食べ応え抜群、オーク肉の野菜ロールカツ

「やっぱりこう、野菜も食べてもらうべきなんだよね」


 真剣な顔で呟く悠利ゆうり。その言葉は、ある意味とても切実であった。何がどう切実かと言えば、お肉大好き食べ盛りの皆さんのお話である。

 《真紅の山猫スカーレット・リンクス》の面々は身体が資本の冒険者。一部の小食組を除けば、魚や野菜よりもお肉が大人気だ。勿論、野菜のおかずも文句を言わずに食べてくれる。食べてはくれるが、明らかに肉の方が食いつきが良いのである。

 バランスを考えると、やはり肉を食べたなら野菜もしっかり食べて貰いたいというのが悠利の本音だ。また、それだけではなく、大食いの皆さんが喜ぶようながっつりお肉のおかずは、小食組の胃には攻撃力が高すぎる。両者を満足させるおかずを作りたいのだが、そこが難しかった。

 肉と野菜が食べられて、ボリュームはあるけれど小食組でも美味しく食べられるおかず。何かないかと記憶の中のレシピを一生懸命探す悠利なのである。しかしなかなか見付からない。


「ユーリ、何唸ってんだ?」

「あ、カミール。夕飯の献立何にしようかなって思ってー」

「それでそこまで悩んでんの珍しいな」


 ひょいっと姿を現したのはカミールだった。食堂スペースで唸っている悠利を見つけて、気になったらしい。ちなみに彼は本日の料理当番である。ただし、作業に入るまではまだ少し時間があるので、別に遅刻してきたわけではない。

 そして、カミールの言葉は正しかった。確かに毎日毎食の献立を考えるのは大変だ。それでも、悠利はあんまり深く考えずに、手元にある食材とか、食べるのが誰かを考えて料理を決めている。こんな風に真剣に悩んでいるのは珍しいケースだ。


「メインディッシュに悩んでるんだよー。お肉にしようとは思ってるんだけど、野菜も食べてほしいし、大食い組が満足するのにすると小食組が胃もたれしちゃうし……」

「あー……。今日は珍しく全方位が満足する感じを目指してんのか」

「だって、今日の夕飯全員集合なんだもん」

「なるほど」


 何で悠利がそこまで悩んでいるのかを理解したカミールだった。全員集合というのなら、せっかくなので全員を満足させたくなったらしい。

 なお、《真紅の山猫スカーレット・リンクス》は初心者冒険者をトレジャーハンターに育成するためのクランなので、仕事や修行で全員が揃わないことなんて普通だった。指導係が特別な依頼を受けて出掛けることもある。常にアジトにいるのは悠利と見習い組ぐらいだろう。

 だから、全員が揃うときには皆が喜ぶご飯を作りたいと悠利は思うのだ。人数が少ないときは、居合わせた面々が喜ぶ料理を作ろうとする。そういう感じに自分で目標を設定しているのだが、今日はハードルが高くなってしまっているのだ。


「肉と野菜なぁ……。具だくさんスープみたいな感じで肉も野菜も入ってるのは美味いけど、アレは別に食事が進むおかずって感じではないしな」

「汁物はメインディッシュにはならないからねぇ……。麺類でも入ってたら別だけど」

「分かる。パスタとかうどんとか入ってると満足感が違う」

「でもそれは僕が考えてるメインディッシュじゃないから、今日は違うんだよぅ……」

「頑張れ」

「うぅ……」


 カミールは料理をそこまで知らないので、これは悠利が考えなければいけないことである。とりあえず手伝えるかと考えて、冷蔵庫の中身を確認してみるが、やっぱり何も思いつかない。


「天ぷらとかなら、肉も野菜も食えると思うけど」

「天ぷらも悪くないんだけどー。うー、何かもうちょっとパンチが欲しいというかー」

「……何で今日に限ってそんなこだわり強くなってんだよ……」


 あんまり悩んでると調理する時間が足りなくなるぞ、とツッコミを入れつつ、とりあえず出来ることやろうと下準備に入るカミール。昼食後に洗った道具を片付けたり、作業しやすいように邪魔なものを片付けたりしている。色々と手慣れていた。

 しばらくうんうん唸っていた悠利だが、ハッと閃いたように顔を上げた。何か思いついたんだな、とカミールは思った。


「ロールカツを作ろう」

「ロールカツ?揚げ物?大丈夫なのか?」

「大丈夫。ロールカツは薄切り肉で野菜を巻いたものをカツにするから、ほぼ野菜!」

「……なるほど?」


 自信満々の悠利に、そういうもんかなととりあえずは納得したカミール。料理の全体図が想像できていないので、反応は緩かった。

 作るものが決まったならば、悠利の動きは素早かった。必要な食材を準備して、さぁ始めようとばかりに満面の笑みである。さっきまで唸っていた人物とは思えない。


「まず、野菜の準備をしたいから、人参とジャガイモの皮を剥いて、インゲン豆は筋取りをします」

「りょーかい」


 野菜の皮むきは慣れたものだし、インゲン豆の筋取りも別に困ることではない。二人で手分けをすればすぐに終わる。

 皮がむけたら、人参とジャガイモは千切りにする。どちらもまずは少し厚みのある状態でスライスし、それを重ねて細く切ることで千切りになる。ただし、千切りとは言っても細かいものではなく、野菜炒めなどで食べて食感が残る程度の太さである。


「あんまり細いと茹でたときに壊れちゃうから、ほどほどで。特にジャガイモ」

「解る。ジャガイモは茹でると何か壊れる」

「壊れるのは火を通しすぎてるからだけどねー」


 あはははと笑いながら二人で食材を切る。ちなみにインゲン豆は筋取りをしたら茹でるだけなので、便利だ。大きさを揃えるのは茹で終えてからで十分である。

 人参とジャガイモが切れたら、インゲン豆も含めてそれぞれ茹でる。沸騰したところに塩を入れたお湯で茹で、壊れない程度を見極めて引き上げる。……特にジャガイモは要注意です。

 茹で上がった野菜はザルに入れて水気を切る。粗熱を取って冷ます間に、肉の準備に取りかかる。段取りは大切である。


「この野菜を肉で巻くんだけど、冷めるまでの間にお肉の方の準備をします」

「肉の準備って?」

「今日使うのはオーク肉の薄切りなんだけど、下味で塩胡椒をします」

「なるほど」


 薄切りのオーク肉は、食べやすいようにお肉屋さんにカットしてもらったものである。焼いて食べるのに丁度良い感じのサイズだ。

 その肉をまな板の上に並べていく。重ならないように並べるので、まな板は複数枚必要だった。そうして丁寧に並べたら、その上へ塩胡椒を振りかける。使うのはシンプルな塩と胡椒である。今日はハーブ系は使わない。


「普通の塩胡椒だけで良いのか?」

「うん。カツにするし、野菜の味も入るからね。もの足りなかったら食べるときに追加してもらう感じで」

「はいよ」


 せっせと並べた肉の上に、悠利が塩、カミールが胡椒を振りかけていく。二人いると手分けできるからちょっと便利だった。なお、あくまでも下味なのでどっさりとかけるようなことはしない。配分は大事だ。


「お肉に塩胡椒が出来たら、野菜を置いて巻いていきます。中身は混ぜないで、一種類だけね」

「オッケー。あ、インゲン豆はどうすんだ?」

「良い感じの長さに折ります」


 こんな感じで、と悠利はポキッとインゲン豆を折った。茹でたことで多少柔らかくなっているが、それでも力を入れれば折ることが出来る。

 ちなみに、茹でる前に折らなかったのは、旨味が逃げるような気がしたからである。先に切っておかないと形が壊れる人参やジャガイモと違って、インゲン豆は後からでも欲しい長さに出来るので。

 適量の野菜を肉の手前の方に置いたら、端から肉で包むようにしてくるくると巻いていく。生肉はぺたりとくっつくので、ぐるりと巻き終えてから押さえればバラバラにはならない。

 念のため、巻き終えた後は最後の部分を下にして置いておく。乾燥して剥がれるのを防ぐためだ。


「こんな感じで、全部包みます」

「解った。……微妙に手間だな。この後、衣も付けるんだろ?」

「……まぁ、手間は手間かな。でも美味しいよ」

「美味いなら良いや


 くるくると肉巻きを作りながら、カミールはあっさりと言い切った。そう、手間がかかるのは確かに面倒くさいが、その先に美味しいご飯が待っているなら頑張れるのだ。それは《真紅の山猫スカーレット・リンクス》の面々の共通認識みたいなものになりつつあった。

 二人がかりでも皆が満足して食べることの出来る量を巻くのはかなり大変だった。それでも、彼らは頑張った。美味しいご飯のために、一手間かけるのは仕方のないことなのだと。

 全て巻き終えれば、次は衣を付ける作業。こちらはカミールも慣れていて、小麦粉を付けるときも、余分な粉を落とす手付きは安定していた。ちなみに悠利は、左手で卵液、右手でパン粉を担当している。二人しかいないのでこういう配置なのである。

 そうして衣を付けたら、後は揚げるだけだ。まずは、味見用の実食である。ちなみに、何を巻いたか解るように、衣を付けた後は別々の皿に並べてある。


「さてカミール、味見に一つ揚げるけど、どれが良い?」

「んー、人参」

「オッケー」


 どれも美味しそうではあったが、とりあえずはリクエストは人参に決まった。適温になった油にそろりと入れると、バチバチと音がなる。

 最初の頃は揚げ物にビクビクしていた見習い組も、今では何だかんだで慣れている。今も、音を立てるロールカツを見つめるカミールの表情は落ち着いていた。

 しばらくして、ロールカツの周りに出る泡が細かくなる。それと同時に、音も小さく、軽やかなものへと変わる。良い感じに火が通ったタイミングだと、悠利は人参のロールカツを引き上げる。

 こんがりキツネ色に揚がったロールカツ。ころりとした見た目は、小ぶりに作ったコロッケのようでもある。パン粉の衣に隠れて人参の色味はうっすらとしか見えない。

 油を切ったロールカツをまな板の上に置き、包丁で半分に切る。ザクっという小気味良い音が鳴った。包丁で切られた断面は、火の通った優しい色合いのオーク肉と、鮮やかなオレンジが眩しい人参という綺麗なものだった。


「おぉ、確かにほぼ野菜。でも色が綺麗だな」

「とりあえず味見してみて、薄かったらソースとかかける感じの方向で」

「解った」


 いただきますと二人仲良く挨拶をして、悠利とカミールは熱々ホカホカのロールカツを口へと運ぶ。

 サクリとしたパン粉の食感が最初。続いて、薄切りを巻いて重ねたことでジューシーさが増した肉の旨味。最後に、一度茹でてあるからこその柔らかさと甘みを宿した人参が自己主張する。

 味付けは下味に塩胡椒をしただけなので、少し薄いかもしれない。濃い味を好む面々は、ここにソースをかけて食べる方が好みだろう。しかし逆に、ほどよく野菜の甘みを感じられる味付けなので、小食組にはこのままで喜ばれそうだった。良い感じの仕上がりである。

 確かにほぼほぼ野菜なのだが、カツになっているので満足感がある。カリッと揚がった表面の食感も、旨味をギュギュッと濃縮した肉の味わいも、優しく包み込むような人参の仄かな甘さも、何とも言えず絶妙のバランスだった。


「んー、良い感じ。僕はこのままで良いかな。カミールは?」

「このままでも美味いけど、俺はソースとかかけたいかも」

「満足感はどう?」

「ほぼ野菜なのにめっちゃ肉って感じがする。何でか解らないけど」

「揚げてるからかな?」

「かなぁ?」


 二人で顔を見合わせて笑う。何はともあれ、これが美味しいということは判明した。ならば彼らがやることはただ一つ。……皆の分のロールカツを揚げることである。

 勿論、カツを作りながら他のおかずもちゃんと作る必要がある。揚げ物をしながら他の料理の準備に取りかかる二人なのでした。




 そんなこんなで、夕飯の時間。勢揃いした《真紅の山猫スカーレット・リンクス》の面々は、それぞれのテーブルに大皿どーんと盛られた揚げ物に興味津々だった。

 というのも、何故か綺麗に大皿の中で区分けがされているからである。それは勿論、中身が違うロールカツを解りやすいように配置したからに他ならない。


「これはオーク肉で野菜を巻いたロールカツになります。一応下味は付いてますが、薄いと感じたら各自お好みで調味料をかけて食べてください」


 悠利のざっくりした説明に、皆はこくりと頷いた。こういうパターンはよくある。味の好みは千差万別なので、最後に手元で調整できるパターンにしておくのは、割とよくあることなのだ。何せ、年齢も種族もバラバラな仲間達なので。

 ロールカツの中の具材が何か解るように、区分けされた部分にはそれぞれの元の具材が置いてあった。これは、後から別で茹でたもので、人参とジャガイモは輪切り、インゲン豆は特に折りもせずにそのままである。

 どうするのが解りやすいだろうかと考えた結果の、中身の野菜を置いておけば良いのでは?というのに落ち着いたのだ。何せ、テーブルが複数に分かれているので、各々で判断して貰えるようにしておく必要があったのだ。

 最初にその説明をしておけば、後はお皿を見て自分達で確認して貰える。ヘタに色を変えるとかの凝った方法にするよりも、単純明快で解りやすいのだ。

 いただきますという元気な挨拶と共に、各テーブルで食事が開始される。カミールがいる見習い組のテーブルは、作った本人がいるのでどんな感じなのかの説明も交えながら盛り上がっていた。

 主に、カミールが如何に手間がかかったかを主張している。そもそも揚げ物というだけで準備が大変なのを解っている見習い組の面々は、カミールの発言に異論を挟まない。野菜を茹でて、肉で巻いてからカツにするなんて、どう考えても手間である。

 しかし、その手間をかけた甲斐あってとても美味しいのだと、カミールは胸を張る。試食で食べて人参だけで美味しいのは確信していた。後は、試食で食べていない分を食べるだけだ。


「お肉が薄いから、噛み切りやすいですね」


 そんな言葉を発したのは、ティファーナだった。指導係のお姉様、食欲はそこまで旺盛ではなく、年齢や外見通りの普通の食欲というところだろうか。身体が資本の冒険者なので、食べることの大切さは理解している。

 彼女が食べていたのは、インゲン豆のロールカツだった。言葉の通り、一口囓った跡がある。ロールカツの見た目は分厚いが、その大半は茹でた野菜。肉も薄切りなので、重なっていたとしても簡単に噛みきれるのだ。

 おかげで、一口が小さい面々も苦労せずに食べることが出来る。囓った瞬間に口の中に広がるインゲン豆の水分に、ティファーナは満足そうに微笑んでいる。豆は結構侮れない旨味の持ち主である。

 サクサクとした衣の食感も、しっとりジューシーに仕上がっている肉も、インゲン豆の柔らかくありながら存在感を感じさせる味わいも、何もかもが調和して口の中を楽しませてくれる。下味の塩胡椒だけでも、彼女にとっては満足できる味わいだった。

 そんなティファーナと対照的に、ソースをかけたロールカツを一口でばくりと食べているのはリヒトだった。巻きやすい大きさで悠利達が作ったロールカツは、成人男性ならば一口で食べられなくもないサイズだった。

 口の中で豪快に噛んでも、決して不快にはならない。全体的に柔らかいので、簡単に噛むことが出来るのだ。そして、口の中に全てを入れているからこそ、じゅわりと滲む旨味が混ざって美味しさを強調してくる。

 肉の旨味、揚げられたパン粉の香ばしさ、ジャガイモの甘み。それらを更にワンランク引き立てる、ソースの味わい。濃厚な旨味が口の中で広がり、自然と端が大皿へと伸びる。


「比率でいったら野菜の方が多いんだろうが、カツになってるからか肉を食べている感じがするな」

「そうですね。薄切りのお肉ですし、断面を見るとほぼ野菜ですけれど、食べ応えがあります」

「美味しいな」

「美味しいですね」


 顔を見合わせて笑い合うリヒトとティファーナ。実に穏やかに食事をしている大人二人だった。ちなみに同テーブルではロイリスとミルレインの職人コンビが、今日の勉強について会話をしながら食事を楽しんでいた。平和である

 そう、このテーブルは平和だった。いや、大多数のテーブルは平和である。一応、沢山食べる人とちょっとしか食べない人を一緒にするとかで、悠利が配置を考えているからだ。

 しかし、そうやって考えられた配置にしても騒々しいテーブルは、ある。年齢が近く食欲旺盛な少年ばかりを詰め込んだ見習い組のテーブルも賑やかだが、彼らは何だかんだでお互いの食事量を把握しているのでそれなりにバランスを取っている。

 では、騒々しいテーブルというのはどこかと言えば、実に解りやすい。お肉大好きだが、基本的に何でも美味しくもりもり食べるどこぞの大食い娘がいるテーブルである。


「レレイー!お前はちょっとは遠慮しろぉおおお!!」

「してるよ!?何でクーレはすぐに怒るの!?」

「その山盛りの小皿を見て、何で怒らないと思った!」


 クーレッシュが怒鳴りながら指差したのは、ロールカツがてんこ盛りになったレレイの小皿であった。大皿から取り分けて食べるとはいえ、ちょっとこれはやり過ぎである。普通に小山が出来ている。

 その通りだと言いたげにヘルミーネが二人の正面で真顔で頷く。イレイシアは困ったような顔をして微笑んでいるが、レレイの援護には入らなかった。彼女の目にも、ちょっと盛りすぎに見えたからである。

 しかし、そんな仲間達にレレイはこう主張した。全力で。


「だって、すぐに食べられないんだもん!熱々の揚げ物だよ!?冷めるの待ってる間に、皆が食べちゃうじゃん!」

「確かにお前は猫舌で、俺等より食べ始めが遅くなるだろうことは認めてやる」

「だったら」

「だからって限度があるんだよ!このテーブル、お前以外はそんなにアホみたいに食わねぇの、解ってんだろうが!」

「だって、皆が食べたら減っちゃうもん……!」


 こんなに美味しそうなのに……!と訴えるレレイ。小山になったロールカツの入った小皿を、大事そうに抱え込んでいる。サクサクと音をさせてロールカツを食べるヘルミーネは、ジト目でそんなレレイを見ていた。クーレッシュの意見に全面的に同意なのである。

 大食い娘のレレイは、目の前でどんどんロールカツが減っていくのが切なくてたまらなかったのだろう。だから、とりあえず納得できる程度に小皿に盛り付けたのだ。ちなみに、これでも一応皆が食べる分も必要だよねと自重している。一応。


「……ったく。とりあえず、それ全部食べるまではお代わりすんなよ。俺等だって食べたいんだから」

「うん」

「途中でお代わり取ろうとしたら妨害するからね」

「ヘルミーネヒドくない!?」

「ヒドくないわよ!私達だって食べたいの!」

「うー」


 ぷぅと頬を膨らませるレレイ。譲らないヘルミーネ。呆れたように溜息をつくクーレッシュ。困ったように微笑んだままのイレイシア。年齢の近い訓練生組は、今日もとても賑やかだった。頑張れ、クーレッシュ。

 そんな騒々しいテーブルを横目に、悠利はロールカツを囓る。ソースも醤油も悠利は必要ないと思って食べている。肉と野菜の良いところが混じり合って、口の中が実に楽しい。

 お肉大好きな大食い組も、こってりした味付けは苦手な小食組も、皆が美味しそうに食べてくれる姿が目に入る。揚げ物なのでカロリーはそこそこあるだろうが、ほぼ野菜なので栄養バランスも悪くないだろうと思うのだ。

 肉を食べている満足感を感じながら、野菜もちゃんと食べられる。確かに作るのに手間はかかったが、良い感じの仕上がりに大満足の悠利なのでした。




 大量に作った三種類のオーク肉の野菜ロールカツは、クランメンバー全員に「とても美味しい」という太鼓判を貰うのでした。頑張った甲斐がありました。


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