酸味が美味しいチキンの梅味噌照り焼き
「何かさ、いつもと違う味付けを食べてみたい気分なんだよ」
「まぁ、言いたいことは解るよね。たまにはちょっと冒険してみたい」
「いや、冒険はいらねぇんだけど」
うんうんと頷きながら
何故こんな風に訴えるのかと言えば、悠利の思考回路がウルグスには理解出来ないからだ。もっと有り体に言えば、時々ぶっ飛ぶのを知っているからだ。何だかんだで常識人のウルグスくんは、天然マイペースの悠利のぶっ飛び具合にはついて行けないのである。
勿論、悠利が作る料理が美味しいのは解っている。変な料理を出してくるわけがないという信頼もある。それでも予防線を張ってしまうのは、日常的にうっかりやらかす悠利を見ているからだろうか。
しかし、悠利にはウルグスが何をそんなに必死になっているのかがさっぱり解らない。だって当人はいつだって普通に生きているつもりなのだから。自分が多少天然であろうという自覚はあっても、周囲の度肝を抜くレベルでぶっ飛んだマイペースだとは思っていなかった。世の中はそんなものである。往々にして自分のことは自分が一番解っていない。
「とりあえず、ウイングコッコのモモ肉だから、それに合わせた味付けにしようとは思ってるんだけど」
「けど、塩胡椒とか照り焼きは定番になってるだろ」
「定番、美味しくて良いと思うけど」
「美味いけど、今日は何か、違う味付けないかなぁって思うんだよ」
「まぁ、そういう日もあるよねぇ」
ウルグスの言い分を、とりあえず悠利は聞き入れた。気持ちは解らなくもない。ちなみにウイングコッコは空飛ぶ大きな鶏なので、その肉は普通に鶏肉と同じように使える。悠利にとっては味のイメージがしやすいので使いやすいお肉の一つだ。
普段はバイパーやビッグフロッグの肉をメインに使っているのだが、ちょいちょい仲間達がウイングコッコを狩ってくることが増えた。というか、肉も持って帰ってくれば悠利が美味しく料理してくれるじゃないか、ということに思い至ったらしい。
なお、野菜やキノコ、果物に関してはもう随分と前からお土産の定番になっている、悠利としては食費が浮くので大変助かっている。《
「違う味っていうけど、具体的にどういうのが食べたいとかある?」
「あ?」
「こってり系とか、あっさり系とか、何かそういうやつ。あるならそこから考えるけど」
「んー、改めて言われると悩むな……」
「そこで悩まれても僕も困るんだけど……」
せめて方向性だけでも決めてほしい、と悠利は訴える。味付けのバリエーションは悠利の頭の中に幾つかあるが、ウルグスが求めているのがどういう味付けなのかによって選択肢が決まるのだ。ちゃんと考えてほしいやつである。
言われたウルグスは、真剣な顔をして考え込んでいる。真面目な顔だった。悠利に言われて、改めて自分がどういう味付けの肉が食べたいのかを考えている。
しばらく考えて、ウルグスは口を開いた。
「モモ肉は脂があるし、さっぱり系で」
「ウルグスにしては珍しいね」
「そりゃ、俺はこってり系の方が好きだけど、脂のある肉はさっぱり系の方が食べやすいんだろ?」
「……まぁ、胃もたれはそっちの方がしないよね」
「だったら、そっちで」
「うん」
自分がいつもと違う味で食べたいと言ったくせに、判断基準は他の仲間達のことを考えている。ウルグス自身はこってり系でもさっぱり系でも美味しく食べられるからというのもあるのだろう。それでも、そんな風に考えるウルグスに、悠利は素直な感想を告げた。
「ウルグスは優しいねぇ」
「……何だよ、いきなり」
「誰かのことを考えて選べるのって、とっても優しいことだと思うよ」
「や、止めろよ……。何かこう、背中がむずむずする」
「あははは」
そういう風に褒められるのは慣れていないのか、ウルグスは顔を真っ赤にして身を捩る。ぶんぶんと顔を左右に振る姿は、何とも言えず微笑ましい。思春期の少年は照れ屋さんなのである。
当人が照れているのでこれ以上は言わない方が良いだろうと判断して、悠利はその話題にはそれ以上触れなかった。ただ、どんな味付けがあるかなぁと考える。
小食組でも美味しく食べられるようなさっぱりした味付け。肉はウイングコッコのモモ肉。そして、出来るならばウルグスの口にも合うように仕上げたい。そんな良い感じのが内だろうかと記憶を探る。
しばらくして、良いのが見付かったと言わんばかりに悠利は笑顔になった。
「梅味噌の照り焼きにしよう」
「梅味噌の照り焼き……?」
「いつもの照り焼きのタレに叩いた梅と味噌を混ぜたタレを作るの。これなら味は濃いけどさっぱりしてるから、きっとウルグスも気に入ると思うよ」
「お、おう……?」
悠利が何を燃えているのかウルグスにはよく解らなかった。悠利はただ、ウルグスの言うさっぱり系の条件と、大食いメンツが喜ぶ濃い味付けの合わせ技が出来ないかと考えて思いついたのだ。
というのも、照り焼きは皆に愛されている味付けなのだ。照り焼きサンドか照り焼き丼かで大揉めするぐらいには、皆が大好きな味である。確かにこってり系ではあるのだが、小食組にも好評な味付けであった。甘辛いは強かった。
なので、その照り焼きのアレンジである梅味噌照り焼きバージョンならば、皆が喜んでくれるに違いないと悠利は思った。梅味噌を加えることでまろやかさと酸味によるさっぱり感が追加されるので、どちらの要望にも応えられると思ったのだ。
「とりあえず、梅干しを使うってことだよな」
「うん」
「それならさっぱりして、皆も食べやすいか」
「照り焼きがベースだからしっかりした味付けになるよ」
「んじゃ、それで」
「はーい」
いつもの照り焼きチキンとどう違うのかはまだ実感が湧かないのだろうが、ウルグスは悠利の提案を受け入れた。この辺は悠利への信頼の成せる技だろう。美味しいご飯は強かった。
「それじゃ、まずはタレを作るために梅干しを叩こう」
「おー」
「地味に大変なんだよねぇ……」
「……まぁ、梅シソカツのときよりはマシだろ?」
「アレに比べればマシ」
「なら大丈夫だ」
悠利の答えにウルグスは力強く答えた。梅シソカツを作るときには、具材として挟むために大量の梅干しを叩かなければならなかったのだ。それに比べれば、タレに使う梅干しを叩くのはそれほど大変ではない。確かに真理だった。
「それじゃあ、梅干しを叩くのはお願いして良い?僕は肉の準備をするから」
「おう、任せろ」
仕事を分担して、二人は準備に取りかかる。ウルグスは梅干しを幾つか取り出してまな板の上に載せ、種を外してから実を叩いている。みじん切りにするように何度も何度も細かく叩くことで、タレと混ざるようにするのだ。
そして悠利は、肉の準備に取りかかっていた。肉の準備と言っても、それほど大変ではない。ウイングコッコのモモ肉は、解体するときに使いやすい大きさに切り分けてくれているのだ。スーパーで売っているモモ肉一枚みたいな感じになっている。
なので、特に問題がなければそのまま焼くことが可能だ。ただし、均等に火が通るようにするには高さは揃っている方が良く、厚みのある部分を切り開く作業が必要だった。厚みのある部分を切り取るのではなく、包丁を入れてぺらりと開くようにする。そうすると、ぺたんとフライパンに載せることが出来る。
せっせと二人で作業をして、育ち盛りの皆を満足させられるだろう分量の肉を悠利が切り終わった頃には、ウルグスも必要量だろうと言われた分の梅干しをきちんと叩き終わっていた。頑張った証拠にまな板が梅干し色に染まっている。これは後ほど、ルークスが綺麗にしてくれるだろう。
「梅干しが叩けたら、タレを作ります」
「おう」
「叩いた梅干し、味噌、みりん、醤油を混ぜ合わせるだけです」
「そんだけか?」
「甘さが欲しかったら砂糖や蜂蜜を入れると良いよ」
「なるほど」
ボウルに材料を全て入れて、みりんと醤油の水分で味噌と梅干しを溶かすようにして混ぜる。いつもの照り焼きと何がどう違うのかと、ウルグスは興味津々だった。
全体が混ざったらタレの準備は完了だ。後は肉を焼いて、タレを絡めるだけである。
「それじゃ、お肉を焼いていきます。油は少しで、皮目を下にして焼き色を付けます」
「皮が焼けたらひっくり返すんだよな」
「そうそう」
焦げないように中火で皮の方から肉を焼いていく。ジュージューという肉の焼ける音と、焼かれた皮から滲み出る脂と、ふわりと鼻腔をくすぐる香ばしい匂いが何とも言えない。肉の焼ける匂いというのは、とても食欲をそそるのだ。
それはともかく、均等に開いた甲斐あって、全体に同じくらいのタイミングで火が通る。肉の半分ほどに火が入った頃合いになると皮目も焼けてきているので、ひっくり返す。綺麗なきつね色になっている。
「もう半分も焼いて肉に火が通ったら、タレを絡めてちょっと煮詰めます」
「焦げたりしないのか?」
「煮詰めるときは火をちょっと弱めるから大丈夫」
「なるほど」
しばらく焼いてしっかり中まで火が通ったら、火を弱めてタレをかける。いつもの照り焼き用のタレと違って梅味噌が追加されているので、ちょっとドロッとしている。全体に満遍なくかけたら、肉に絡めるようにして火を入れる。
味噌や醤油の焼ける香ばしい匂いが、ぶわりと広がった。肉の匂いとあいまって、何とも言えずお腹を刺激する。思わず腹の虫がくぅと鳴いてしまいそうなほどだ。
「……腹が減る」
「焼けるまで待って」
「おう」
「お肉はひっくり返しつつ、全体にちゃんとタレが絡むようにしてね」
「解った」
こんがりきつね色に染まっていた皮も、タレが絡んで茶色くなっている。叩いた梅干しは味噌と醤油の色に染まっており、焼かれたことで更に色は飛んでいるようだ。赤っぽい色はあまり見えない。
けれども、時折ふわりと香るのは間違いなく梅の匂いで、存在を主張している。何度も肉をひっくり返してタレを絡めて煮詰めたら、いよいよ完成だ。
「はい、出来上がり。味見しようね」
「待ってました!」
フライパンから取り出した肉はまな板の上に載せ、食べやすい大きさに切ってから盛りつける。なので、とりあえずちゃんと焼けているかどうかを確認するために、真ん中をズバッと切る。
火の通りが同じになるように開いた甲斐あってか、しっかりと火は通っている。端っこの方を食べやすい大きさに切ると、悠利は小皿に肉を載せた。載せて、フライパンに残っているタレをスプーンで掬ってかける。
「絡めてあるだけじゃ足りないかもしれないから、タレと一緒に食べてね」
「解った」
「熱いから火傷に気を付けてね」
食べやすい大きさに切られたウイングコッコの肉を、ウルグスはふーと息を吹きかけて冷ましてから口へと運ぶ。タレも一緒に口に入れれば、ぶわりと広がるのは梅の酸味と味噌の風味だった。
いつもの照り焼きと似た甘辛い味も、確かにそこにある。けれど、味噌によってまろやかさを、梅によって爽やかな酸味を追加されたそれは、いつもの照り焼き肉とはまったく別ものだった。似て非なる何かである。
梅の酸味は程良く、モモ肉の濃厚な脂を良い感じに中和してくれる。後味すっきりというか、口の中に無駄に残ることがない。醤油とみりんの照り焼きとしての味はあるのに、全体的にさっぱりとしていながらマイルドだった。
そして、ウイングコッコの肉が持つ旨味もまた、良い仕事をしている。パリッと焼かれた皮の食感と、じゅわりと肉汁が溢れる柔らかな肉の食感が何とも言えない。どちらか一つではなく、両方あるからこその絶妙な味わいである。
「ウルグス、お味はどう?」
「美味い」
「それは良かった」
「後、ライスがめっちゃ進みそう」
「……お代わり対策にライスも余裕を持って準備するね」
「その方が良いと思う」
また一つ、ご飯が進むおかずを作ってしまった。そんな気持ちになりつつ、ウルグスがそう言うなら皆にも美味しいと言ってもらえるだろうなと思う悠利だった。
そして、夕飯の時間。ウルグスの言葉は正鵠を射ていた。ご飯が、凄まじいスピードで消費されている。
「お肉もライスもお代わりありますけど、他のおかずもちゃんと食べてからにしてくださいねー」
まるで寮母さんか母親みたいなことを言う悠利。仲間達は聞いているという証明のように手を上げたり、はーいと元気よく返事をしてくれている。しかし、ご飯も肉も減るスピードに衰えはなかった。
結果を言えば、悠利の読みは当たっていた。照り焼きをベースに梅味噌を加えたウイングコッコのモモ肉は、大盛況である。照り焼きっぽい味付けということで肉食や大食い、濃い味が好きなメンツには大好評。梅が加わったことで酸味でさっぱりして食べやすいと、小食組にも大好評。梅味噌照り焼きは大成功だった。
「梅干しの酸味で脂がさっぱりして、食べやすいですねぇ」
「お口にあって良かったです」
「味が丸い感じがするのは、味噌のおかげですか?」
「多分そうだと思います」
にこにこと笑いながら梅味噌照り焼きを食べているのは、ジェイクである。普段はあんまりお肉に興味を示さない学者先生であるが、梅味は大好きなのでお気に召したらしい。梅干しも普通に食べるタイプなので、口に合ったらしい。
ジェイクは小食なのでご飯はお代わりしていないが、それでもいつもよりは肉に伸びる箸がある。じゅわりと口の中に広がる肉の旨味と、存在感がありながらさっぱりした梅味噌照り焼きのタレにご満悦だ。実に幸せそうである。
そして今一人、特に顔にも言葉にも出していないが、梅味噌照り焼きを満足そうに食べている存在がいた。アリーだ。
梅農家の息子であるアリーにとって、梅干しは馴染み深い食材だ。というか、気付いたらそこにある、ない方が違和感を抱くようなものと言っても過言ではない。アジトにある梅干しは全て、アリーの実家から送られてくるものである。彼にとっては馴染んだ懐かしい味だ。
悠利が来てからこちら、ちょこちょこと梅味の料理が増えている。梅干しをそのまま食べるのは酸っぱいから無理だと言う面々も、梅干しを調味料として活用した梅味の料理は美味しく食べている。
苦手だと言っていた者達でさえも美味しく食べているのだ。元々梅干しが好きなアリーやジェイクが、喜ばないわけがなかった。そんなわけで、何だかんだでアリーの箸も進んでおり、しれっとご飯はお代わりされていた。
照り焼きは元々も照り焼き丼が皆に喜ばれる程度にはご飯に合う。その上今日は梅干しが入っているので、更にご飯との相性がアップしているのだろう。ご飯と一緒に口に運んでは、肉の旨味で白米が美味い!みたいな状態になっている者多数である。
「ユーリ」
「はい、何ですか?」
「美味いが、何でまた今日はこの味付けなんだ?」
梅味は皆に受け入れられているし、梅味噌照り焼きはとても美味しい。それは理解した上で、アリーは何故と問いかけている。悠利は意味がよく解らずに首を傾げた。
その悠利の疑問に答えるように、アリーは言葉を続けた。
「料理当番はウルグスだろう?あいつは濃い味付けが好きじゃなかったか?」
言われて、悠利は何でそんな質問をされたのかを理解した。料理当番の特権は味見であるが、何だかんだと悠利と一緒に献立を考えるので、料理当番の好きな感じの味付けになることが多いのだ。勿論、そうではないこともあるが。
「いつもと違う味が食べたいけど、小食組でも食べられるようなさっぱり系にしようって話になったんです」
「……ほぉ」
「食べる人のことを考えたんだと思いますよ」
「そうか」
悠利の説明を聞いて、アリーは口元を綻ばせた。食べ盛りで食欲旺盛なウルグスが、自分以外の誰かのことを考えて味付けを選択したことを喜んでいるようだった。そういった、日常生活でふと表れる気遣いというのは、とても大きな成長だ。当人が意識していない部分だからこそ。
ここに所属しているのは、トレジャーハンターを目指す冒険者達である。よほどでない限り彼等は、パーティーを組んで行動する。そして、そうでなくとも依頼主やギルド職員との関係が必要になる。さりげなく他人を思いやれるようになるのは、とても良いことだった。
そんな風にアリーに成長を感心されているなんて知りもしないウルグスは、他の見習い組と一緒に大皿の上の肉を取り合っていた。気心知れた見習い組同士の間に、遠慮は無用である。食事は常に弱肉強食だ。
「ウルグス、大きいやつばっかり取るのズルい!」
「別にたまたまだろ!」
「そういうヤックは、タレが沢山載ってるところばっかり取ってる!」
「そ、そんなことないよ!」
ぎゃーぎゃーと賑やかに騒いでいるのは、ヤックとウルグスとカミール。まぁ、騒いでいるとは言っても、他のテーブルの邪魔になるほどではない。いつものやりとりだ。
騒々しい三人が互いに牽制しながら大皿の上の肉を取り合っているという光景。では、今一人の同席者であるマグはと言えば、静かに、黙々と食事をしていた。とても静かに。
……そう、気配すら感じさせないほどに、三人の意識から自分の存在が消えているのを理解しているような、静かな食事風景である。そして、その静かな状態で、騒いでいる三人の視線が自分に向いていないのを確認した状態で、素早く小振りな肉を取っていた。気付かれないように。
「……美味」
肉の旨味と梅味噌照り焼きの味付けを堪能し、マグは一人ご満悦だった。口が小さいので小振りな肉を囓って食べている。そして、すかさずご飯を口の中に放り込む。肉汁とタレを吸い込んだご飯が実に素晴らしいハーモニーを奏でていた。
……特筆すべきは、一口は小さい割に咀嚼が早いのか、何だかんだでマグの手が大皿に伸びるペースが速いことである。静かに、黙々と、それでもきっちり肉は確保して食べていた。多分彼が一番強者である。
その光景を見ていた悠利は、思わずうわぁと呟いてしまった。騒いでいる三人が気付いていないだけで、多分、マグが一番食べている。喋るために口を動かしている三人に対して、マグはひたすら食べるためだけに口を動かしているからだ。
「どうした、ユーリ」
「いえ、マグが一番油断出来ないのかなぁって思って」
「あ?」
「アレです」
悠利に促されたアリーは見習い組のテーブルの光景を見て、納得したように「あぁ」と呟いた。騒々しい三人は叱るほどではないのでお怒りはなかった。ただ、皆の隙を突くように上手に肉を手に入れているマグの姿に、呆れたような感心したような顔をするだけだ。
三人がマグに気付いていないのも、マグは元々口数が少ないからだ。出汁関係以外のときはそこまで暴走しないので、余計にだろう。
しかし、暴走しないだけで、何だかんだで気に入ったらもりもり食べる性質ではある。喋るよりも確実に手に入れる方が吉とでも思っていそうだ。そういう意味での、生存本能みたいな方向性での抜け目のなさは、マグがダントツかもしれない。
「まぁ、極端に誰かが食べてないとかじゃなさそうだから、放っておけ」
「そうですね」
余計な口を挟むのも面倒くさかったのか、アリーは放任することに決めたらしい。悠利もそれに右へ倣えだ。自分のご飯が大事だったので。
ぎゃいぎゃい騒ぐ見習い組の声をBGMに、お肉美味しいなーと暢気に食事を続ける悠利なのでした。
なお、梅味噌じゃなくて梅の照り焼きも出来るのではないか?という意見が出て、次は梅干し入りのシンプルな照り焼きで作ることが決定しました。割と良くあることです。
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