お手製楽しいロールケーキ


「それでは、今日は皆のリクエスト通り、おやつにロールケーキを作ります」


 大真面目な顔で厳かに悠利ゆうりが宣言した瞬間、拍手が鳴り響いた。拍手をしているのは悠利の目の前にいる仲間達、……女性陣+ブルックであった。

 何のことはない、ただの本日のおやつ作成である。それがこんな大事になっているのは、ヘルミーネが以前口にした「ユーリの作ったロールケーキが食べたい」が発端だ。悠利はそこまでお菓子作りは得意ではないので、パティシエのルシアのようにはいかないと告げたのだが、それでも食べたいという話だった。

 お菓子作りが得意ではないというよりは、道具や材料がないという方が正しいのかもしれない。アジトの台所にはそれなりに調理道具が揃っているが、それはあくまでも料理に関してだ。お菓子に必要な道具はそこまで揃っていないのである。

 また、悠利が家にいたときに作っていたお菓子にしても、本格的なものではなかった。ネットのレシピやテレビのアレンジレシピを参考にして、既製品とかとても便利なホットケーキミックスとかを使っていたのだ。それらをこちらで再現するのはちょっと難しい。

 それでもまぁ、ロールケーキぐらいなら何とかなった。レシピは覚えていなかったが、魔法道具マジックアイテムと化したせいで充電切れを起こさなくなったスマホの中にレシピが残っていたのだ。ネットや通信の必要なアプリは使えないが、それ以外の機能は使えるのでこういうときは大変助かる。

 そんなわけで、今日のおやつはロールケーキ。ただし、自分で作って貰うロールケーキだ。


「生地はあらかじめ作っておいたので、皆さん自分の好きな味でロールケーキにしてください。ただ、最初はやりやすいジャムなどの方が良いと思います」

「何が難しいのー?」

「んーとね、クリームいっぱい入れたり、そこに更に果物を入れたりすると、巻きにくいんだよねぇ」

「……なるほど」


 元気に挙手をして質問したレレイに、悠利はのほほんと笑って答えた。確かに納得のいく説明だった。手巻き寿司のときもそうだったが、慣れない者が大量の具材を巻こうとすると、基本的に破れるのだ。

 悠利が用意したロールケーキの生地の横幅は、切り分ければ二切れか三切れ分ほどの短いものだ。縦も、具材をたっぷり入れたらくるりと一周巻けるぐらいの長さしかない。

 これには一応理由があって、自分が食べたいと思った味のロールケーキを、何種類も食べられるようにとの考えだ。……人数分の生地を用意するところから皆で始めると時間がかかるので、そちらは悠利が一人で担当した。

 もっと簡単な方法としては、コンビニで提供されているようなロールケーキの作り方だ。巻いてからカットすると形が崩れるとのことで、発想の転換で切り分けた生地を器にくるりと巻いて入れ、その中央にクリームやフルーツを配したアレである。多分、アレなら好きに盛れる。

 しかし、それではロールケーキを作っている感じが出ない気がしたので、今回はこちらの方法だ。だって、その方法だと、別にロールケーキじゃなくてパンケーキでも良いような気がしたのだ。何か違うな、と。

 まぁ、機会があれば次はそちらの方法を試せば良いだけだ。今日は皆に自分でロールケーキを巻いて貰おうと思った悠利である。


「ジャムや蜂蜜などは色々と用意しました。生クリームやカスタードクリーム、果物も準備してあります。とりあえず、巻けるかどうかやってみてから、色々試してみてください」

「ユーリ、質問がある」

「何でしょう、ブルックさん」

「一人どの程度までならば作って良いのだろうか」


 大真面目な顔で言うことか?というような台詞を口にしたのは、ブルックだった。悠利以外で唯一参加している男子枠なのだが、誰より今日を楽しみにしていたのも彼だ。その目は真剣だった。

 威圧すら感じるブルックの真顔に、悠利は動じない。甘味が絡んだときのブルックのこういう顔には、慣れているので。


「……あそこの大皿が皆の分、これがレレイ、これがヘルミーネ、そしてこのお皿がブルックさんの分です」

「了解した」

「解ったー!」

「はーい!」


 悠利の説明を聞いて、ブルックは静かに、けれど口元を喜びに緩めて頷いた。続く返事はレレイのもので、いつも通り元気だ。ヘルミーネも嬉しそうである。

 甘味は好きだが、別に他人と競い合ってまで食べようとは思わない他の女子は、大皿にまとめてどーんと準備されている。皆で仲良く相談して、何なら作ったロールケーキもトレードして楽しんでくれるだろう。彼女達は平和だと悠利には解っている。

 レレイは別に甘味に欲求があるわけではないが、単純に大食いだ。お腹が減ることが何より悲しいと言いたげな彼女なので、こうやって取り分けておいた。他人の分を取ったりはしないが、羨ましそうな顔で食べ物を見るレレイの姿は周囲の罪悪感を刺激するので。

 ヘルミーネは甘味が絡むと普段より食べるので、彼女も別皿。当人曰く、甘味は別腹とのこと。彼女の別腹は大変大きい。女子の七不思議かもしれない。

 そして、最後にブルック。元々人よりよく食べるブルックの胃袋は、かなり大きい。レレイのように騒いで食べないだけで、しれっとお代わり何回目だろう?みたいな男である。そして彼は、大の甘味好きだ。自分で好きに作れるロールケーキなので、せめて多少は満足して貰いたいと多めに準備した悠利だった。結構頑張った。


「ユーリ」

「何、アロール」

「これ、巻き方の手順とか何かあるの?」

「自分が食べるだけだし、好きな味にしてくるくる巻いたら良いと思うよ」

「それだけ?」

「うん、それだけ。だって、お店に出すわけでも、誰かにあげるわけでもないもん」


 普段お菓子作りに縁がないので質問したアロールは、悠利のあっさりとした返答に呆気にとられていた。そんなんで良いの?と思わず呟く彼女に罪はない。

 しかし、悠利としても他に言い方がなかった。何せ、ロールケーキの生地はもう普通に食べられるのだ。何なら、何も付けずにそのまま食べてもほんのり甘い。後は自分好みにカスタマイズするだけである。

 勿論、これがお店で提供するものであったならば、見栄えや型崩れしないようにと手順があるだろう。しかし、あくまでもこれは自分のおやつである。小難しいことを考えるより、楽しく美味しく食べてくれれば良いと思っている悠利だった。


「それだけで良いなら、簡単ね~。何味にしようかしら~」

「あ、マリアさんには飲み物にトマトジュースを用意してあります。何なら、トマトのジャムもありますけど」

「ジュースだけいただくわぁ」

「はーい」


 うきうきでジャムを物色するマリアに、悠利はにこにこ笑顔で声をかける。トマト大好きなダンピールのお姉さんは、トマトジュースに簡単に釣られた。トマトジャムには釣られなかったが。


「トマトのジャムって何?」

「トマトのジャムはトマトのジャムだよ。お店で見かけたから、マリアさん用に買ってある」

「ちなみに、ユーリが食べたことは?」

「ありません」

「食べたことないものを薦めてるの!?」

「うーん、僕、トマトの甘さはジャムになってない甘さで良いかなーって思って」


 アロールのツッコミに、悠利はのほほんとしていた。トマトが好きなマリアのために買っただけで、自分はトマトのジャムに興味はない悠利である。そういうこともある。

 ちなみにマリアは、たまーにスクランブルエッグやオムレツにかけて食べている。トーストにもあうようだ。ケチャップとはまた違った味わいで美味しいらしい。好みは人それぞれです。


「あらミリー、何をしていますの?」

「どうせなら色んな種類のジャムを塗ったら美味しいかと思って」

「……混ざりませんかしら?」

「でもほら、ケーキでも間に何種類も挟まってて美味しいやつあるし」

「それもそうですわね」


 イレイシアが不思議そうに問いかけた相手は、ミルレイン。彼女は、数種類のジャムを順番に塗っていた。ロールケーキの生地が塗り絵みたいな感じで可愛らしい。

 その状態でくるくる巻いていくと、色々な味の層が出来るのだ。塗っているのはあくまでもジャムなので、巻くときは特に苦労しない。


「あらフラウ、果物を巻くんですか?」

「あぁ。バナナなら比較的巻きやすいかと思って」


 生地全体に薄く生クリームを塗って、フラウはその上にバナナを載せていた。とはいえ、大量に載せているわけではない。ゆっくりと押さえてくるり、くるりと巻いていく手際は、結構上手だった。

 そんなフラウの手元を見て感心しつつ、ティファーナはイチゴジャムを気持ち多めに塗って巻いている。果肉がごろごろしているタイプのジャムなので、十分食べ応えはあるだろう。

 皆が思い思いにロールケーキを作っているのを見ながら、悠利もせっせとロールケーキを作っている。これは、今ここにいない男性陣の分である。一緒に作るか聞いたところ、特に興味はなかったらしく悠利が代わりに作ることになったのだ。

 まぁ、いつものおやつはそんな感じなので、別に手間だとは思わない。女性陣とブルックが嬉々として自分で作っているので、悠利の負担も少ない。自分の分と、アリーの分と、後はウルグスとカミールだ。甘味をバカ食いはしないメンツである。

 生クリームを塗り、蜂蜜を垂らす。それをゆっくりと巻いていく。力を入れすぎると壊れるので、そこは慎重に。


「……あーっ!」

「何よレレイ、煩いんだけど」

「ぐしゃってなっちゃった……」

「……どれだけ力入れてるのよ……」


 丁寧にロールケーキを巻いている悠利の耳に、お約束とも言える会話が聞こえてきた。力自慢のお嬢さんであるレレイが、うっかりやらかしたらしい。ロールケーキはふわふわしているので、しっかり巻こうと張り切りすぎて力を入れてしまったらしい。実にレレイらしい。

 まぁ、多少形が不格好になったところで、食べられないわけではない。しかも今日は自分の分を作っているのだ。レレイが自分で食べるのだから、多少の失敗は問題ない。


「レレイが失敗するのって、クリームや果物が多すぎるからじゃない~?」

「へ?」

「あー。前に手巻き寿司のときにやったやつじゃない。レレイは欲張って詰めこみすぎるのよ。もうちょっと控えめに」

「うー、一応控えめにしてるんだけどなー」

「「もうちょっと減らして」」

「はぁい」


 マリアの指摘に、レレイはきょとんとした。しかし、隣のヘルミーネにはよく解ったらしく、きっぱりはっきりツッコミを口にしている。当人にその自覚はないが、大食いのレレイなので気付いたら分量が増えているらしい。

 二人がかりでツッコミを受けたので、気持ち減らすレレイ。まぁ、量を減らしたならば数を増やせば良いのだ。彼女はせっせとロールケーキを作ることにしたらしい。腹ぺこ娘は、早く食べたくて仕方ないようだ。

 最初はジャムや蜂蜜などで挑戦していた面々も、徐々にフルーツを入れたり、クリームを挟んだりとレベルアップしている。自分が食べたいなと思うトッピングで作るロールケーキは、彼女達のお気に召したらしい。

 そんな中、特に口を開かず、黙々とロールケーキを作っている人物がいた。ブルックだ。

 甘味大好きなクール剣士殿は、とても真剣な顔でロールケーキを量産していた。量産だ。悠利が彼のためにと用意したロールケーキの生地は、着実に消費されていた。

 また、好きこそものの上手なれとでも言うのか、それとも単純に数をこなしたことによるのか、ブルックのロールケーキは綺麗だった。最初の方こそ不格好なものもあったが、今は普通に綺麗である。クリームや果物を巻いているのに崩れていないので、皆が感心している。

 しかし、そんな声も彼には届いていなかった。黙々と、それはもう、信じられないほどの集中力でロールケーキを作っているのだ。……よほど、自分好みにアレンジできるロールケーキが嬉しかったらしい。

 そんなこんなで各々で好みのロールケーキを作成し、壊さないように気を付けて食べやすい大きさにカットしたら、実食だ。自分で作ったロールケーキということで、皆が大変ご機嫌である。

 飲み物も、紅茶だけでなくジュースやハーブ水も用意した。こちらも各々自分で選んで飲むようになっている。今日は若干セルフスタイルだった。

 おやつの時間だからと合流した面々も、悠利が作ったロールケーキの中から、自分好みの味を選んで食べている。


「これ、生地だけでも美味しいね」

「そうですわね。ユーリが、生地にも甘味を加えてあると言っていましたから」

「ふわふわで美味しいー」


 満面の笑みで次から次へとロールケーキを頬張っているのはレレイだ。ジャムにクリームに果物。美味しそうなものをあれもこれも詰めこんで、大皿にてんこ盛りのロールケーキで彼女はご満悦だった。

 イレイシアが答えた通り、ふわふわで柔らかいロールケーキの生地そのものが、ほんのりと甘い。控えめな味が好きな者なら、この生地だけで十分満足してしまいそうな仕上がりだ。

 焼き色はきちんと付いているのに、どこも固くはない。歯を立てると簡単に沈み込み、口の中でふわりと甘味を広げるロールケーキ。イレイシアは甘さ控えめの生クリームに砕いたナッツを混ぜたものを食べている。生地とクリームの柔らかさの中で、ナッツの食感がアクセントになっていた。


「とても柔らかくて、ついつい食べ過ぎてしまいそうですわ」

「あはは、イレイスがそう言うのって珍しいよね~。あたしの、形はあんまり綺麗じゃないけど食べたかったら言ってね?」

「お言葉だけいただいておきますわ」


 こぼれ落ちそうな笑みを浮かべて珍しいことを言うイレイシアに、レレイはにこにこ笑いながら自分の大皿を示した。てんこ盛りになっているロールケーキ。その全てを胃袋に収めることなど、レレイには容易い。容易いが、お裾分けを嫌がるほど心は狭くなかった。

 レレイの申し出はありがたかったが、イレイシアの胃袋はそれほど大きくはない。ここで調子に乗って食べて、夕飯を食べられなくなってしまっては困る。なので、レレイの気持ちだけ受け取ることにした。


「あら、生クリームとバナナだけでここまで美味しいんですね」

「意外と相性が良かったようだ。ティファーナのイチゴジャムも美味しいな」

「このジャム、果肉がたっぷりなので食べ応えがあるんですよ」


 指導係のお姉様二人は、仲良くロールケーキを分け合いながら食べている。

 フラウの作った生クリームとバナナのロールケーキは、生地と生クリームのほんのりとした甘さに、バナナが確かな存在感を添えていた。クレープなどにもよく見られる組み合わせなので、ある意味で鉄板なのだろう。

 ティファーナが作ったごろごろ果肉のイチゴジャムのロールケーキは、思う存分イチゴを堪能するようなものに仕上がっている。果肉がごろごろしているとはいえ、ジャムになっているので柔らかい。ふわふわとしたロールケーキの生地とあいまって、口の中で蕩けるようだ。

 アロールは特に何も言わず、黙々と食べている。生クリームとカスタードクリームの二つを巻いたクリームオンリーのロールケーキだ。ふわふわを堪能しているのかもしれない。牛乳の風味を残した甘さ控えめの生クリームと、存在感のある濃厚なカスタードクリーム。二つのクリームの調和と、それを包み込む生地のほのかな甘味が実に良いバランスだ。

 自分で作ったこともあり、時々その表情が緩む。そういうところは年齢相応の子供らしいと言えるだろう。ただ、それを口にすると多分怒るので、同じテーブルで食べているミルレインとマリアは何も言わなかった。彼らはそういう部分の空気は読めるのだ。


「マリアさんは結局何味にしたんですか?」

「私?私はねー、蜂蜜たっぷりにリンゴよ」

「リンゴ、固くないですか?」

「ユーリが薄切りにしてくれてるから、意外と大丈夫よ。リンゴと蜂蜜ってあうのよね~」

「あぁ、それは解ります」


 薄切りにしたリンゴのシャキシャキとした食感と、蜂蜜の甘さが調和して口を楽しませてくれる。マリアが作ったロールケーキは、そういう感じの仕上がりだった。シャクシャクという咀嚼音すら、美味しさに繋がっている。

 対するミルレインは、数種類のジャムを使ったロールケーキだ。くるりと巻いた断面に、幾つもの色があるのが面白い。口に入れると、数種類のジャムの味がふわりと広がる。けれど、ミルレインが相性を考えて組み合わせたので、喧嘩をすることなく口の中で調和する。

 皆が満足そうに食べているのを見て、悠利の表情も緩んだ。そんな悠利は、生クリームと蜂蜜のロールケーキを食べている。果物入りも美味しいが、このシンプルな組み合わせも好きなのだ。

 ウルグスとカミールは、ボリュームがある方が嬉しいのか、クリームと果物入りのものを好んで食べている。食べ盛りの男の子としては、クリームの重さが丁度良いのだろう。美味しい美味しいと言って食べてくれるので、悠利としてはありがたいが。

 アリーはオレンジマーマレードのロールケーキを気に入っている。ジャム系とはいえ、マーマレードは皮の苦みも存在するので、そこまで甘いだけではない。ストレートの紅茶と合わせて飲むと、彼にとって丁度良い甘さになるのだろう。

 そんな感じで平和なのだが、不意にアリーがぽつりと口を開いた。


「あのアホ、どれだけ食うつもりなんだ……?」

「……えーっと、用意した分は全部ちゃんと仕上げたみたいです」

「結構な量だよな?」

「結構な量ですねぇ」


 アリーの視線の先には、一人別のテーブルで黙々とロールケーキを食べているブルックの姿があった。具材を巻いたことで元の皿に載せられなくなったので、ブルックの前には三枚の大皿がある。クリームも果物も遠慮なく詰めこんだロールケーキが多々見られる。

 そしてブルックは、その大量のロールケーキを一人で消費していた。

 レレイのようにガツガツ食べているわけではない。目に見えて食べる速度が速いわけでもない。所作はいつも通り淡々としている。

 けれど、皿の上のロールケーキは次から次へとブルックの口へと消えていく。まるで手品か何かかと思う消え方だ。表情こそ殆ど変わらないが、彼が大喜びで食べているのは悠利にもアリーにもよく解った。


「よくもまぁ、あれだけ食って胃もたれしねぇな」

「甘い物は別腹らしいですよ」

「あいつの場合は、元々の胃袋もデカいがな」

「そうなんですよねぇ。ブルックさん、見た目の割によく食べる方ですから」


 アリーの言葉に、悠利はあははと笑いながら答える。見た目が細マッチョという印象のブルックだが、《真紅の山猫スカーレット・リンクス》で一番食べるのは彼だ。別に満腹まで食べなくても支障はないらしく、レレイのように大騒ぎすることはないが。

 ただそれも、本性が竜人種バハムーンだと知っている悠利とアリーにしてみれば、当然だった。そもそも人間ではないので、人間の基準で計る方がおかしいのだ。


「今日一番喜んでるのは、間違いなくあいつだな」

「満足してもらえたみたいで何よりです。……発案者のヘルミーネも満足そうですし」


 笑みを零す悠利に、アリーは苦笑する。皆が希望するからと、こんな面倒くさいことを一生懸命やる悠利に呆れているのだ。お人好しめ、と。

 ただ、悠利は別に大変だと思っていないし、皆が喜んでくれて美味しいものが食べられるので満足している。そういうところが彼にはある。

 珍しく大人数のおやつタイムは、それぞれが自分好みのロールケーキを堪能して大盛況で幕を閉じた。味付け一つで無限に広がるロールケーキの可能性は、皆を満足させたようです。



 ちなみに、自分で作るロールケーキを気に入った若干名に、第二回の開催をお願いされる悠利がいるのでした。作るのも楽しかったようです。




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