香水屋さんのお手伝いも色々です。


「ユーリ、僕らこれからレオーネさんの店に行くけど、どうする?」

「え?」


 不意に声をかけられて、悠利ゆうりはきょとんとしながら視線をそちらに向けた。そこにいたのはアロールとロイリスの二人だ。珍しい組み合わせだけなく、その発言内容も踏まえて悠利は首を傾げた。

 今日は、定期的に訪れる、もとい、皆に言われて強制的に与えられる、悠利の休日である。家事一切を禁止され、大人しく休息しろと言われるという、悠利にしてみると何をして良いのか解らなくなる日でもあった。……彼は家事全般が趣味なので、それを取り上げられると途端に時間を持て余してしまうのだ。

 首を傾げている悠利に、アロールは噛んで含めるように口を開いた。


「だから、僕らは仕事で行くけど、ユーリが暇なら一緒に行かないかって聞いてるの」

「ユーリくん、レオーネさんと親しかったでしょう?だから、一緒にどうかなって話をしてたんです」

「二人は同じ仕事なの?」

「違う」

「違いますよ」


 二人の仕事の内容はさっぱり解っていないが、仕事で向かうなら自分は邪魔になるのではないか、と言いたげな悠利だった。けれど、アロールもロイリスも一緒に行こうと誘ってくる。アロールの首に巻きついた状態の白蛇ナージャも同じくだ。


「え?」


 不意に、ぽよんと何かが悠利の足に触れた。ふくらはぎに優しく触れたのは、スライムであるルークスの弾力のある身体だった。ぽすぽすと甘えるように悠利の足にすり寄りながら、じぃっと大きな瞳で見上げている。その瞳はキラキラと期待に輝いていた。

 何が起きたのかよく解らない悠利は、目を輝かせるルークスが、時折視線をアロールの方に向けていることに気づいた。正確には、アロールの首に巻きついているナージャである。


「……あぁ、ルーちゃん、ナージャさんとお出かけしたいんだ?」

「キュウ!」

「……シャー」

「ナージャ、ちょっと黙ってて」


 憧れの従魔の先輩であるナージャが出掛ける先へ自分も出掛けたい。誘われているなら、自分も一緒に連れて行ってほしい。ルークスのキラキラおめめの理由は、多分それである。悠利の問いかけにその通りだと言いたげに跳ねているので間違っていないだろう。

 なお、クールなナージャは面倒そうに息を吐いていた。アロールが宥めるようにその頭を叩きながら黙らせたので、多分それは文句か何かだったのだろう。もしかしたら、自分についてくるなとか、主人の側にいろとか、そういうツッコミだったのかもしれない。アロールが通訳してくれないので、悠利には正しい意味は解らなかったが、何となく雰囲気がそんな感じだった。

 しばらく考えて、悠利はルークスの頭を撫でた。普段滅多に我が儘なんて言わないルークスが、おねだりをしているのだ。アロールに主人バカと言われる程度にはルークスが可愛くてルークスに甘い悠利だ。下す決断は決まっていた。


「邪魔じゃないなら、僕とルーちゃんも一緒に行こうかな。仕事の話の間は、お店の中見てるし」

「了解。それじゃ、ユーリも一緒に行こう。……ナージャ、だからルークスを威嚇するなって」

「あはははは……」


 悠利の申し出をアロールが了承した瞬間、ルークスはアロールの前へと移動した。そして、頭上を見上げながら何度も何度も頭を下げた。先輩、ご一緒させていただきます!みたいな挨拶なのだろう。……なお、それに返されたのは威嚇混じりの空気の音だった。すかさずアロールがツッコミを入れるが、ナージャはどこ吹く風である。

 しかし、ルークスはまったく気にしていなかった。憧れの先輩と一緒にお出かけが出来るだけでうきうきらしい。それに、ナージャはこうやって時々素っ気ないが、ルークスに色々なことを教えてくれる頼りになる先輩でもあるのだ。クールな先輩と天真爛漫な後輩という従魔コンビなのだった。

 そんなわけで、悠利とルークス、アロールとナージャ、そしてロイリスという三人+二匹というメンバーで、調香師レオポルドが店主を務める香水屋七色の雫へと向かうのだった。……すれ違う人々が微笑ましい表情で見送る程度には、子供が三人に見える悠利達なのでした。

 慣れた王都の道であるし、従魔が二匹もいるので、特に問題が起こることもなく店に到着した。扉を潜って店内に入ると、今日は店主が一人で店を切り盛りしているらしく、売り子の女性店員の姿はなかった。


「レオーネさん、頼まれてた仕事の件で来ました」

「お邪魔します、レオーネさん。ご注文の品のサンプルを持ってきました」

「アロールちゃんにロイリスくん、いらっしゃい。ごめんなさいねぇ。わざわざお店まで来て貰っちゃって。時間は大丈夫かしらぁ?」

「「大丈夫です」」


 扉が開いた瞬間に意識はこちらへ向けていたのだろう。アロールとロイリスの呼びかけに、店主レオポルドはすぐさま反応した。今日も相変わらず輝かんばかりに麗しい美貌で、華やかな極上の笑みを向けてくれる。

 まだ少し苦手意識が残っているのか、アロールもロイリスもぺこりと頭を下げる姿は少々ぎこちない。それでも、失礼にならない程度に挨拶がきちんと出来ているので及第点だろう。オネェは自分が奇抜であることは解っているので、その程度では怒らない。

 そこでふと、レオポルドは驚いたように視線を悠利とルークスへ向けた。


「あら、ユーリちゃんにルークスちゃんじゃないの。お買い物かしら?」

「今日は休日なので、付き添いできましたー。お仕事の間は邪魔しないのでお構いなく」

「キュピピピー」

「あらまぁ、そうなの?それじゃ、後でお茶にでもしましょうね?」

「ありがとうございます」


 笑顔で答えた悠利に、レオポルドはぱちんとウインクして見せた。そういった仕草が実に様になっている。今日もオネェは絶好調だった。


「でも、休日なのに他の子の付き添いだなんて、ユーリちゃんらしいわねぇ」

「違います。アジトに置いておくと仕事しそうだから、連れ出したんです」

「え?」

「あぁ、なるほど。それなら納得だわぁ。ユーリちゃんだものねぇ。流石の読みよ、アロールちゃん」

「え?」


 少し呆れたように呟いたレオポルドに、アロールが状況を説明する。そのあまりにあまりな言い方に、悠利が瞬きを繰り返しながら疑問符を浮かべる。しかし、そんな悠利とは裏腹に、レオポルドはアロールの発言に得心がいったらしく、力一杯頷いている。

 何で?と言いたげな顔で視線をさまよわせる悠利。一瞬悠利と目が合ったロイリスは、にこっと笑って視線を逸らした。僕に聞かないでください状態だった。アロールとレオポルドは二人で盛り上がっていて、全然悠利を見てくれない。

 とりあえず、盛り上がっている二人に声をかけても無駄だと思ったので、悠利はロイリスを呼んだ。優しい彼のことである。名前を呼ばれた場合までスルーはしないだろうと思って。


「……ロイリスー……」

「あははは……。でも、ユーリくん、一日アジトにいたら、絶対何か家事しようとしません?」

「……う」

「だからですよ」


 助けを求めた先のロイリスにもばっさり切られる悠利だった。言い方は優しいが、言っている中身はアロール達と同じである。色々と皆に行動がバレバレな悠利だった。

 そんな風に悠利とロイリスが話をしている間に、アロールとレオポルドは仕事の話を進めていた。


「とりあえず、皆から聞き取った感想を書き記してあります。参考にしてください」

「ありがとう、アロールちゃん。面倒な仕事をさせてごめんなさいねぇ。お仲間の皆さんにもお礼を言っておいてちょうだい」

「ちゃんと報酬もらってますし、うちの子達も事情を説明したら理解してるんで問題ないですよ」

「そう?本当にありがとうね」


 アロールが渡した手帳を受け取り、レオポルドは感謝の言葉を伝えている。どうやらアロールが彼女の従魔達と共に何か仕事をしたのだということだけは解った悠利である。調香師であるレオポルドが魔物使いのアロールに仕事を頼むというのがよく解らず、ひたすらに首を傾げている。その足下で、ルークスも同じように身体を傾けて首を傾げるような仕草をしている。なお、こちらは悠利の真似をしているだけだ。

 そんな二人に気づいたのか、レオポルドが小さく笑った。


「ユーリちゃんもルークスちゃんも、同じような仕草で不思議がらなくても良いじゃないのぉ」

「え?……あ、ルーちゃん何してるの?」

「キュ?」


 言われて初めてルークスが自分と同じような仕草をしていることに気づいた悠利は、ぱちくりと瞬きをしながら問いかける。それに対して、ルークスは何が?と言いたげに不思議そうだ。とりあえず真似をしていただけなので、深い意味はないのだ。

 ぽやぽやしたルークスの雰囲気からそれを察したのか、その場には楽しそうな笑いが広がった。普段はあまり笑わないアロールも笑みを浮かべている。ただ一匹、ナージャだけが呆れたようにシャーと細い息の音をさせているのだった。


「あたくしがアロールちゃんに頼んでいたのは、魔物除けの香水を作るための準備よ」

「そうなんですか」

「えぇ。アロールちゃんなら、従魔の皆に意見を聞けるでしょう?どの種族がどの香りが嫌か解れば、こちらも作りやすいもの」

「なるほどー」


 レオポルドの説明で色々と納得した悠利だった。彼が作る魔物除けの香水は、色々な種類がある。魔物によって好む匂いも嫌う匂いも異なるので、それに合わせて作り分けているのだ。

 この場合重要なのは、魔物が嫌う匂いを見つけることではない。候補にした、一定の魔物が嫌う匂いが、別の魔物を引き寄せる効果が無いかを確かめることが重要なのだ。誰かが嫌いなものが誰かの好物だったというのはよくある話だ。しかし、それが魔物が相手だとそのまま笑い話にすることも出来ない。

 幸い、アロールが使役している従魔は種類が豊富だった。色々な種族の意見を聞けるということで、彼女に白羽の矢が立ったのだ。


「キュー」

「あら、どうかしたの、ルークスちゃん?」


 床を這うようにして移動したルークスが、レオポルドが持っている手帳を見ている。レオポルドの問いかけには答えず、そのまま視線をアロールに向けた。何かを訴えるような、子犬のような眼差しである。


「……ルークス、言っておくけど、魔物除けの香水なんだから、嫌な匂いの方が多いよ?」

「キュキュー」

「……解ったから、そんな目で見るな。次からは誘うから」

「キュイキュイ!」

「シャー」

「ナージャ、煩い」


 アロールとルークスのやりとりから、どうやら一緒にお仕事がしたかったらしいと察した一同だった。そして、アロールは基本的に従魔に甘いので、ルークスのおねだりに敗北していた。呆れたようなナージャにツッコミを入れる声も、どこか力が無い。

 そんな実に微笑ましい十歳児とスライムのやりとりを眺めてほっこりしていた一同の中で、ロイリスは思い出したように下げていた袋から金属の塊を幾つも取りだした。それは小さな丸缶だった。大人の女性の掌にすっぽりと収まるぐらいの大きさだ。店内にも同じ大きさの丸缶が置いてある。レオポルド特製、香り付きのハンドクリームが入れられている容器だ。


「こちらが出来上がったサンプルですが、どうでしょうか?」

「ありがとう、ロイリスくん。それじゃあ、ちょっと見せてもらうわね」

「はい。どうぞ、忌憚きたんないご意見をお願いします」

「安心してちょうだい。あたくし、仕事で妥協はしないタイプなの」


 生真面目に伝えたロイリスに、レオポルドは茶目っ気たっぷりにウインクを返した。普段のノリがどれほどフレンドリーでも、この美貌のオネェは立派な職人なのである。ある意味でとても頑固でもあるので、彼は一切妥協をしない。

 そんなレオポルドが相手なので、ロイリスは緊張した面持ちで返事を待っている。レオポルドは真剣な顔でロイリスが渡した丸缶を見詰めている。蓋の部分に花とそれを取り囲むように模様が刻まれているのだ。また、それだけでなく、本体の側面にも模様があった。

 職人ではない悠利には善し悪しはさっぱり解らないが、個人として言えばそこに刻まれている模様を綺麗だと思った。花はまるで本物を写し取ったように生き生きとしているし、蔦のようにも見える周囲を取り巻く模様は実に繊細な美しさを保っている。相変わらずロイリスの彫る模様は細かくて綺麗だなぁと思う悠利だった。

 しばらく真剣に丸缶を眺めていたレオポルドは、ゆっくりと口元に笑みを浮かべた。真っ直ぐと自分を見ているロイリスに視線を向けて、今度は誰の目から見ても明らかな微笑みを浮かべる。


「素晴らしい出来映えだわ、ロイリスくん。こちらの注文にここまで完璧に応えてくれるなんて、本当にありがとう」

「……あ、ありがとうございます。お気に召して良かったです」

「お気に召すなんてものじゃないわぁ。大満足よ!早速、本格的に注文させてちょうだいね。あぁ、勿論、貴方が無理せずに作れる範囲で良いわ」

「はい!頑張ります!」


 本当に素敵ねぇと微笑む美貌のオネェ。仕事を請け負うことが確定したロイリスは、緊張と興奮で頬を紅潮させていた。外野の悠利は、とりあえず丸く収まったらしいと理解して、ひょいっとレオポルドの手元を覗き込んだ。もっとしっかり丸缶の模様を見たくなったのだ。


「あら、どうかした、ユーリちゃん?」

「綺麗な模様が見えたので、僕もよく見たいなーと思いました」

「あぁ、なるほど。どうぞ見てちょうだい」

「ありがとうございます。うわー、流石ロイリス。綺麗だなぁ」


 楽しげに笑ったレオポルドにサンプルを一つ渡されて、悠利は顔をキラキラと輝かせて丸缶の模様を眺めている。乙男オトメンは可愛いものや綺麗なものに目が無かった。


「レオーネさん、この綺麗な丸缶、何に使うんですか?」

「ハンドクリームの販売容器に使うのよ」

「レオーネさんの香り付きハンドクリームですか?」

「えぇ、そうよ。一目でどんな香りか解るように、蓋の部分に花の模様を彫ってほしいってお願いしたの」


 レオポルドの説明に、悠利はなるほどと理解した。オネェがこだわり抜いた素材で作ったハンドクリームに、これまたオネェがこだわり抜いた材料で作った香りを追加して作る香り付きのハンドクリームは、人気商品である。そして、その人気商品を更にアピールする為に、今度は容器に手を加えることにしたレオポルドなのだった。

 バラの香りのハンドクリームならばバラの花が蓋に描かれた缶を使い、ラベンダーの香りのハンドクリームならばラベンダーの花が蓋に描かれた缶を使う。花以外に果物を香料に使っている場合もあるので、よく見たら蓋に柑橘系の模様が彫られているものもあった。それらを美しいと思わせる配置で仕上げるロイリスのセンスは確かなものだ。


「ロイリスくんの彫る模様は優しい感じでしょう?だから、うちのお客様にも喜んでもらえると思ったのよぉ」

「それはよく解ります。女性のお客さんが喜びそうな感じですもんね」

「えぇ。贈り物にしていただくこともあるのよ。だからこそ、もらって嬉しい容器にしようと思ったの」

「流石レオーネさん。お仕事大好きですね」

「あら、仕事に全力を尽くすのは当然よ、ユーリちゃん。お代をいただくんだから、それに見合う商品を用意するのは当たり前だもの」


 真面目な顔で言い切るレオポルドに、悠利はそうですねと笑っておいた。なお、心の中では「僕が言いたかったの、そういうことじゃないんだけどなー」と思ったが、口を挟まない程度には空気を読んだのだ。オネェの情熱とぶつかるのは得策ではない。

 ちなみに、悠利が言いたかったのは、商品の改良に余念が無いだけでなく、セールスポイントも忘れずに強化していくところである。職人というのは作る方に特化して、商売っ気が少ない人もいるのだが、レオポルドはそれに当てはまらなかった。作る方にも情熱を向けるし、お客様へアピールする方にも全力投球だ。ある意味とても素晴らしい調香師様である。

 それにしても、と悠利は思う。普段接点の全くないアロールとロイリスがレオポルドの仕事を手伝っていることに、少しだけ驚いた。そして同時に、そうやって色んな人が協力していることが如実に解って、少しだけ嬉しくなったのだ。

 魔物使いのアロールの仕事は、王都で生活する人々とはあまり接点がないと思っていた。けれど、彼女がたくさんの魔物を使役する魔物使いだからこそ果たせる仕事がある。同じように、小物に細工を施すことの多いロイリスが、既にそこにあった商品に付加価値を付けるために彫金を行っていることも、悠利には新しい発見だったのだ。

 新しいことをたくさん知ることが出来て、今日は良い日になったなーと思う悠利だった。……なお、顔はいつも通りのにこにこ笑顔なので、彼がそんなことを考えているということは、周囲の皆にはまったく気づかれていないのだった。


「それじゃ、お礼も兼ねてアロールちゃんにはあたくし特製の香水を」

「普通に代金を払ってもらえたらそれで結構です」

「……相変わらずつれないわねぇ、貴方」

「僕みたいな子供が香水つけてたら変です」

「別にそんなことはないと思うのよ……?ねぇ、ユーリちゃんとロイリスくんもそう思わない?」

「へ?」

「え?」


 花が咲くような笑顔でアロールに流れるように香水を勧めたレオポルドは、食い気味で拒絶されて困ったように頬に手を当てている。十歳児の僕っ娘のアロールであるが、素材は決して悪くはないので、ことあるごとに彼女を着飾りたがるオネェなのだった。そして、いつものごとく拒絶されているというだけである。

 そんな二人のやりとりをいつものことと眺めていた悠利とロイリスは、突然話を振られてぽかんとした。二人揃って顔を見合わせて、こてんと首を傾げる。悠利はよく解らないというほわほわした表情で。ロイリスはちょっと困ったような顔で。……早い話が、二人揃って返事を避けたわけである。

 何しろ、「余計なこと言ったら殴る」とでも言いたげなアロールの視線が飛んできていたからだ。オネェを敵に回すのも嫌だが、常にセコムのように白蛇を引き連れた魔物使いを敵に回すのも嫌なのだ。しかもアロールとは同じ場所に住んでいるのだ。こっちの方が危険度が高い。


「もう、二人揃ってすっとぼけるんだから」

「そいつらを巻き込もうとしないでください」

「はいはい、解りました。また今度にするわぁ」

「金輪際いらないです」

「本当につれないわねぇ、アロールちゃん……」


 お姉さん悲しい、と泣き真似をしてみせるレオポルドであるが、誰も相手にしなかった。なまじ美貌なので様になっているのが余計に腹が立つのだろう。アロールは半眼でそんなレオポルドを見上げていた。この癖さえ無ければ良いのにと思っていそうな顔だった。

 その後は、仕事を終えて報酬をもらったアロールとロイリスと一緒に、レオポルドが用意してくれていたお茶とお菓子を堪能する悠利なのでした。合間合間にアロールにあの手この手でお洒落の話題を振るレオポルドであるが、軒並み撃沈するのでした。いつものことです。



 後日、アロールが監修を手伝った魔物除けの香水の改良版と、ロイリスが仕上げた花の模様が彫られた丸缶に入ったハンドクリームが新たに店頭に並ぶのでした。なお、どちらも人気商品になりました。




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