香りが楽しいヒラタケのバター醤油炒め


 《真紅の山猫スカーレット・リンクス》の仲間達には、ちょっと変わった癖がある。癖というか、習慣という方が正しいだろうか。ちなみにこれは、悠利ゆうりが身を寄せるようになってから出来たものだ。

 早い話が、仕事で出掛けた面々が、何らかの食材を持ち帰ってくるのだ。

 最初は、ブルック、レレイ、クーレッシュの三人に悠利がサンドイッチ弁当を作ったときだ。悠利のお手製弁当が美味しかった三人が、お礼としてダンジョンから迷宮キノコを大量に持ち帰ったのだ。食材がお土産なら、きっと悠利が喜ぶだろう、と。

 それは正しく、そのときの悠利は大喜びで沢山のキノコ料理を作りだした。持ち帰った食材によって悠利の仕事が増えたのは事実なのだが、当人は嬉々として料理をしていたので問題はない。さらに、そのときのキノコ料理の数々は皆を喜ばせた。

 それから、食材を持ち帰る仲間が増えたのだ。

 単純に悠利への土産として持ち帰ってくることもあれば、これで美味しい料理を作ってほしいという意味で持ち帰ってくることもある。また、依頼の関係で余った食材を貰ってくることもあった。そしてそれらを、悠利が拒んだことは一度もない。どんな食材でも、彼は嬉しそうに受け取るのだ。

 そして、今日も悠利にお土産が届けられるのだった。


「……ヒラタケだね。随分と立派な」

「あぁ。依頼先の育てられていたものだ。その中でも、納品に適さない物ということで、報酬の一部としてもらってきた」

「納品に適さない?こんなに立派で美味しそうなのに?」


 大量の立派なヒラタケを持ち帰ったラジの言葉に、悠利はきょとんとした。何を言われているのか解らなかったからだ。悠利の目の前にあるヒラタケは、十分売り物になりそうな立派なものだったので。

 そんな悠利に答えたのは、ラジではなくマリアだった。今日は二人で依頼に出かけていたのだ。


「納品先の希望する大きさより育ってしまったらしいのよ。大きすぎてもダメなんですって。触感が変わるから」

「そうなんですか……。物凄く美味しそうですけどね」

「その辺の細かい違いはまぁ、相手方の好みだから仕方ないんじゃないかしら」

「そうですね」


 マリアの説明に、悠利は素直に頷いた。悠利達にとっては肉厚で大きくて美味しそうなヒラタケでも、依頼主にとってはそうではなかっただけの話だ。そのおかげで、美味しそうなヒラタケを貰えたのだから、良かったと思っておこう。

 ちなみに、ラジとマリアが受けた依頼は、ヒラタケの栽培場所にやってくる魔物の討伐だ。農家さんから魔物の駆除を依頼されるのは別に珍しいことではない。戦闘職の訓練生達にしてみれば、良い修行になる。

 ただ、悠利がちょっと意外だなと思ったのは、ラジとマリアが組んで仕事をしていたことだ。マリアは狂戦士という職業ジョブに恥じない頭に血が上りやすい性質のダンピールで、虎獣人の格闘家として身体能力は優れていても穏健派のラジはいつだって組みたがらない。手合わせすら拒否する。

 そんな二人が一緒の依頼を受けていたというのだから、何でかなぁ?と思ってしまっても仕方ない。ついでに、それが顔に出ても仕方ない。他の面々でも同じように不思議がるだろうから。


「個人じゃなくて誰かと組んで戦闘系の依頼をこなしてこいっていうお達しなのよ~」

「そして、手が空いていたからという理由で、僕が巻き込まれた」

「……ラジ、お疲れ様」

「……ありがとう」


 理由が解ったので、悠利はラジを労った。多少暴走したマリアを食い止めることが出来るとか、巻き込まれても自衛できるとかいう理由で選ばれただろうラジである。元々の性格もあって、きっと道中は大変だったに違いない。それゆえの悠利の労りだった。

 悠利の優しさを噛みしめるように、ラジは困ったような顔でお礼を言った。実に微笑ましい光景だった。友情だ。きっと、悠利以外の誰かがいてもラジを労っただろう。

 そんな二人の姿を見て、マリアが唇を尖らせる。そんな姿も無駄に色気に溢れるのだから、妖艶な美貌というのも罪作りだ。


「あら、ひどいわぁ。私も頑張ったのよ、ユーリ?」

「マリアさんもお疲れ様です。ラジに迷惑かけた覚えはありませんか?」

「今回はちゃんと話を聞いて動いたから大丈夫よ」

「って言ってるけど、ラジ……?」

「……話は聞いたが、そもそも暴れようとしないでほしかった……」

「だ、そうですよ」

「見解の相違ねぇ~」


 口元に手を当ててコロコロと笑うマリアと、疲れたようにため息をつくラジ。実に対照的な二人の姿に、いつも通りだなぁと思う悠利。この二人は根本的に性格が相入れないのだ。水と油まではいかないが、混ぜたら黒になる絵の具ぐらいには合わない。

 まぁ、ラジの負担は多少あっただろうが、無事に依頼を終えて帰ってきているのだから御の字だろう。ラジも多少疲れているが、そこまで本気で疲労しているようには見えない。

 マリアの方は物凄く元気だ。ほどよく運動できて機嫌が良いのだろう。彼女は戦うことが大好きなので。

 とりあえず悠利は、目の前のヒラタケに向き合うことにした。肉厚で、全体的に大きく、実に食べ応えがありそうだ。今日のおかずに使うのに申し分ない。これだけあれば、全員分が確保できる。


「何か食べたい料理ある?」

「僕はそこまで料理に詳しくないから、ユーリに任せる」

「私も~。ユーリなら美味しいものを食べさせてくれるでしょ?」

「わー、責任重大だー」


 ぱちんとウインクを寄越してきたマリアに、悠利は棒読みで答えた。そんな悠利の態度に気を悪くした風も見せず、マリアは楽しそうに笑っている。じゃれているだけなので、ラジは気にしていない。いつものことだ。


「それじゃあ、何か良さそうな料理を考えてみます」

「楽しみにしてる」

「頑張ってね~」


 笑顔を残して去っていく二人を見送って、悠利はヒラタケへと視線を戻す。これだけ立派なので、旨味も凄いだろう。ヘタに調理せずに焼いて塩を振っただけでも美味しそうだ。

 けれど、それでは肉食に分類されるあの二人を満足させる料理にはならないだろう。

 素材そのものの味を楽しむ塩味も悪くはない。悪くはないが、それでご飯が進むかと言われたら、多分、否である。悠利としては大食いの皆さんが喜んでくれる料理に仕上げたいのだ。


「ご飯が進むってなると、濃いめの味付けの方が良いよねぇ……。ヒラタケで濃い味付け……。何が良いかなぁ……」


 うーんと一人唸る悠利。そもそも、悠利はあまり食べる方ではないので、味の好みが大食いメンバーとは異なる。いや、彼らが好むようなしっかりした味の料理も好きだが。

 そんな悠利に、救世主が訪れた。本日の食事当番がやってきたのだ。


「何唸ってんだ?」

「あ、ウルグス」

「おう。夕飯の支度に来たけど、……随分大量のキノコだな」

「ラジとマリアさんのお土産。ヒラタケだよ」

「へー」


 ウルグスは興味深そうにヒラタケを突いている。大食い枠に入る見習い組の最年長は、肉厚のキノコを見て一言呟いた。


「バター焼きにしたら美味そう」

「……バター」

「おう。こんだけ肉厚だったら、バターで焼いただけで美味いんじゃね?」


 バターの風味で焼いたキノコは美味しい。濃厚な旨味が絡んで多少こってり仕上がるので、大食いの皆さんの口にも合うだろう。そういう意味で、ウルグスの希望は渡りに船だった。

 そして、悠利はそこにもうひと味加えることで完璧な料理を思いついた。


「バター醤油炒めにしよう!」

「は?」

「バターだけじゃなくて、醤油も使って焼こう。バター醤油ならしっかり味がつくし、ラジもマリアさんも気に入ってくれると思う!」

「……事情が全然解らねぇけど、バター醤油で炒めたら絶対美味いとは、思う」

「だよね?よし、決定ー」


 ウルグスの同意を得られた悠利は、メニューが決まったとうきうきしている。……事情がちっとも解らないウルグスを置いてけぼりにして。

 とはいえ、ウルグスは今の悠利の反応から大体の事情を察した。大方、キノコを持って帰ってきた二人を喜ばせる料理を考えていたのだろう、と。正解である。


「ヒラタケはバター醤油炒めにするって決めたので、他のおかずから準備しよう」

「話の流れは全然解らんが、とりあえず解った」

「解ったの?」

「バター使う料理は冷めたら不味いって話だろ」

「うん」


 何故その料理になったのかという理由は解っていないが、悠利が最後に作ろうとしている理由はちゃんと解っているウルグスだった。そのぐらいには彼も慣れているのだ。バターを使った炒め物は、冷めるとバターが固まってしまって美味しくない。

 なので、まずは他のおかずを作る準備に入る二人だった。スープとか、メインディッシュの肉とか、他の副菜とか、そういう感じだ。

 慣れた手付きと最初の頃よりも随分と良くなった連携で、悠利とウルグスはほかのおかずを作り終えた。日々、共に料理をしていれば雑用のタイミングもばっちりだ。

 時計を見れば、夕飯まで後少し。今から作れば温かい料理を提供するのに丁度良さそうな時間だった。


「それじゃ、ヒラタケのバター醤油炒めを作ります」

「了解」

「まず、ヒラタケの根元の汚い部分を包丁で切り落とします」

「はいよ」


 大量のヒラタケなので、二人でせっせと根っこの汚い部分を取り除く。それほど大量に取り除く必要はないのだが、やはり下の方になると汚れが目立つのだ。

 また、そのときにゴミなどが付着していないかも確認する。付いていた場合は、指でそっとヒラタケを傷つけないようにして取る。

 そんな作業を黙々と終えれば、ボウルの中にはこんもりと山盛りになったヒラタケがある。汚れを取る段階で食べやすい大きさにバラしてあるので、後は炒めるだけだ。

 数が多いので大変だっただけで、下処理そのものは難しくはない。……数が多かっただけで。


「流石に、こんだけあると大変だな……」

「まぁねぇ。……でも、炒めるとぺちゃんこになるんだよねぇ……

「え」

「……ヒラタケって、炒めるとしんなりするんだよね。エノキみたいにかさが減ります」

「マジか」

「マジです」


 ふっと遠い目をする悠利に、ウルグスは顔を引きつらせた。つまり、これだけ頑張って用意したヒラタケも、火を入れれば皆が食べる適量ぐらいにしかならないということだ。ウルグスにとっては衝撃だった。

 勿論、葉物野菜のように物凄く減るわけではない。それでも、シイタケやシメジに比べたら縮むような気がしている悠利だ。エノキもかさが減りやすい。何か法則性があるのかもしれないが、悠利にはよく解らなかった。

 ちなみに、悠利の中で一番かさが減らないなと思うキノコはエリンギだ。エリンギは焼いてもあまり縮まない気がしている。シイタケはちょっと縮むイメージがあるのだが。まぁ、いずれも悠利のイメージなので、正確なところは解らない。

 解らないし、悠利も特に興味はない。美味しければ問題ないので。


「それじゃ、このヒラタケをフライパンで炒めます。量が多いから、二人で同時に頑張ろうね」

「解った」

「オリーブオイルを全体に混ぜ合わせてから炒めると楽だよ」

「おう」


 フライパンにほぐしたヒラタケを入れ、オリーブオイルを絡める。よく絡んだら火にかけ、焦げないように炒める。焦げないようにというのがポイントなので、火加減はあまり強くなくても良い。

 しばらく炒めていると、ジュージューと油の小気味よい音が響く。ヒラタケがほどよくしんなりしてきたら、味付けだ。


「バター醤油だけだと濃くなり過ぎるから、下味で軽く塩胡椒をします」

「軽く?」

「あくまでも味のメインはバター醤油だから、下味程度にね」

「なるほど」


 パラパラと塩胡椒をしんなりしたヒラタケにふりかけ、よく混ぜる。しっかりと混ざったら、バターを投入して混ぜ合わせる。ここでバターをケチってはいけない。しっかりとバターの風味が付くようにしなければならないのだから。

 ただし、バターは強火にすると焦げるので、注意が必要だ。焦げたら美味しくない。バターが溶ける程度の温度で全体に馴染ませ、しっかり絡んだところで醤油をくるりと回しかける。


「……俺、いつも思うんだけどよ」

「何?」

「ユーリは当たり前みたいにそうやって調味料入れるけど、俺らには適量が解らねぇからな?」

「前から言ってるように、そういうときは少ないめに入れて、味見して調整すれば良いだけだよ」

「へいへい……」


 耳にたこが出来るほど言われている台詞なので、ウルグスはさらりと受け止める。言っていることは解っている。解っているが、初見の料理を作るときはもうちょっと解りやすいアドバイスが欲しかった。

 しかし、悠利はこういう部分では全然役に立たないのだ。何せ、今だって醤油を入れる分量を聞いたら「くるくるーって一回しするぐらい」などという、大変アバウトな返事だったので。いや、一応分量の説明ではあるのだろう。しかし、これだと人によって入る量が変わるのだ。

 まぁ、ウルグスも慣れているので、気持ち控えめに醤油を入れて、混ぜ合わせてから味見をして、足りなければまたかけるという行動に出ている。何だかんだで慣れていた。……本人は気づいていないが、その手付きや見極めも、最初に比べたら随分と成長しているのだ。

 ウルグスを含む見習い組が自分達の料理技術の上達をイマイチ実感出来ないのは、隣にいるのが悠利だからだ。包丁の使い方一つをとっても、料理技能スキルが高レベルすぎる悠利のそれは、全然参考にならない。

 勿論悠利だって、皆に切り方を教えるときは見えるように、解りやすいようにやっている。しかし、キャベツの千切りを量産するとかになった場合、目にもとまらぬ早業が披露されるのだ。そんなのが真横にいるのに、自分達が成長した実感を持つのはなかなか難しい。


「よし、出来上がった分を大皿に入れて、残りも作っちゃうよ」

「おー……」

「どうしたの、ウルグス?」

「……いや、マジで量が減るんだなって思って……」

「……そうだね」


 最初にフライパンに山盛り入れたヒラタケが、大皿に綺麗に入る量になってしまった事実に、ウルグスはぼそりと呟いた。事実なので、悠利も同意した。いっぱいあるね!と思っていたが、実は全部炒めたら普通のおかずの量にしかならないんだろうなという感じで。

 とはいえ、しょげたところで仕方ない。皆がお腹を空かせて待っているのだ。二人は、残りのヒラタケもバター醤油炒めにするために気合いを入れるのだった。




「何これ、美味しいー!」


 満面の笑みでヒラタケのバター醤油炒めを頬張っているのは、レレイだった。にっこにこだった。彼女はいつだって美味しくご飯を食べてくれるが、いわゆる「ご飯が進むおかず」というものが出てくると、物凄く喜ぶ。

 今も、バター醤油の風味がたっぷりのヒラタケを、白米と一緒にかっ込んでいる。……比喩ではない。年頃の女性であることを気にもせず、大口を開けてかっ込んでいるのだ。安定のレレイだった。

 ただ、そんな風に食べていても行儀が悪くは見えないし、むしろ美味しそうに見える。それはきっと、レレイが全身で美味しいと表現しているからだろう。見ているだけでお腹が減る笑顔だ。


「本当に美味しいわねぇ~。キノコってこんなに食欲をそそるおかずになるのね」

「お気に召しました?」

「召しました」

「それは良かったです」


 うふふと嬉しそうに微笑むマリアに、悠利もにこにこと笑った。妖艶美女のお姉様は、上品に食べる。食べ方はとても上品なのだが、彼女は大食漢だ。なので、何気に大量のヒラタケを食べていた。

 けれど、持ち帰ってきたのはマリアだし、彼女達に喜んでほしくて作った悠利なので、別に咎めるつもりはない。むしろ、気に入ってもらって嬉しいと顔に出ている。

 ヒラタケはあまりクセのない味をしたキノコで、食感は固くもなく柔らかくもない。キノコ特有の繊維の食感はあるが、噛み切りにくいほどの頑丈さは持っていない。なので、噛めば噛むほどじゅわっと旨味が広がるのだ。

 下味に塩胡椒をしてあることで、味に芯が通っている。バター醤油の濃厚な風味も確かに美味しいが、それだけで全ての味を付けてしまうとヒラタケの旨味が隠れてしまうからだ。口の中に全ての味が調和して、良い塩梅の仕上がりだ。

 キノコ料理とはいえ、バター醤油でしっかりと味を付けているので、ご飯もパンも進む味になっている。それでも食材がキノコなので、小食メンバーにも好評のようだ。皆が喜んでくれる姿が見えて、悠利は表情を緩める。

 誰もが気に入る料理というのは、難しい。そんなものは多分、どこにも存在しない。味の好みは千差万別であり、どれが正しいとか間違っているとかはないからだ。

 けれどだからこそ、こうやって日常のご飯で皆が喜んでくれると、悠利はそれだけで幸せな気分になるのだ。ましてや今日の食材は、仲間の土産だ。頑張って仕事をしてきた二人からのお土産なので、その二人が喜んでくれる料理に仕上がったのは僥倖である。


「ユーリ」

「ん?どうかした、ラジ?」


 パンのお代わりを取るために席を立ったらしいラジに声をかけられて、悠利は不思議そうな顔をした。何か声をかけられるようなことがあったかな?と顔に出ている。そんな悠利に、ラジは端的に問うた。


「僕とマリアとレレイを別のテーブルに配置したのって、もしかして気にせず食べられるようにか?」

「うん。せっかくだし、レレイと張り合うより良いかなって」

「そうか。ありがとう」

「いえ、どういたしまして」


 何を感謝されたのかはよく解っていない悠利だった。食事のときの座席は、基本的には好き勝手に皆が座る。ただ時々、悠利が指定するときがある。そういうときは、料理の量や種類が関係しているので、皆も素直に従ってくれるのだ。

 そして本日は、ヒラタケを持ち帰ってくれた功労者であるマリアとラジは、小食な面々と同じテーブルに配置されていた。思う存分彼らに食べてほしかったからだ。

 なお、レレイは今日も元気に豪快に食べているし、同じテーブルのクーレッシュとヘルミーネにツッコミを貰っているが、気にしていない。アレはもはや日常風景なので、よほど大声で騒がない限りはアリーの雷も落ちない。いつものことなので。


「ユーリ~」

「はい、何ですか、マリアさん?」

「今日も美味しいご飯をありがとう」


 優しい微笑みで告げられた言葉に、悠利はきょとんとした。次いで、茶目っ気たっぷりな笑顔を浮かべて答える。


「こちらこそ、立派なヒラタケを沢山ありがとうございます」

「また何かもらえそうなら、貰ってくるわね~」

「食材のお土産よりも先に、同行者に負担をかけないようにお願いしますねー」

「それはのんびりと頑張るわ~」


 一筋縄ではいかないダンピールのお姉さんは、楽しそうに妖艶に微笑むだけだった。これはまだしばらくは、彼女に振り回される面々がいそうだなぁと思う悠利。主に貧乏くじを引きそうなラジとリヒトの真面目な二人を思って、そっと心の中で合掌するのだった。




 ちなみに、ヒラタケのバター醤油焼きを大いに気に入った仲間達に、他のキノコでもバター醤油焼きを!と頼まれることになる悠利でした。バター醤油味、大人気です。



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