音痴と呪いと海神の加護

 それは本当に、たまたま、偶然、うっかり、気付いてしまったことだった。本当にうっかりで、わざとではないのだ。それでも確かに悠利ゆうりは、イレイシアのステータスを確認してしまった。

 悠利は鑑定系最強のチート技能スキルである【神の瞳】を持っているが、許可なく相手のステータスを見るのはプライバシーの侵害だということもちゃんと理解している。遠慮なく見ても良いのは【神の瞳】さんが赤判定を出した相手、すなわち悪者だけである。

 普段の悠利は、仲間達の体調管理以外で彼等の状態を鑑定したりはしない。まぁ、色々と出来た技能スキルである【神の瞳】さんは、悠利が自分から鑑定しなくとも、具合の悪そうな仲間には赤とかオレンジとかの色判定でお知らせをしてくれるのだが。……持ち主に合わせてアップデートされていくトンデモ技能スキルであった。

 それはともかく、悠利はイレイシアのステータスを勝手に見てしまったことになる。見なかったことにするには、ちょっと色々と気になる文言も見えてしまった。しかし、当人に伝えるのもアレな内容だったので、悠利はひとまずアリーの元へ向かうことにした。困ったときには保護者にお伝えするのが筋である。

 ……少なくとも、勝手に行動してわやくちゃになるよりは、事前にお話しておいた方が良いのだ。アリーにもそう言われているし。

 そうと決めた悠利は、自室で書類仕事に勤しんでいるであろうアリーの元へと移動する。イレイシアは仲間達と楽しそうに談笑していた。悠利が見た状態とは無縁のような、いつも通りの柔らかな笑顔だ。だからこそ悠利は彼女の顔を曇らせるような質問をしたくなくて、こうしてアリーの元へ向かっているのだった。

 ノックをしてお伺いを立てれば、アリーはすんなりと悠利の入室を許可してくれた。どうやら仕事が一段落していたらしい。良いタイミングだ。まぁ、そうでなくともアリーは、突然尋ねてくる悠利を邪険に扱うことはない。仕事中にやってくるのはよほどのことだと解っているからだ。


「それで、何があった?」

「イレイスのことなんですけど……」

「イレイシア?……何があった」


 悠利の言葉に、アリーの表情が強ばった。他の訓練生の面々ならば、何か騒動を起こしたとか、騒動に巻き込まれたと言ってもいつものことで終わる。しかし、イレイシアはそうではない。彼女は皆が騒いでいるときも一歩引いた場所で大人しくしているタイプなので、面倒ごとに巻き込まれることはそうそうない。

 ……まぁ、裏を返せば、皆が暴走しているときに止める力も持っていないというものなのだが。少なくとも己の身の安全は確保できているので良しとしよう。


「その、うっかりイレイスのステータスを見てしまったんです」

「……それで?」

「……あの、アリーさんはご存じなんですか?」

「……」

「イレイスの状態に、呪いってあったんですけど……」


 アリーの静かな表情からは何も読み取れず、悠利は小さな声で呟いた。イレイシア本人に聞かなかったのは、内容が内容だったからだ。呪いなんて、ちょっと物騒だ。

 それに、補足説明で当人は知らないと出ていた。イレイシアに何らかの呪いがかかっており、しかも彼女はそのことを知らない。ただ、イレイシアの母親から直々に彼女のことを頼まれているアリーなら、何かを知っているのではないかと思ったのだ。

 悠利の言葉に、アリーは盛大にため息をついた。そこで悠利は理解する。アリーは全部知っているのだと。


「ちょっと待て。準備する」

「……準備?」


 はて?と首を傾げる悠利の前で、アリーは机の引き出しから小さな置物を取り出した。卓上に飾るインテリアのようなそれは、三角錐にお洒落な装飾がついている感じのものだった。見た目は大変綺麗だが、ぶっちゃけて言うと、見栄えより使い勝手を優先するアリーにはあまり似合わない。

 そんな風に考えている悠利の前で、アリーはその小さな置物の中央にあるボタンを押した。一見すると宝石飾りのように見えるが、ぐっと押し込んでいたのでボタンだったのだろう。

 次の瞬間、ぶわりと室内の空気が変わった。風が全身を走り抜けたような違和感。そして、それまでざわざわと聞こえていた外の音が、一切聞こえなくなった。


「……アリーさん、これ、何か特殊な魔法道具マジックアイテムなんですか?」

人工遺物アーティファクトだ。音を遮断する結界を作る道具でな。聞かれたくない話のときに使う」

「…………使ってるの初めて見ましたけど」

「先日手に入れたんだ」

「へー……。凄いものがあるんですねぇ」


 暢気に悠利は感心しているが、アリーがこのレア度の高い人工遺物アーティファクトを手に入れた原因は、悠利である。この、ぽこぽこぽこぽこやらかす、スペックお化けのくせに危機感の存在しない天然ぽやぽやと会話をするときに必要だと思ったのだ。

 そして今、良い感じに人工遺物アーティファクトは仕事をしていた。話題が話題なので、他の誰かに聞かれるのを考慮してのことである。いくら声を潜めて話していても、誰が何時やってくるか解らない場所だ。廊下を通った誰かに聞こえては困る。

 ついでとばかりに、アリーはドアに鍵をかけた。完全なる密室。これで、中の音は外に漏れないし、突然誰かが入ってくることもない。万全の体制だった。

 つまりは、そこまでするほどの話題なのだと理解して、悠利も気を引き締めた。


「で、本題だ。イレイシアの呪い、お前にはどう見えた?」

「かなり強固な呪いで、音痴の原因だってなってましたけど」

「それだけか?」

「じっくり見たわけじゃないので……。あぁ、後、海神わだつみの加護で相殺されてるとか、何とか……?」

「まぁ、概ねその通りだな」


 一瞬見ただけでそれだけの情報量。安定の【神の瞳】さんのハイスペックである。この世の全てを見抜くと言われるその鑑定能力は、伊達ではない。……やっぱり使い手が有利であることを考えると、宝の持ち腐れにしか思えないのだが。

 本来ならばこれはイレイシアのプライベートに関わることだ。だが、中途半端に知ってしまった状態では悠利の挙動が怪しくなる。それならばと、アリーはゆっくりと口を開いた。


「端的に言えば、イレイシアは一族にかけられた呪いを一人で引き受けている」

「……はい?一族にかけられた呪い……?」

「あいつが生まれた頃、集落の人魚達の声が出なくなる現象が起きたそうだ」

「……声、が……」


 人魚は音楽に秀でた種族だ。楽器を奏でるだけでなく、歌も見事。そして、例え歌っていなくとも、彼等の声は一種の楽器のように美しい。歌うように話すという表現があるが、まさにそれを体現しているような種族だ。

 そんな人魚達の声が出なくなるなんて、大変な騒動だったに違いない。人魚について詳しくはない悠利でも、それぐらいは想像が出来た。しかもアリーの口振りでは、一人二人ではなさそうだ。

 これは思っていた以上に重大な話っぽいと理解して、悠利は居住まいを正した。そんな悠利の覚悟を見て、アリーは説明を続ける。


「声が出ないと言っても千差万別でな。まったく喋れない者から、ダミ声のようになる者、喋れはするが歌えない者など、様々だったらしい。だが、共通するのは熱も痛みもないのに声に不調を抱えるという話だ」

「人魚にとっては致命的なやつじゃないですか」

「その通りだ。そしてそれは、集落に住まう人魚達だけに起きた現象じゃなかった」

「……え?」

「一族に、と言っただろう。当時集落の外に出ていた人魚達にも影響が出ていたらしい」

「……ひぇ」


 集落内で起きた現象ならば、何らかの感染症を疑うことが出来ただろう。食生活が同じなので、食べ物の影響と考えることも出来たはずだ。しかし、集落の外に出て生活している者達まで同じ症状を訴えたとなると、話は変わってくる。

 そこで、当時既に族長であったイレイシアの母親(イレイシアの故郷の族長は世襲制ではなく実力で決まる)が、彼等の守護神たる海神わだつみにお伺いを立てた。巫女を通して伝えられた言葉により、それが彼等一族を狙った呪いであることが判明した。

 呪いの主は既に海神わだつみによって裁かれていた。人魚は全て海神わだつみに守護される存在。庇護対象に危害を加えられて放置するほど、神は穏健ではない。海は優しく全てを包み、そして全てを洗い流す苛烈さを宿しているのだから。

 しかし問題は、呪いの主が死んだとて、呪いは消えないということだ。既に実行された呪いは一族全体に降りかかり、程度の差こそあれ声の出ぬ者が増えていく。危害を加えた者を裁くことは神の領分でも、既に広がった呪いに手を出すのは神の領分から反するという状況。イレイシアの一族は、窮地に追い込まれていた。


「え、神様、そこは助けてくれなかったんですか?」

「神には神の規則があるらしい。裁きを下すことは出来ても、起きたことをなかったことには出来ないらしくてな」

「……神様も意外と大変なんですね」

「お前な……。他に言うことはないのか」

「いやだって、律儀に規則に従ってるの凄いなーと……」


 神様ってもっと自由な何かだと思ってました、と悪びれもしない悠利。この辺り、無駄に人間味の溢れる神様に慣れ親しんだ多神教国家で育ったことが影響しているのかもしれない。日本神話以外でも、悠利の感覚では多神教の神様は大体がフリーダムでトラブルメーカーなのである。少なくとも悠利の知っている範囲では。

 とりあえず、海神わだつみは愛し子である人魚達の不遇を憐れんだ。憐れんで、解決策を伝えてくれた。それは、一族全体に広がる呪いを、一人の赤子に集中させることだった。

 本来ならば、そんなことをすればその赤子は声を失うどころではすまなかっただろう。だが、選ばれた赤子、イレイシアには他の追随を許さぬほどの海神わだつみの加護があった。特に強い加護を与えられた赤子。そして、加護とは純粋なる者にほど強く作用するのだという。

 つまりは、生まれて間もない赤子であったイレイシアは、その強い加護を十全に生かすことが出来るという状態だったのだ。呪いに打ち勝てぬまでも、負けぬほどの加護を持った赤子。イレイシアの母は苦渋の決断として、我が子を呪いの受け皿にしたのだ。


「その結果、人魚達に蔓延していた声に不調を来す状態は解消され、イレイシアは史上初の歌の下手な人魚になった」

「…………えーっと、大を生かすために小を殺すようなのは、上に立つ人として仕方ない判断だってのは解るんですけど、ちょっとおかしくないですか?」

「何がだ」

「だって、一族全体に広がってた声を失うほどの呪いですよね?何でイレイス一人に集中させた結果が、音痴になった程度になってるんですか!」


 バランスがおかしい!と悠利は主張した。それはその通りだと思っているのか、アリーもコクリと頷いた。どう考えても今まで聞いていた殺伐とした話と繋がらないのだ。

 何せ、イレイシアの声は綺麗だ。歌も、多少音痴だとしても彼女は歌える。今は、どう頑張っても綺麗なハモりになってしまう状態なので、その歌声の美しさがよく解る。……当人は主旋律を歌っているつもりらしいので、それはそれで不憫なのだが。

 とにかく、声を失っていたり、喋れはするが歌えない人魚が続出していたほどの強力な呪いである。それを一人に集中したならば、普通なら喋れないとか、もっと言えば身体に他の不調だって表れてもおかしくないはずだ。なのにそれが音痴レベルで収まっているなんて、変なのだ。


「だからそこが、守護神自らイレイシアを呪いの器にしろって告げた理由なんだろうよ。それぐらい、あいつに与えられた加護は強力だったってわけだ」

「……もしかして、イレイスって海だったら無敵なんです……?」

「今のところ、呪いを抑え込む方に加護が使われてるから、並の人魚と同じぐらいでしかないと聞いてるがな」

「うわ……。それでも並の人魚さんと同程度の加護はあるんだ……。こわ……」


 神様の本気怖い、と悠利は思った。イレイシア一人にそこまでごっそり加護を与えてくれているなんて、何か裏がなければ良いけどと思ってしまったのだ。そんなことを考えるのはやはり、多神教のトラブルメーカーな神様の話を聞いて育ったからだろうか。そのうち拐かされたりしないよね……?とちょっと心配になった悠利である。

 なお、そんな心配は杞憂である。確かにイレイシアは海神わだつみに特に愛された人魚であるが、それはあくまでも庇護対象を大切に思っている系列の愛だ。単純にそういう星回りで強い加護を授かる人魚はいるので、別に彼女が初めてというわけではない。

 そこでふと、悠利は疑問に思った。そういう事情を、何でイレイシアは知らないのだろう、と。ステータスを確認した限り、彼女は自分が呪いの受け皿であることを知らない。呪いに関して知らないと【神の瞳】さんが明言しているのだから、間違いないだろう。


「じゃあ、イレイスは何で自分が呪いのせいで音痴だって知らないんですか?」

「……このことを知ってるのは、族長であるイレイシアの母親を除けば、ごく一部らしい」

「……え?」


 アリーの言葉に、悠利はぽかんと口を開けた。こんなにも重要なことなのに、自分に関わることなのに、どうして当事者のイレイシアが知らないのか。そう思っていたら、まさかの、そもそもこの話を知っているのが一握りだという事実を伝えられたからだ。

 イレイシアの母親は、一族の不調が呪いによるものだということは、皆に伝えた。呪った犯人は海神わだつみによって裁かれたことも。事実と異なるのは、その裁かれた段階で呪いが消えたと皆には伝えてあることだ。

 理由は、イレイシアの身を案じてのことだった。

 たとえ、守護神自ら呪いの受け皿にしろと言われたとしても、イレイシアが呪われているという事実は変わらない。そして、話がどこでねじ曲がって、彼女が呪われているという事実だけで悪意が向けられるとも限らない。一族のために全てを引き受けているのだという事実は、どこかで忘れられるかもしれない、と。

 さらに、その事実が正しく伝わっていたとして、皆がイレイシアを腫れ物のように扱う可能性もあった。ただの人魚として育つことが出来なくなる。それを危惧したイレイシアの母親は、真実を隠すことを選んだのだ。

 幸いなことに、イレイシアはちょっと音痴なところ以外は普通の人魚。泳ぎも演奏の腕前も並の人魚よりも秀でている。容姿も美しく、性格も心優しい。彼女が音痴であることを「何でだろうね?」と不思議に思いながらも、周囲は練習するイレイシアを応援してくれている。……真実が隠されているから、そうやって普通の生活が送れているのだ。


「何て言うか、お母さんっていうのは色々と考えるものなんですね」

「まぁ、懸念は解る。子供は呪いって言葉だけで間違った判断をするかもしれんし、事情を知っていたら大人達は過度な扱いをする可能性がある。普通に育ってほしいから隠すというのは、まぁ、悪くはなかったんだろう」

「イレイスが前向きなのが救いですね」

「そうだな」


 史上初の音痴な人魚。そんな不名誉なレッテルを貼られていても、イレイシアは真っ直ぐと前を見て、立派な吟遊詩人になるために日夜努力を惜しまない。音痴だから諦めるという考えは、彼女にはないのだ。


「ところで、イレイスがここに預けられたのって、その辺も関係してるんですか?」

「まぁ、ある程度はな。うちならもし万が一何らかの不調が出ても俺が気づけるし、そもそもイレイシアは外の世界に興味を持っていた」

「というか、アリーさんとイレイスのお母さんが知り合いってところが、人脈凄いって思うんですけど」

「昔依頼絡みで交流があっただけだ」

「アリーさん達の行動範囲、えげつなくないですか……?」


 イレイシアの故郷は、ここから随分と離れた海である。さらりと告げられた言葉だが、結構な遠方だ。拠点をどこにしていたかにもよるが、それにしたって行動範囲が広すぎる。

 そんなことを思った悠利に、アリーは淡々と答えた。物凄くあっさりと。


「俺達の足は、基本的にワイバーン便だぞ」

「……え」

「近場は馬車や徒歩で移動するにしても、多少距離があるとなると、ブルックがあっさり友人割引でワイバーン便を使う」

「ブルックさん……」


 がっくりと肩を落とす悠利。ワイバーン便は確かに便利だが、それなりにお値段がする。そこを友人割引で使い倒したと聞いては、脱力するしかないのだ。

 なお、ワイバーン便がどうしても使えないときで急ぎの移動は、ブルックが竜の姿になってアリーとレオポルドの二人を抱えて飛んだりもしているのだが、それについては黙っているアリーだった。聞いたら悠利が煩そうだなと思ったので。間違ってない。


「まぁとりあえず、そんなわけでイレイシアは呪いのことは知らんから、お前も知らんふりをしておけ」

「はーい」

「ただ、体調に影響が出ていないかは、確認してやってくれ」

「了解です」


 悠利が鑑定を使って仲間達の体調管理をしているのは、皆が知っていることだ。だから、定期的に悠利がイレイシアの状態を確認しても、誰も変には思わないだろう。普段から交流がある悠利の方が、アリーよりもイレイシアの状態に気付きやすい。事情を知ったのならばと、いうことなのだろう。

 元気よく返事をした悠利は、そこでハッとしたように表情を改めた。うっかりスルーしていたが、事情を知った今ならばどういう意味なのかが解る。【神の瞳】さんの補足説明の話である。


「あの、アリーさん」

「何だ」

「補足説明が出てたんですけど、イレイスの呪い、徐々に消えてるみたいです」

「…………は?」


 真顔になるアリーに、悠利は説明を重ねた。最初にちらっと見たときは何のことかよく解っていなかった。けれど今ならば、どういう意図で【神の瞳】さんが教えてくれたのかが、解る。


「そもそも、加護で呪いを抑え込んでいたんですよね?抑え込むと同時に加護で呪いを浄化してたみたいで、徐々に弱まってるらしいんです」

「そんな話は聞いてないが……?」

「でもそういうことらしいので。だからほら、イレイス、最近は綺麗にハモりの旋律を歌えるようになってるじゃないですか」

「……あー、アレは、そういうこと、だったのか?」

「っぽいです」


 長い時間、十数年をかけて、イレイシアにかけられていた呪いは、加護によって弱まっていた。その結果、最近になってやっと、目に見えての変化が現れてきているのだ。

 端的に言うと、アジトにやってきたばかりの頃のイレイシアは、もっと音を外していた。今は、確かに主旋律を歌おうとして何故かハモりになってしまうというヘンテコな状態だが、初期に比べれば音は取れているのだ。それはつまり、それだけ回復しているということだ。

 実にめでたいことだった。厄介な呪いからイレイシアが解放される日が近付いているということなのだから。そのときには彼女は、海神わだつみに特に愛された人魚らしく、素晴らしく美しい歌声を披露してくれることだろう。


「もう数年はかかるみたいですけど、逆に言えばもう数年で呪いは綺麗さっぱり消えるみたいです」

「……加護がえぐい」

「……それは僕も思います」


 一族全体に蔓延していた呪いを一人で引き受けたのに、二十年ほどでそれを消し去れるほどの加護。どれだけ強力な加護を与えられているんだと、二人は思った。思ったが、それ以上深くは考えないことにした。色々と怖かったので。




 何はともあれ、伝えることは出来ずとも晴れやかな未来の到来を予感して、悠利とアリーは顔を見合わせて笑うのだった。早くその日が来ると良いですね。




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