なめろうを焼いたさんが焼き

「うーん、どうしようかなぁ……」


 目の前の新鮮な魚を見ながら、悠利ゆうりは真剣に考え込んでいた。こちら、お刺身で食べられるぐらいに鮮度の良いお魚である。そうなれば、やはり生で楽しみたいと思ってしまうのが日本人。

 しかし、この世界では生魚を食べる習慣はほぼほぼない。港町などの地域では食されているが、王都ドラヘルンのような内陸ではあまり好まれていない。そのため、《真紅の山猫スカーレット・リンクス》の面々もそこまでお刺身に興味は示さない。

 例外的にお刺身に食いつくのは、人魚のイレイシアと異邦人のヤクモの二人だろうか。

 海で育った人魚のイレイシアにとってお魚は馴染んだ食材であり、新鮮なものを生でいただくのは普通だった。火を通したものも好きだが、一番食べていたのはお刺身状態のものであったらしく、海鮮丼などを用意するととても喜んでくれる。

 また、遠い遠い、あまりにも遠くてこの辺りの人々は国の名前すら知らないような場所からやってきているヤクモはというと、食生活が和食に似ている地域の出身だった。そのため、お醤油で美味しくいただくお刺身は彼にも馴染み深い料理になる。遠い異国で馴染んだ料理が食べられるのは嬉しいことであり、お刺身を出すと喜ばれる。

 そして勿論、悠利もだ。煮たり焼いたりしても美味しいお魚だが、刺身で食べられるなら刺身で食べたい。日本人でも生魚が苦手な人はいるかもしれないが、悠利は好んで食べる方だった。

 しばし考える。自分は生で食べたい。しかし大多数には火を通した方が良い。その二つを両立できる料理はないだろうか、と。

 また、どうせならこの暑い夏を乗り切れるような何かにしたい。スタミナ食とまではいかないが、栄養をきちんと摂れるようなおかずはないものか。栄養学などは知らない悠利だが、とりあえず記憶の中のレシピを探って、そして、答えを見つけた。


「そうだ、さんが焼きにしよう!」


 名案だと言いたげに悠利は声を上げた。名前を思い出すまでちょっと時間がかかったが、これなら良い感じに出来ると思ったのだ。

 そんな悠利の耳に、声が飛び込んできた。


「さんが焼きって何だ?」

「あ、カミールお疲れ様」

「おー、お疲れー。今日のメニュー決まったんだ?」

「うん、さんが焼きっていう、……えーっと、魚のハンバーグ的な……?」

「……は?」


 何だそれ、と思わずツッコミを口にしたカミールに罪はあるまい。悠利もちょっと上手に説明が出来なかったなと反省はした。


「あのね、なめろうっていう、生魚に薬味と調味料を入れて一緒に叩いた料理があるんだ」

「生魚」

「で、そのなめろうをハンバーグみたいに形を作って焼いたのを、さんが焼きって言うの」

「……なるほど?」


 ざっくりとした悠利の説明に、一応カミールは納得した。ただ、そもそものなめろうがどんな料理であるのかが全然解らないので、疑問が残ってしまうのはご愛敬だ。

 悠利も、食べたこともない料理の味を想像しろと言わない。なので、とりあえずさっさと作ってしまおうと思った。


「今日はこの、鮮度抜群のカツオが手に入ったので、カツオでなめろうを作って、それを焼いてさんが焼きにします」

「その心は」

「僕とかイレイスとかヤクモさんはなめろうも食べられて一石二鳥!」

「お前なぁ……」


 これ以上ないほどに完璧な理由!みたいなノリの悠利に、カミールは呆れた。呆れたが、彼だって食べたいものを作るときは似たようなテンションなので、それ以上は何も言わなかった。自分達が生魚を食べるわけではないと解ったので。

 なめろうは、どちらかというとアジやサバなどの青魚で作るものが知られている。しかし、マグロやカツオで作る場合もあるので、お好みの魚で作って良いのだ。悠利としては、癖のある青魚よりもカツオの方が皆が食べやすいのではと思っている。

 なめろうの材料は簡単だ。まず、生で食べられる魚に、薬味に、調味料に味噌。薬味は、生姜やミョウガ、青ジソなどになる。とりあえず、臭み消しの役目もある生姜と味噌がアレばそれっぽく仕上がるだろう。

 今日は全部揃っているので、悠利はうきうきと三種類の薬味と味噌を準備する。魚はカツオで、しかも切り身状態。骨もきっちり抜いてあるので、お刺身で今すぐ食べられるやつである。


「なめろうの作り方は簡単で、材料を全部一緒に叩くだけです」

「めっちゃざっくり言った」

「さんが焼きは、そのなめろうをハンバーグみたいにしてフライパンで焼くだけです」

「つまり、肉をミンチにするように、魚をミンチにするんだな……?」

「そう。そこに薬味と調味料も混ぜる」


 簡単でしょ!と笑顔で言う悠利に、そうだなとカミールは同意した。確かに作業は簡単だ。作業は。

 簡単だけど面倒くさい作業というのは存在する。包丁で叩くのはその、簡単だけどちょっと面倒くさい作業だ。主に、求められるのがどのレベルまで叩くのかによって。後、分量によって。


「なのでとりあえず、生姜とミョウガと青ジソをみじん切りにします」

「りょーかい」


 人数が多いので必要とする薬味の量も多い。二人は手分けして薬味のみじん切りに取りかかった。

 生姜は皮を剥き、まずスライスする。それを千切りにして、まとめて刻めばみじん切りになる。スライスの厚みでみじん切りの大きさが変わるので、なるべく同じぐらいの厚さに切るのがポイントだ。

 ミョウガは根元を少し切り落とし、半分に切る。そして、残った根元の軸の部分を三角になるように切り落とす。こうするとバラバラになりやすいのだ。そうしたら、断面を下にして千切りにし、切り終えたら揃えて刻む。三角に切った部分も同じように千切りにしてからみじん切りにする。

 青ジソは軸を切り落とし、数枚重ねてくるくると巻く。巻いたらそれを千切りにする。厚みがある方が切りやすいが、やり過ぎるとぐしゃっとなるので気を付けましょう。千切りが出来たら、今度はそれを刻めばみじん切りの出来上がりだ。

 作業は簡単だった。ただ、それなりの分量なのでちょっと面倒くさいだけで。

 とはいえ、悠利は料理技能スキルが高レベルである。目にも止まらぬ早業と言わんばかりの包丁捌きで、さくさくみじん切りを作っていく。のほほんとした表情と手の動きがあってない。カミールはもう慣れたので気にしていないが。


「薬味が終わったら、次は魚も細かく切るよ」

「魚だけ?」

「先に魚だけで切って、それから薬味と調味料を加えて叩きます」

「なるほど」


 薬味に続いて魚のみじん切り。こちらはそこまで細かくはせず、ぶつ切りよりまだ少し小さいぐらいに仕上げる。生魚なのでぐにぐにと動くので、怪我をしないように気を付けるのが大事だ。

 魚が刻めたら、まな板の上に広げる。広げた上に薬味と味噌を載せ、魚で包み込むようにする。こうすると、薬味がバラバラにならない。


「では、後は包丁で粘り気が出るまで叩きます」

「薬味と味噌包んだけど、このままやって良いのか?」

「良いよ。その代わり、叩きながら時々混ぜたり折りたたむようにして、全体に混ざるようにしてね」

「やってみる」


 包丁でだかだか叩くだけでではあるのだが、みじん切りにした薬味や味付けの味噌がきちんと混ざるようにしなければならない。まずはそのまま叩き、塊が崩れてきたところで包丁を使って混ぜたりひっくり返したり、折りたたむようにしたりして、整える。そして、また、叩く。

 しばらく叩いていると、薬味も味噌も魚に混ざっていく。魚肉の赤に薬味の色が良い感じに映えていた。

 そのまま更に叩くと、全体がねっとりとしてくる。ミンチをよく混ぜたときのように粘り気が出ている。包丁で持ち上げるようにすると、一つの塊のようになる。これで完成だ。


「こんな感じでまとまったら、出来上がり」

「……作業は簡単だけど、地味に手が疲れる」

「……まぁ、量が多いからね」


 ぼそりとぼやいたカミールに、悠利はあははと笑った。皆でたっぷり食べようと思うと、どうしてもそうなるのだ。それは何も今日に限ったことではないので、二人はすぐに気持ちを切り替える。

 そう、今完成したのはなめろうだ。あくまでもなめろうである。今日作るのはさんが焼きなので、ここからまだ作業が残っている。


「それじゃ、ハンバーグみたいに丸めてください」

「おー」

「丸めたら、この青ジソで包んでね」

「……いつの間に青ジソの準備を……」

「え?さっき薬味を切ってるとき」


 ささっと用意された大量の青ジソに、カミールは思わず呟いた。軸を切った青ジソがいっぱいだ。薬味を切りながら用意をしていたなんて、気付かなかったカミールである。

 そこからは二人でせっせとなめろうを丸める作業だ。ハンバーグのように平たく仕上げる。そして、最後に一枚の青ジソで挟むようにぺたりと貼り付ける。表面がねばっとしているので、青ジソは問題なく張り付いた。

 頑張って作り上げたら、次は焼き作業だ。フライパンにごま油を入れて、そこへ出来上がったタネを並べる。

 

「生でも食べられるから、両面がこんがりと焼けたらそれで大丈夫だよ」

「……半生になるとか?」

「ちゃんと焼いたらそこまで生っぽくならないと思うよ」

「解った」


 やはり魚を生で食べることに抵抗はあるらしい。ちゃんと焼く、と決意を固めるカミール。その隣で悠利は「僕は半生ぐらいにしておこう~」と暢気に呟いていた。

 ごま油で香ばしく焼かれるなめろうの塊。焼かれたそれは、立派なさんが焼きだ。しばらく火にかけていると表面が色づいてくる。味噌と薬味と魚の焼ける匂いが、食欲をそそった。

 ひっくり返して反対も焼けば、完成だ。二人は小皿に自分達の味見用のさんが焼きを取り、実食に入る。味見は食事当番の特権です。

 目一杯叩いたので、食感は柔らかい。かぷりと囓った瞬間に感じるのは、焼いてなお柔らかく、なおかつもっちりというか、ねっとりというか、繋ぎを入れていないのに塊感を感じさせる食感だ。続いて、魚の旨味と、味噌の風味。それらにインパクトを添える薬味の存在感がある。

 三種類の薬味はそれぞれ食感が違うので、それがまた舌を楽しませる。また、表面に巻いた青ジソは全体をさっぱりさせる効果があり、癖も感じずに味わえる。

 

「んー、やっぱり美味しいなぁ。表面を炙る程度で終わらせると半生でもっちりして良い」


 幸せそうな顔で頬張る悠利。自分好みに半生で仕上げたのが上手くいってご機嫌だった。その隣では、カミールがじっくり味わいながらさんが焼きを食べていた。

 

「カミール、感想は?」

「焼いたら美味い!」

「これは生でも美味しいんですー」

「生はちょっと……」

「まぁ、だからなめろうじゃなくてさんが焼きにしたんだけどね」


 苦手な人に無理強いをするつもりはない。ただ、なめろうも美味しい料理であるという主張は忘れない悠利だった。なめろうが美味しく仕上がっているから、さんが焼きも美味しいのだから。

 薬味と味噌の風味で魚の臭みを消し、叩いて粘り気を出すことでもっちりとした独特の食感を生み出す。全てを一緒に叩くことで均一に味が混ざり、どこを食べても美味しいのが特徴だ。

 とりあえず、カミールの口に合ったということは皆の口にも合うということなので、憂いは消えた。

 

「それじゃ、頑張って焼いていこー!」

「おー!」


 二人は仲良く気合いを入れて、皆の分のさんが焼きを作るのだった。

 

 

 

 夕飯の時間になった。生魚は苦手な面々も、焼いてあれば何の問題もない。意外と薬味は入っていても平気らしく、皆は美味しそうにさんが焼きを食べている。

 そんな風に皆がしっかり中まで火が通ったさんが焼きを堪能しているのを尻目に、悠利は半生の、炙り状態のさんが焼きを食べていた。これはこれで大変美味しいのである。

 あと、当然のようになめろうも確保しておいたので、生も堪能している。勿論、しっかり焼いたさんが焼きも食べている。

 そう、悠利は一粒で二度美味しいならぬ、一品を三変化させて食べているようなものだった。なめろうの三段活用みたいなものである。

 皆にはしっかり焼いたさんが焼きを提供し、自分は色々食べたいので焼き具合を調整するという抜け目のなさ。そもそも、最初からなめろうが食べたかった悠利なのである。


「このお料理、とても美味しいですわね、ユーリ」

「イレイスは気に入ると思ってたんだー」

「焼いたものも美味しいですけれど、焼かずにそのまま食べるものがこう、食感も独特でとても美味しいですわ」


 幸せそうに微笑んでなめろうの入った器を示すイレイシア。美少女の微笑み、プライスレス。人魚のお嬢さんは、大好きな生魚を美味しく食べられる料理に満足そうである。

 ねっとりと粘り気があるので、箸で食べるのも容易い。口の中に入れれば、濃厚な旨味が広がる。噛めば噛むほどその存在感が口を満たし、独特の食感が楽しいのもあった。

 また、本来ならば多少の生臭さがあるだろうに、たっぷり入れた薬味と味噌のおかげでそれらは消えている。ショウガのしっかりとした歯応え、ミョウガのシャキシャキとした食感、青ジソのぶわりと広がる風味。どれもが最高の仕事をしていた。

 カツオの豊かな風味を損なうことなく、生の良さを引き出す薬味と味噌の仕事。そして、ただ刺身を薬味で食べるのではない、叩いたことによる食感の変化。それが、物珍しさも手伝ってイレイシアを喜ばせている。

 勿論彼女は、さんが焼きも喜んでいる。魚のハンバーグみたいなもの、という悠利の説明はざっくりしていたが、何だかんだで皆にそれで認識された。こちらはごま油の香ばしさと青ジソのさっぱりさが際立っている。


「よもや、なめろうやさんが焼きを食せるとは思わなかった」

「もしかして知ってるかなぁと思ってましたけど、やっぱりご存じだったんですね」

「うむ。我の故郷でも海に近い地域の郷土料理よ」

「新鮮なお魚は海の近くの目玉ですからね」

「左様」


 悠利とイレイシアと同じテーブルで静かに食事を楽しんでいたヤクモは、悠利の予想通り二つの料理を知っていた。この手の古くからありそうな日本料理は、割とヤクモの故郷の料理と被っているのだ。現代風のものは知らなかったりするが。

 その彼は、半生のさんが焼きよりも、しっかり焼いたさんが焼きを喜んで食べていた。こんがりと表面が焼けたことで別の美味しさがあるのだ。生はなめろうで堪能するということなのかもしれない。


「しかし、これはまた……」

「どうかしました?」

「……いや、酒が欲しくなる逸品だと思ったまで」

「…………あー」


 ヤクモがしみじみと呟いた言葉に、悠利はそろっと目を逸らした。その発想はなかった。悠利にとってはなめろうもさんが焼きも普通におかずだし、むしろご飯のお供だ。白いご飯が実に美味しい。

 しかし、お酒の飲める大人にとっては、良い酒の肴になるらしかった。未成年の悠利には解らない感覚だ。

 ただ、そういえば両親や姉が、なめろうを食べながら酒を飲んでいたことを思い出す。そういう日はビールではなくて日本酒を嗜んでいたことも。


(……なるほど。おつまみにもなるんだ)


 悠利はそっと、心のレシピ帳にメモを付け加えた。ご飯としてしか考えていなかったが、おつまみとしても優秀ならば覚えておいて損はない。またどこかで皆に作る日も来るだろう。

 ちなみに、《真紅の山猫スカーレット・リンクス》における飲酒は、夕飯後に各自で行うことになっている。まずはしっかり夕飯を食べ、食事当番が後片付けを出来るようにするためだ。

 よって、晩酌時の後片付けなどは、飲んでいた面々が自分達で行うことになっている。子供は寝る時間になったりするので。

 もにゅもにゅとなめろうの食感を堪能しながら食べていた悠利は、別のテーブルの会話に耳を傾ける。似たような会話が聞こえた。


「これは明らかに酒の肴だと私は思う」

「同感だ」

「俺は米が美味い」

「お前はつまみも甘いもんが好きなだけだろうが」


 大真面目な顔で言っているのはフラウ。それに同意しているのはアリー。二人に別意見を述べているのはブルック。彼らが食べているのはさんが焼きだが、味噌と薬味の味わいが酒に合うと思ったのだろう。

 そっちもおつまみ枠になるんだ、と悠利は再び心のレシピ帳にメモを付け加える。酒飲みの皆さんのご意見はとても参考になる。主に、言って貰わないと解らないという未成年的な意味で。

 視線を向ければ、未成年、もしくは酒を飲まない面々は白米との相性の良さを喜んでいる。さんが焼きは味噌の風味とごま油の相乗効果で、食欲をそそっているようだ。

 若干白米争奪戦みたいになっているが、悠利は見なかったフリをした。お代わりは各自の自由だ。争奪戦も頑張って皆で喧嘩にならない程度に収めてもらいたい。悠利だって落ち着いてご飯が食べたいので。


「ユーリ」

「ん?何、イレイス」

「このなめろうやさんが焼きというのは、どのお魚でも作れますの?」

「好みの魚で作れば良いと思うよ」


 興味津々と言ったイレイシアの問いかけに、悠利はあっさりと答える。一般的に有名なのはアジやサバだが、個人で食べる分には自分の好みの魚で作って問題ないはずだ。少なくとも悠利はそう思っている。

 ふむふむと真剣に考えているイレイシア。食べながら味を確認している姿に、悠利は首を傾げる。ちょっと珍しい行動だった。

 彼女はいつも美味しそうに食べてくれるが、こんな風に、まるで分析するみたいに真剣に食べることはない。好物を食べるときも、美味しいと全身で表現するように幸せオーラを出すだけだ。何でだろうと悠利は不思議に思った。


「イレイス、そんなになめろうが気に入ったの?」

「え、あ、あの、……先日、故郷に味噌を送りましたの」

「味噌を?」

「えぇ、お味噌汁の話をしたら、食べてみたいと言うので」

「へー、そうなんだ」


 イレイシアの故郷は遠く離れた海である。味噌はその辺りでは流通していなかったらしい。ただ、海藻との相性抜群な味噌汁の話をしたら、家族が味噌を欲しがったのだという。

 そして、故郷に味噌を送ったからこそ、イレイシアはなめろうに意識を向けるのだろう。魚は手に入る。薬味も手に入る。味噌もある。ならばこの美味しい料理を、故郷でも作れるはずだ、と。

 家族思いのイレイシアに、悠利はにこっと笑った。


「作り方とか、書こうか?」

「え?で、でも、ユーリの手を煩わせるわけには……」

「そんなに大変じゃないし、僕の故郷の料理を美味しいって言って貰えるのは嬉しいから」

「ユーリ……」


 笑顔の悠利に、イレイシアは感極まったように相好を崩した。ありがとうございますと告げる美少女、とてもプライスレス。

 二人のそんな微笑ましいやりとりを、ヤクモは穏やかに眺めている。酒の肴論争で盛り上がる大人や、白米争奪戦で騒々しい子供達の喧噪を、完全にスルーしながら。




 何だかんだでさんが焼きは皆に好評で、また作ろうかなーと思う悠利だった。次は別の魚でも美味しそうですね。




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