オネェさんは建国祭衣装に全力です。
「さぁ、皆、建国祭に合わせて晴れ着を用意するわよ!」
「「…………」」
ばばーんと言う効果音を背負っているような感じで現れたその人に、リビングで思い思いにくつろいでいた
……一応彼は《
「レオーネさん、こんにちは。ところで、晴れ着ってどういうことですか?」
「こんにちは、ユーリちゃん。どういうもこういうも、せっかくの建国祭なのよぉ?お祭りを楽しむためにも晴れ着を用意しないといけないでしょう?」
「そういうものですか?」
「えぇ、そういうものよ」
悠利の問いかけに、レオポルドは自信満々に答えた。このオネェはいつでもどこでも自信満々である。そして、一応確かに彼の言い分も一理あるのだ。建国祭は一年で最も賑わう晴れの日である。その晴れの日を、特別に誂えた晴れ着で祝うというのは確かに昔からある風習なのである。
初詣に晴れ着で出掛けるような感じで、建国祭を楽しむのに晴れ着が必要だとことになる。だがしかし、その話題を投げかけられたのは悠利と見習い組の少年達だった。趣味特技は家庭的だが、自分自身を着飾ることには無頓着な悠利と、そもそもそういうことに興味の無い十代の少年達である。
なので、彼らの返答はこうなる。
「でも、別に無くても困らないですよね?」
「右に同じく」
「オイラ別に、今持ってる服破れてないから大丈夫です」
「不要」
悠利、カミール、ヤック、マグのさらりとした意見が並んだ。先陣を悠利が切ったので、見習い組達も物怖じせずにレオポルドに意見を告げることが出来たのだ。それを見て、レオポルドは嫌そうに眉を寄せた。
貴方達ねぇ、と何かを言いかけたオネェは、そこでふと視線をウルグスに向けた。ただ一人、我関せずと言いたげに何も言わなかった見習い組最年長は、視線を向けられて一瞬だけ後退った。ウルグスはレオポルドがちょっと苦手なのだ。
「ウルグスくん、貴方の意見は?」
「俺、ですか?」
「えぇ、そうよ。貴方、何も言わなかったからどうなのかしらと思って」
「「確かに」」
言われてみればその通りだと、悠利達の視線がウルグスに向かう。ウルグスはその視線を受け止めて、どこか面倒くさそうに口を開いた。後頭部をガシガシと掻きながらなので、相当面倒に思っているのだろう。
なお、そんな彼の返答はと言うと。
「別にレオーネさんに見立てて貰わなくても、実家で衣装用意してるんで」
「「え?」」
「あら、そうなの?」
「えぇ。休暇貰って実家に戻る予定ですが、その間にあちこち顔合わせもあるらしくて、外出着を作ってあります」
「流石ねぇ」
「面倒なだけなんですけどね……」
楽しそうなレオポルドに、ウルグスはため息を吐いた。心底そのイベントを面倒くさがっている感じだった。普段のウルグスはどこからどう見ても庶民のガキ大将といった感じなので、礼儀作法その他諸々を要求される顔合わせイベントが面倒に思えるのだろう。
純粋に興味が湧いたのかどんな外出着なのか問いかけるレオポルドに、ウルグスは自分に解る範囲で説明している。彼はそもそも服飾関係に詳しくはないので、ふんわりとしたイメージを伝えるだけに留まるが、オネェはそれでも十分楽しそうだった。
「ウルグスって、そういえばお坊ちゃまだったよね」
「普段思いっきり忘れてるけどな」
「外出着が作ってあるとか、顔合わせがあるとか、オイラには想像も出来ないや……」
「違和感」
「「解る」」
ぼそぼそと、ウルグスに聞こえないように四人集まって会話をする悠利達。締めくくるようにマグが淡々と告げた言葉に、三人は力一杯頷いた。そう、違和感だ。普段のウルグスを見ていると、彼がお坊ちゃまであるという事実をうっかり忘れてしまうのだ。
とはいえ、ウルグス本人に言わせれば、自分は王都で育っただけで一般人だということになるのだろうが。だがしかし、代々王宮で文官を務めている家系だったりもするので、一般人かもしれないが完全な庶民というよりは、お金持ちに分類されるだろう。そういう話をすると嫌がりそうだが。
「それじゃあ、ウルグスくんは大丈夫ね。となると、他の皆の衣装だけれど……」
「「……え」」
くるり、とレオポルドが視線を悠利達に向ける。にっこりと微笑むオネェと、オネェの情熱に巻き込まれない立場を確保して安堵しているウルグス。そんな二人の姿に、悠利達は固まった。
……なお、そんな彼らの視界の端を、小さな影が走り抜けた。ハッとして皆が視線を向ければ、既にそこにマグの姿はなかった。
「あいつ、本当にすばしっこいな……」
「マグの奴、自分だけ逃げやがった!」
「早っ!」
「凄いねぇ……」
「あらやだ、あの子も見目は悪くないから晴れ着を準備したかったのに。逃げられちゃったわぁ」
困ったわねぇと言いたげに手を口元に当てている美貌のオネェ。だがしかし、気を取り直したのか彼は悠利達に向き直った。逃げ損ねた三人の少年を見て、にっこりと微笑む。実に素敵な笑顔だった。……その背後にオーラのように見える情熱さえなければ、悠利達だってもうちょっと安心できるのだが。
危機感知能力に長けているマグは、オネェの情熱の餌食になる前に逃げてしまった。出来ればそれに続きたかったが、既にロックオンされている彼らに逃げ場は無い。三人は引きつり笑顔でレオポルドを見ていた。若干冷や汗気味である。
「あぁ、安心してちょうだい。勿論、晴れ着を準備するからといって、お財布事情を考慮しないようなことはしないわ」
「というか、綺麗に洗濯したら普段着でも良いかなって僕思うんですけど……」
「ダメよ、ユーリちゃん!お祭りを最高に楽しむためにも、気分を変えるための晴れ着は必要よ!」
「……はい」
オネェの情熱に押し負けた悠利だった。そして、悠利が負けてしまったら、他の見習い組達に勝ち目は無かった。カミールとヤックは肩を寄せ合ってしょんぼりしていた。オネェの謎の情熱が怖い二人だった。
「そうね。ユーリちゃんとヤックくんは、シャツを新調したらどうかしら?」
「シャツ、ですか?」
「そうよ。もう暑い季節でしょう?そのシャツも悪くはないけれど、もっと涼しげなものにすればどうかと思うのよ」
「なるほど」
「あと、シャツ一枚なら新調してもお財布痛まないでしょう?」
「それぐらいなら、多分……」
最後の言葉は、ヤックに向けられた。見習い組の最年少であるヤックは、まだまだ受けられる依頼が数少ない。持ち前の算術の知識や実家の伝手でもある商人ネットワークを使って、冒険者ギルド以外の場所でもちょこちょこ小金を稼いでいるカミールと違って、彼の懐はあまり豊かではないのである。
なお、生産ギルドに様々な特許を持っている悠利の懐はちっとも寂しくないどころか、気づけば貯蓄が積み重なっている。だがしかし、当人の性格からして、自分のために派手に金をかけることが出来るタイプでもない。それを考慮した上で、レオポルドはシャツ一枚と言ったのである。それぐらいならば、悠利も自分のための出費として奮発しようと思うのではないか、と。
そんなわけで、悠利とヤックはどんなシャツが良いだろうかと二人で和気藹々と会話を始めた。ついでにウルグスも加わって、彼の実家が日頃お世話になっている服屋を教えてくれている。せっかく晴れ着を買うのだから、いつもと違うちょっとお洒落なお店で買ってみようという試みだった。
……さて、そんな会話に入れないカミールはと言えば、にっこりと微笑んでいるオネェの前で硬直していた。蛇ににらまれた蛙状態である。
悲しいかな、彼は自分の容姿を理解していた。それなりに着飾って、上品そうににこやかに微笑んでいれば上流階級に見えるぐらいには整っている容姿。普段からそれを利用して情報収集を行ったりする程度には強かなカミールであるが、だからこそ彼は今、物凄く逃げたかった。
「れ、レオーネさん」
「何かしら?」
「俺もそんなにお財布に余裕があるわけじゃないので、あの、フルオーダーレベルで全身どうにかしようとか、思わないでください、ね……?」
「あら、自分をちゃんと知っている子は、あたくし大好きよぉ」
「自分の見た目は自覚してますけど、不必要に着飾ったり金かけたりするのは好きじゃないんですよ、俺!金は貯めたい!!」
良い素材を持っている人間を着飾りたくてたまらないオネェVS身ぎれいにするのは納得できても基本的に金は貯めたい派で自分の服飾に無駄な金を使いたくない商家の息子、という何やらよく解らない戦いが始まっていた。じりじりと後退って逃げようとしているカミールと、威圧感のある微笑みでその動きを封じ込めようとしているレオポルド。奇妙な空間が出来上がっていた。
だがしかし、あーだーこーだと自分達のシャツをどんな風にするか、いつ店に行くか、誰と行くか、値段はどの程度までにするか、などという相談をしている悠利達は、全然気づいていなかった。二人に自分の知っている範囲でアドバイスをしているウルグスは、一瞬だけ視線をカミールに向けたが、頑張れと言いたげに片手を振るにとどめていた。薄情な仲間だった。
「アレ?レオーネさん来てたんですかー?」
「こんにちは」
「やっほー!」
「いらっしゃいませ」
「あら、お揃いね。お邪魔してるわ」
ぞろぞろと姿を現したのは、訓練生達だった。どうやら共同で依頼をこなしてきたらしい。きょとんとした後に笑顔でレオポルドに駆け寄るのはレレイ。ぺこりと頭を下げるものの、特にそれ以上近寄らないのがクーレッシュ。朗らかな笑みでレレイを追うように軽やかに移動するのがヘルミーネ。そして、サンドレスの裾が乱れないように注意してしとやかに一礼するのがイレイシアだ。…………ついでに、その彼らの背後で我関せずと言いたげなアロールの姿もあった。小さいので皆の陰に隠れているのである。
女性陣がレオポルドに近寄っていく中で、クーレッシュとアロールは避難するように悠利達の元へと移動した。ついでに、今が好機とばかりにカミールもそちらへやってきた。逃げないとオネェの餌食になると解っていたからだ。
「あ、カミールお疲れ-」
「お疲れじゃねぇし。何で助けてくれないんだよー」
「「無理」」
「クーレさんとアロールまでハモるのひどくない!?」
のほほんとした笑顔の悠利に迎えられたカミールは、唇を尖らせて文句を口にする。この少しの攻防戦の間でよほど消耗したのか、げっそりしている。だがしかし、そんな彼に寄越される反応は無情な返答だった。ついでに、クーレッシュとアロールも真顔で混ざっている。だがしかし、それも無理の無いことだった。
何しろ、レオポルドをどうにか出来る者などそうそういないのだから。元パーティーメンバーということでアリーとブルックは幾分気安い上にポンポンと物を言うが、オネェがそれに負けるかと言えばそうでもない。遠慮容赦の無いやりとりをしているだけで、別にレオポルドが押し負けたりはしていないのだ。
そんなオネェは、近寄ってきた女性陣と和気藹々と会話を楽しんでいた。
「建国祭用の衣装?私とイレイスはお揃いのワンピース買ったわよ」
「あら、そうなの?」
「はい。せっかくのお祭りだからと、ヘルミーネさんと色違いで買いましたわ」
「それは素敵ねぇ。飾り物はどうするのかしら?」
「お揃いのリボンもちゃんと買ったわ!」
「流石ね、ヘルミーネちゃん」
「えっへん」
ふふんと自信満々に胸を張るヘルミーネ。彼女とイレイシアは双方共にワンピースを好む傾向があるので、二人で買い物に出かけたときにお揃いで購入したのであった。なお、人魚のイレイシアは水を被ってもすぐに乾くような布地の方が良いので、そういう特殊な生地も取り扱っているお店を利用した。
「半袖でー、大きなスカーフみたいな襟が付いてるワンピースなのよ。私が薄いピンクで、イレイスが淡い黄色なの。リボンもその色にしたのよ」
「髪型もお揃いにするのかしら?」
「うん。その日は、イレイスも私と同じお下げにするの」
「あら素敵。是非お店に来てちょうだいね。似合う香水を見立ててあげるわぁ」
「やったー!」
キャッキャと盛り上がるヘルミーネとレオポルド。イレイシアは口を挟みはしないが、それでも幸せそうに柔らかく微笑んでいる。お揃いのワンピースで一緒に建国祭を巡るのが楽しみと言いたげだった。
そんな彼女たちのやりとりを、レレイはほけーっとした顔で聞いていた。可愛いものやお洒落に興味がないわけではない。だがしかし、彼女は自分の財布事情を考えて、服を新調しようとは思わなかったのである。
「レレイもお揃いにしようと思ったのに、逃げられちゃったの」
「まぁ、勿体ないわねぇ、レレイちゃん」
「えーっと、お財布が…………」
「お財布が?」
ぷくぅと頬を膨らませてヘルミーネが告げ口をすれば、レオポルドは咎めるような視線をレレイに向ける。そんなレオポルドに、レレイは視線を逸らしながらちょんちょんと指を胸の位置でくっつけたり離したりをしている。濁した言葉の先を促されて、彼女はレオポルドに向き直って答えた。
「お祭りの屋台で食べるための資金を残しておかないとダメだなと思ったので!後、あたし、ワンピースは下着見えちゃうから止めときます!」
実に清々しい宣言だった。迷いも曇りもない真っ直ぐな瞳である。……だからこそ、ヘルミーネは呆れたようにため息をつき、レオポルドは額を押さえて天を仰いだ。イレイシアは慎ましく視線を逸らしている。安定のレレイだった。
「貴方、本当に、本当に、食欲が一番なのね?」
「だって、建国祭の屋台ですよ!?各地の美味しいものがいっぱいあるのに、食べられないとか悲しいじゃないですか!」
「力説しないでちょうだい……。はぁ、素材が良いのに勿体ないわぁ」
「はい?」
レオポルドの発言に、何のことだろうと言いたげに首を傾げるレレイ。彼女は少年達に混ざって走り回る性格なのであまり気づかれていないが、顔立ちは可愛らしい。ちゃんと着飾れば見違えるだろうに、当人はお洒落よりも食欲だった。
ふぅと疲れたようにため息を吐いたレオポルドは、レレイの相手を諦めたらしい。何しろ、先立つものがないと言われてしまえばそれまでだ。そして彼は、視線を悠利達の方へと向けた。
既にオネェの洗礼を乗り越えている悠利とヤックは気にしない。衣装持ちであるウルグスも気にしない。逃げ出してきたカミールは、若干顔を引きつらせながらウルグスの後に隠れた。
「ところで、貴方はどうするのかしら?クーレくん」
「俺っすか」
「えぇ。レレイちゃんはあんなことを言っているけれど、貴方は?」
にこやかに微笑むオネェの謎の威圧。だがしかし、クーレッシュは気にした風もなくけろりと答えた。
「暑いの嫌なんで、冷感素材のベスト買いましたよ。ちょっと奮発しましたけど、ベスト新調すると見栄え変わるかなと思って」
「え?クーレさん、衣装新調してたんですか!?」
「何でお前はそんな驚愕の顔で俺を見るんだ」
「だって、クーレさんそういうのに興味なかったじゃないですか!」
防波堤になると思っていたクーレッシュが役に立たないことに気づいたカミールが悲痛な叫びを上げる。だがしかし、カミールの言い分も一理あった。クーレッシュは特にお洒落とかに興味があるような性格ではない。そんなカミールに、クーレッシュはあっさりと答えた。
「俺は単純に冷感素材のベストが欲しかっただけだぞ。そしたら、建国祭でも使えそうな見栄えの良いベストを見繕ってくれただけだ」
「偶然の産物だったんですか!?」
「お洒落がオマケな辺りが貴方らしいわねぇ」
「着飾ったりお洒落したりってのは、どうも苦手で」
困ったようにぽりぽりと頬をかくクーレッシュと、悲しそうにその場に崩れるカミール。レオポルドはちょっと呆れているが、仕方ない。クーレッシュの興味はお洒落にはあまり向かないのである。悠利に言われて清潔とか身ぎれいとかは意識するようになっても、お洒落方面はイマイチなのである。
悲しんでいるカミールの肩を、悠利とヤックがぽんぽんと叩いて慰めていた。オネェの追撃から逃げたいらしいカミールは、そろりそろりとレオポルドから距離を取っている。悪あがき真っ最中だった。
「カミールくんもだけれど、アロールちゃんも、衣装はどうするのかしらぁ?」
「……げ」
「アロール……」
オネェにロックオンされた十歳児は、面倒そうな顔でクーレッシュの影から出てきた。呆れたようにため息をつく悠利を気にせず、物凄く面倒そうな顔でレオポルドを見ている。対してカミールは、仲間が出来たとちょっとうきうきモードだった。むしろ、女子のアロールの方がレオポルドに捕まるだろうと思ったのだ。
だがしかし。
「建国祭の衣装は、親が送ってくるから、それを着る予定です」
「あら、ご両親が見立ててくださるの?」
「一族全員やってくるんで、そのときに着る正装を持ってくるらしいです。ので、僕はそれで押し通します」
「それは素敵ね。後でどんな衣装だったか教えてちょうだいな」
「……解りました」
淡々と受け答えを終えたアロールは、面倒そうにしつつもレオポルドの願いを了承した。ここで嫌がると面倒なことになると思ったのだろう。そして、そんなアロールの言葉を聞いたカミールが、固まっていた。彼の味方はいなかった。
「それじゃ、後はカミールくんだけね?」
「じ、自分で財布と相談しながら見繕いますので!」
「心配しなくても大丈夫よぉ。あたくし、服飾関係にも知り合いが多いの」
「それのどこに安心しろと!?」
「こんな極上のモデルを逃がす手はないと思うのよね、あたくし」
「そこは俺の意思を尊重していただきたかったですね!」
にっこり笑顔のレオポルドが、カミールの腕を掴んでいた。やーだー!と言いたげにじたばたしているが、相手は見た目を裏切り戦闘能力の高いオネェである。未だ見習いのカミールが勝てるわけがなかった。
そして、カミールはそのままレオポルドに引きずられて出て行った。……今日の予定がもう終わっていることをしっかり確認した上での行動なので、気遣いはされている。されているが、オネェの情熱に振り回されるであろうカミールを見送って、一同は合掌した。
「見た目が良いってのも大変なんだねぇ……」
「後、適度にお金持ってるのもだと思う、オイラ」
「確かに」
お財布に余裕があって、さらに見目も極上というカミールは、きっとカモネギだったのであろう。大変だなぁと思う悠利達だった。
「……不在?」
「あ、マグお帰り。レオーネさんなら、カミール連れて出て行ったよ」
ひょっこりと姿を現したマグは、レオポルドがいないことを確認すると満足そうに頷いていた。自分だけさっさと安全圏に逃走したマイペースは、危険が去ったと判断して戻ってきたらしい。
「つーか、お前逃げ足速すぎだろ」
「油断大敵」
「いや、俺ら別に油断してねぇし。お前の危険察知がおかしいだけだろ」
「危険扱いされるレオーネさんもどうかと思うんだけどね……」
ははは、と困ったように笑う悠利の前で、マグとウルグスがいつものように軽快なやりとりを楽しんでいた。お洒落にかけるオネェの情熱を危険扱いするのはどうかと思うが、確かに慣れていない自分達が巻き込まれると大変だもんなぁと思う悠利であった。
なお、レオポルドの知人の店でトータルコーディネートを施されたカミールは、どこの貴族の御曹司かと思うほどにピカピカに仕上がるのだった。一応、お財布事情を考慮して割引価格だったらしいが、「儀礼祭典向きで使い回しがしにくい!」と叫ぶ程度には強かなカミールなのでした。
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