彩り綺麗なちらし寿司


 その日悠利ゆうりは、何となく思い至ってメニューをちらし寿司にすることに決めた。特に深い意味はない。ただ何となく、お寿司を食べたいなぁと思っただけなのだ。

 とはいえ、《真紅の山猫スカーレット・リンクス》の面々で魚の生食に抵抗を持たないのは、悠利とヤクモとイレイシアの三人のみ。他は、あまり得意としてはいない。出来れば火の入った魚が良いと思っているのを悠利は知っている。

 だから、ちらし寿司なのだ。悠利の寿司のイメージは握りなのだが、握りには生魚が必要だ。それはあまり受け入れられないだろうし、何より人数が多いので作るのが大変だ。あと、そもそも悠利は寿司を握ったことがないので、シャリを作るための微妙な力加減などは解らない。

 それに対してちらし寿司は、生ものがなくても成立する料理だ。載せる具材は地方によって違いがあるそうだが、悠利が作るのは具材も少なく、酢飯に何も混ぜないシンプルなものだ。人数が多いので、あまり手の込んだ準備は大変だなと思ったので。

 甘酢を混ぜた酢飯の上に、錦糸玉子、絹さや、人参、蓮根を盛り付けるだけである。思い立ったのが突然だったので、使えそうな具材がそれぐらいだったのだ。今回作ってみて皆に好評だったら、次は茹でた海老や甘辛く煮付けた椎茸などを載せようと決意する。

 まぁ、酢飯が皆に受け入れられるかどうかは、やってみないと解らないのだが。酢の物は普通に食べているので、酢の味がダメという人はいないのだろう。後は当たって砕けろだ。

 勿論、万が一に備えて白米も用意しておく。酢飯が苦手だと思った人には、白米の上に具材を盛り付けて食べて貰えば良い。


「そんなわけで、今日の夕飯はちらし寿司です」

「……チラシズシって何だ?」

「僕の故郷の料理の一つ。お酢で味付けしたライスの上に具材を載せて食べる料理です」

「……酢で、ライスに味付け?」

「うん」


 不思議そうな顔をするカミールに、悠利はにこにこと笑っている。何だかんだで皆の味覚が自分とそんなに違わないと解っているので、あまり不安を感じてはいないのだ。

 そしてカミールもまた、悠利が作る料理の味を信頼しているので、少し考えただけで頷いた。食べたことは無い料理だけれど、悠利が出してくる料理ならそこまで不味いことはないだろう、と。謎の信頼だった。


「とりあえず、盛り付けに使う具材を準備します」

「おー」

「あので、カミールは人参と蓮根の皮むきをお願い」

「任された」


 カミールに人参と蓮根を任せた悠利は、絹さやに手を伸ばす。ぷちぷちと筋取りを行い、それが出来たら塩を少し入れたお湯で茹でる。絹さやの緑が、火が通って更に鮮やかに美しく染まった。

 茹でた絹さやは水をよく切ってザルにあけておく。粗熱が取れてから、食べやすい大きさに刻む予定だ。そのまま使っても良いのだが、今日の絹さやは少し大きめだったので、刻んだ方が食べやすいと思ったのである。

 続いて悠利が取りかかるのは、ある意味最大の難所、錦糸玉子だ。

 錦糸玉子とは、簡単に言えば薄切り玉子の千切りだ。しかし、これがなかなかに難しい。薄焼き玉子は、火加減を間違えると茶色に染まってしまうのだ。真っ黄色の綺麗な薄焼き玉子を焼くことが、第一関門なのである。


「ユーリ、それ、何してんの?」

「薄焼き玉子作ってるの」

「……うげっ、難しそう」

「失敗すると破れちゃうんだよね~」

「頑張れー」

「はーい」


 悠利の手元を覗き込んだカミールは、早々に応援隊に回った。自分がやろうとは微塵も思わないらしい。彼は自分を知っていた。

 薄焼き玉子は、作り方自体はシンプルだ。溶き卵をフライパンに薄く流し入れ、均等になるように回す。そして、裏面が焼けてきたら箸やフライ返しなどを使ってひっくり返す。両面が焼けたら出来上がり。

 手順自体は簡単だが、ひっくり返すタイミングを間違ったり、力加減を誤ると破れる。まぁ、錦糸玉子にするので、多少破れるぐらいはまだ修正が出来るが。

 問題は、火加減だ。

 焦ってうっかり強くした日には、少量しか入れていない玉子にあっという間に火が通る。火が通るだけならば良い。ヘタをしたら茶色くなる。焦げるまでいかなくとも、錦糸玉子は黄色が美しいものなので、茶色くなった段階で失敗なのだ。

 普段は鼻歌を歌いながら楽しげに料理をする悠利だが、今は真剣な顔でフライパンと向き合っている。錦糸玉子を焦がすことだけはあってはならないのだ。

 とはいえ、しっかり火加減を確認しながらやれば問題はない。大量の綺麗な薄焼き玉子を作り終えた悠利は、満足そうだった。


「うおー、薄焼き玉子が山盛り。それ載せて食べんの?」

「これを千切りにして載せるんだよ」

「へー。ふわふわして良さそうだな」

「ちらし寿司には錦糸玉子がないと落ち着かないんだよねぇ、僕」


 むしろ、他に具材がなくても錦糸玉子があればそれで何となくちらし寿司っぽいなと思っている悠利だ。酢飯の上に錦糸玉子を載せるだけでも、それなりに見栄えは良いので。

 薄焼き玉子は冷めてから切るつもりの悠利は、カミールが皮を剥き終わった人参を受け取って細長く切っていく。少し太めの千切りみたいな感じだ。この人参は絹さやと同じように茹でる。生より茹でた方が食べやすいので。


「ユーリ、人参を茹でるのは解ったけど、蓮根はどうすんだ?」

「蓮根は茹でてから甘酢に漬けて味を付けるよ」

「解った。それじゃ、お湯湧かすな」

「お願い~」


 手順を聞いて段取りよく行動することを身につけつつあるカミールだった。悠利はそんなカミールにお礼を言って、蓮根の準備に入る。

 皮はカミールが綺麗に剥いてくれたので、悠利は蓮根を輪切りにしていく。酢飯の上に載せて一緒に食べることを考慮して、あまり分厚くは切らない。けれど、薄すぎてはせっかくの食感が残らないので、そこは注意している。やはり蓮根はシャキシャキ食感があってこそ美味しいので。

 悠利が作業をしている傍らで、カミールは人参を茹でながら蓮根用のお湯を沸かしている。人参を茹でたお湯はオレンジになってしまうので、蓮根は別のお湯で茹でた方が良いんだろうなと思ったのである。今回は正解だ。

 ゆであがった人参はザルにあげて水を切っておく。茹でた人参の鮮やかなオレンジは彩りにぴったりだ。

 そして、切り終わった蓮根を悠利はお湯に入れて茹でる。このとき、お湯にちょっと酢を入れるのがポイントだ。酢を入れて茹でると、蓮根は色が白くなりシャキシャキ食感に仕上がるのだ。


「甘酢ってどんなの?」

「お酢と砂糖を混ぜたやつ。今回はみりんと塩も入れるけど」

「甘酸っぱいってことで良いのか?」

「そうだね。そんな感じ」


 蓮根を茹でている間に、別の鍋に前述した調味料を入れて沸騰させ、味を調える。みりんが入っているので、ちょっと沸騰させてアルコールを飛ばす必要があるのだ。今回はちらし寿司に使うので、気持ち甘めに作っている悠利だ。食べやすさ優先である。

 そうこうしているうちに蓮根が茹で上がったので、ザルにいれて水気を切る。水気が切れたら、耐熱の器に蓮根を入れ、その上から出来上がった甘酢を注ぐ。蓮根が全部浸かるぐらいに甘酢を入れたら、あとは粗熱を取って冷まし、味が染みこむのを待つだけだ。


「めっちゃ酢の匂いがする。酸っぱくねぇの?」

「甘酢舐めてみる?今回は気持ち甘めに作ったけど」

「味見ー」


 悠利にスプーンを渡されたカミールは、少量の甘酢を掬ってぺろりと舐める。確かに酸っぱい。お酢なのだから当然だ。けれど、悠利が言うとおり、砂糖の甘さが加わっているのでそこまで酸っぱくはなかった。


「何かこう、割りと食欲をそそる感じの味だな」

「南蛮漬けとかだったら、多分カミール達も気に入ると思うよ」

「南蛮漬け?」

「えーっと、肉や魚の天ぷらを甘酢に漬けた感じの料理」

「ナニソレ美味そう。今度作って」

「今度ね」


 ぱっと顔を輝かせたカミールに、悠利はさっくりと対応した。今日はちらし寿司を作るのであって、南蛮漬けを作っている暇はないのだ。何せ、南蛮漬けは地味に手間がかかる。


「僕、錦糸玉子を切るから、カミールはすまし汁作ってくれる?」

「了解ー。具材は?」

「キノコと豆腐で」

「オッケー」


 ちらし寿司にはすまし汁だと思っている悠利だった。カミールは笑顔で分担作業を引き受けてくれる。すまし汁ぐらい、お茶の子さいさいで作れるようになっているのだ。かなりの進歩だった。

 カミールにすまし汁を任せた悠利は、錦糸玉子に取りかかる。綺麗な黄色の薄焼き玉子を数枚重ね、まずは半分に切る。後は、半円を横向きにして千切りにしていくだけだ。錦糸玉子の厚さは、悠利の好みでほどよい千切りになっている。細かい千切りにするのも美味しいが、悠利は玉子の味がよく解るようにほどほどの千切りにするのだ。

 ちなみにこの薄焼き玉子、ほんの少しだけ塩が入れてある。何も味付けをしていない玉子よりは、少し塩味がついていた方が食べやすいかなと思ったので。

 料理の技能スキルレベルの高い悠利だけに、千切りの速さもかなりのものだった。見事としか言いようがない。トトトトという軽快な音が響いている。


「相変わらずユーリの包丁さばき、すごいよなぁ」

「そう?」

「そうです」

「お褒めにあずかり光栄です」

「いえいえ、こちらこそいつも美味しいご飯を作ってくださって光栄です」

「「……ぷっ」」


 悠利が恭しく頭を下げれば、カミールも同じように頭を下げる。次の瞬間、二人は顔を見合わせて笑った。こんな風に戯けたやりとりが出来るのも、気心知れた仲間の証拠であろう。ちょっと楽しい二人だった。

 そうこうしているうちに、錦糸玉子は完成し、カミールはすまし汁を完成させた。冷めた絹さやを食べやすい大きさに切るのも忘れていない。

 つまり、残る仕事は、酢飯の作成だけである。


「それでは、このほかほかに炊き上がったライスを、ボウルに移します」

「おー」

「そしてそこに、この、お酢と砂糖を混ぜて作った甘酢を、投入します」

「何でしゃもじに添わせて入れてんの?」

「こうやって入れるようにって習ったから?」

「なるほど」


 カミールの目の前で悠利は、しゃもじに添わせるようにして甘酢を全体に回しかけていた。理由は悠利もよく解っていない。ただ、そうするように習っただけである。

 甘酢を全てかけた後は、ほんの少し、数秒だけ待つ。甘酢が米に浸透する時間を待つのだ。数秒待ったら、次は混ぜる作業。ボウル一杯のご飯を混ぜるので、なかなかに大変な作業だ。


「それ、大ぶりに動かしてるのにも理由があるのか?」

「全体をしっかり混ぜるため、かな?底からきっちり全部混ぜて、混ざってきたらこんな風に切るようにして混ぜるの」

「ほうほう。……結構疲れそうだから、しんどくなったら代わるからな?」

「うん。そのときはお願い」


 非力な悠利を慮って言葉をかけてくれる優しいカミールだった。素直にお礼を言った悠利だが、実はカミールには別の仕事をお願いしたいのだ。混ぜるよりもっと疲れそうな仕事を。

 だまにならないように混ぜ合わせ、甘酢が全体に混ざってお米がつやつやしてきたら、そこで悠利はいったん手を止める。そして、いそいそと作業机の傍らに置いていた道具を引っ張り出した。


「カミール、これでライスを仰いで」

「……それは解ったけど、これ、何だ?」

「うちわっていう道具。扇いで涼むための、えーっと、扇と似たような感じの道具だよ」

「俺、こんな道具見たことないんだけど」

「それ、ヤクモさんの私物」

「何となく理解した」


 悠利のあっさりとした答えに、カミールは大きく頷いた。ヤクモの故郷は遠く遠く離れた異国なので、こことは文化が物凄く違う。そのヤクモの私物だと言われれば、見たことがない道具でも納得だった。

 早く早くと悠利に急かされて、カミールは大人しくうちわを使う。扇ぐ道具だと言われれば、見知らぬ道具でも使い方は解る。カミールは悠利に言われるままに、酢飯を扇いだ。

 この作業は、酢飯の粗熱を取るために必要だった。かなりの量の酢飯を冷ますのだ。うちわ係も結構大変である。

 カミールが扇ぐことで表面の熱が取れてきたのを確認すると、悠利はしゃもじで酢飯を混ぜる。上下を入れ替えるようにして、全体の熱を冷ますのだ。二人がかりで頑張らなければならない、かなり大変な作業だった。

 それでも、無事に酢飯は完成した。重労働だったが、二人はやり遂げたのだ。


「それじゃ、盛り付けまでは水分が飛ばないように濡らした布巾を被せておいておこう」

「それじゃ、他のおかず作りだな」

「うん。頑張ろうー!」

「おー」


 ちらし寿司は完成の目処が立ったが、それだけで夕飯は出来ない。悠利とカミールは元気よく、残りの作業に取りかかるのだった。




 そして、夕飯の時間。錦糸玉子の美しいちらし寿司を見た一同は、不思議そうな顔をしていた。


「これは、僕の故郷のちらし寿司という料理です。ライスに甘酢で味付けをしてあって、上に載っている具材と一緒に食べる料理です」

「ユーリ、これ、酸っぱいご飯なのー?」

「そんなに酸っぱく作ってないよ、レレイ。でも、普通のライスも用意してあるから、食べて見て口に合わなかったらそっちに変更してね」

「解ったー!」


 いつでもどこでも元気いっぱいなレレイだった。とはいえ、彼女の質問は他の皆を代表してのようなものだったので、なるほどと頷く気配があちこちにあった。

 それでも、見知らぬちらし寿司を忌避する声は上がらない。また変わった料理を作ったなぁという扱いである。安定の悠利。

 そんな中、約一名、とてもうきうきした状態でちらし寿司を食べている人物がいた。ヤクモである。


「ヤクモさん、お口に合います?」

「うむ。実に美味である。よもや、遠き異国の地で寿司を食えるとは思わなかったぞ」

「僕もちょっと食べたくなっちゃって」

「なるほど。我はユーリのおかげで寿司が食えるので、ありがたい」

「こちらこそ、うちわを貸してくださってありがとうございます。流石に、扇じゃ無理だったので」

「無理であろうな」


 ぺこりと頭を下げた悠利に、ヤクモは真顔で言い切った。この人数分の酢飯の粗熱を飛ばすのに、お洒落アイテムでもある扇で対処しようと思う方が間違っている。それなら、手頃な大きさの板きれでも使った方がマシだ。多分。

 とはいえ、ヤクモはうちわを貸したときに悠利が何をするつもりかを聞いていた。なので、今日の夕飯がちらし寿司であることを知っていたのだ。知っていたからこそ、うきうきで待っていたとも言う。

 そんなヤクモに、悠利は申し訳なさそうに口を開いた。


「すみません、ヤクモさん。本当なら、海鮮を散らした方が美味しいと思うんですが」

「みなまで言わずとも承知している。我とイレイス以外には、不評であろうよ」

「そうなんですよねぇ……。レレイですら、生魚はあんまり食べようとしないので」

「まぁ、あの娘は肉食なのだから、仕方あるまい」

「機会があったら、海鮮ちらしも作りますね。流石ににぎり寿司は無理なんで」

「アレは技術が必要であるからなぁ」


 もぐもぐとちらし寿司を食べながら、悠利とヤクモはそんな会話を交わす。暢気な会話だった。そして、彼らの中で寿司に関する知識は割と被っていた。共通認識が出来ているのは良いことだ。

 そんな二人を見て、アリーが呆れたように呟いた。


「実はユーリの故郷がヤクモの故郷だと言われても、俺は驚かねぇぞ……」

「うーん、でも、僕の故郷の料理が全部一緒というわけでもないのでー」

「アリー、我の故郷にはユーリが口にするような素っ頓狂な文化は存在せぬ」

「素っ頓狂!?」

「そうか。まぁ、服装も違ったから、別の場所なんだろうとは思ってたがよ」

「アリーさん、否定してくれなかった!?」


 何でと叫ぶ悠利の切実な訴えを、アリーとヤクモはさらっと流した。彼らにとっては当然のことなので、悠利の主張は聞き入れられない。いつものことだった。

 そんな風に悠利が大人二人相手に訴えている中、仲間達は美味しそうにちらし寿司を食べていた。どうやら、お気に召したらしい。


「これ、ふわっふわの玉子と一緒に食べるの美味しいね!」


 スプーンで豪快にちらし寿司を掬って食べているレレイの顔は、ご機嫌だった。ふわふわの錦糸玉子、シャキシャキした酢蓮根、甘味のある人参、歯応えと彩りを添える絹さや。コレと言った強い味は存在しないのに、絶妙に調和していて食が進むのだ。

 酢で味付けをしたと聞いて最初は首を傾げていた一同だが、いざ食べて見ればなかなかに美味しい。特に、酸味がさっぱりとさせてくれるのか、不思議と食欲がわき上がるのだ。


「このちらし寿司というのは、酢で味付けしてあるせいか、普段より食が進みますね」

「はい。わたくし、普通のライスよりこちらの方が好きかもしれませんわ」

「暑い日にも食べやすくてよさそうですね」


 穏やかに微笑むティファーナに、イレイシアもおっとりと微笑んだ。美女と美少女の微笑みの二重奏、プライスレス。どちらも清楚な雰囲気をしているので、そこだけ妙に上品な空間になっていた。

 その彼女達はどちらかといえば小食に分類されるのだが、言葉通りにちらし寿司を結構食べていた。お代わりをしようか迷う程度には、お口に合ったらしい。


「ヘルミーネ、さっきから何食べてるの?」

「蓮根だけお代わりしてきたの」

「は?」

「これ、食感も味も美味しいわよね」

「……あー、気に入ったんだ」

「うん」


 ぱりぽりと酢蓮根だけ食べているヘルミーネを見て、アロールは呆れた顔をした。それ、トッピングじゃないの?と言いたかったに違いない。

 まぁ、確かにちらし寿司のトッピングではあるのだが、それだけで食べても問題はない。酒のつまみなどにするならば、もう少し分厚く切ると歯応えがあって最適だろう。

 自由だなぁと思っているアロールの視界で、お代わりのちらし寿司を持ち帰ったレレイが満面の笑みを浮かべていた。……何故か大量の錦糸玉子を載せて。


「レレイ、お前、それ……」

「玉子いっぱい、美味しいよね!」


 にぱっと嬉しそうに笑うレレイ。皆が悠利を見るが、錦糸玉子は大量に作っているので、悠利は大丈夫と言うように頷いた。その頷きで、レレイの行動は皆に許容されるのだった。

 ほんのりと塩味がついた錦糸玉子を、レレイは気に入ったらしい。酢飯と一緒に豪快に口の中に入れて食べている。美味しい美味しいと幸せそうに笑って食事をする彼女の姿は、見ている皆に思わず笑みを浮かべさせるのだった。




 酢飯が皆に受け入れられると解った悠利は、時々、具材を変えてちらし寿司を提供するのでした。ただし、錦糸玉子だけは固定です。



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