。

 一口が大きいと言えばアリーもなのだが、こちらは一つ食べれば満足だったのか、お代わりには手を伸ばしていない。もりもり食べている相棒を見て、面倒くさそうな顔をしているだけだ。


「おいブルック」

「何だ?」

「お代わりするのは良いが、フレッド様やマギサの分も残すのを忘れるなよ」

「勿論だ」

「……本当か?」


 スイーツになると目の色を変える相棒を知っているだけに、アリーは疑わしげにブルックを見ている。そう思わせるほどの、凄いスピードで減りゆくタルトなのである。

 タルトがどんどん減っていることに気付いたマギサが、手にしていたイチゴのタルトを慌てて口へと放り込もうとしている。マギサは幼児のような外見をしているので手も口も小さく、どれだけ頑張って食べても一口はそんなに大きくないのだ。

 それでも、目の前の美味しそうなタルトへの興味は尽きないのだろう。自分の果物を使って作ってくれたスイーツということで、お代わりをしたいに違いない。慌てるマギサを落ち着かせようと悠利が口を開くより先に、食事に加わらず大人しくしていたルークスが動いた。


「キュピー」

「え、ルーちゃん?」

「キュ、キュイ!」

「……どうした、ルークス」


 愛らしいスライムは、身体の一部をみにょーんと伸ばして、ブルックの手とトレイの間に境界線を引いた。ブルックがそれを越えようとすると、ダメだというように動かして牽制する。

 そう、牽制だった。ちょっと待ってと言いたげな行動。普段滅多なことでは仲間達の邪魔をしないルークスにしては、珍しい行動だ。だが、ブルックとマギサ以外の三人は、ルークスが何をしたいのかを把握した。


「ルーちゃん、優しい」

「えぇ、本当にルークスくんは優しいですね」

「ブルック、お前、スライムにまでちょっと待てと言われてるぞ」

「……なるほど」


 アリーのツッコミに、そういうことかと理解したらしいブルックが、トレイに伸ばしていた手を引っ込める。小さな口でせっせとタルトを食べているマギサは、そんな皆のやりとりに気付いていなかった。食べ終わらないとお代わりが出来ないので一生懸命なのだ。

 そんなマギサを微笑ましく見守り、一同はこの小さなダンジョンマスターがお代わりのタルトを選ぶまで待とうと頷き合うのだった。マギサがここまで喜んでくれたなら、ルシアさんに良い報告が出来るなぁと考える悠利なのでした。




 そして、大量に持ってきたフルーツミニタルトは皆のお腹に消えて、大満足のままに食事を終えたのでした。



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