日常×技能=レベルアップ?
その日、
はいそこ、何を今更なことを言っているんだとツッコミ入れたい気持ちは解りますが、こらえてください。これが、異世界転移でレベルが存在することは解っていても、普段戦闘もしなければ、レベルの確認が必要になるようなこともしていない悠利なのである。今の今まで、自分にレベルがあることすら忘れていたぐらいだ。諦めて欲しい。
そんなわけで、自分のレベルや
――名前:ユーリ・クギミヤ
性別:男
種族:人間
状態:健康
レベル:5
HP:25
力:12
早さ:10
技:13
守り:10
運:∞
【料理】レベル65
【裁縫】レベル55
【調合】レベル52
【鍛冶】レベル52
【錬金】レベル∞
備考:従魔ルークス(エンシェントスライム変異種、
「アレ?レベルも
不思議そうに悠利は呟いた。そう、レベルが、上がっていた。レベルが上がりそうなことは全然していないので、何となく鑑定してみただけだった悠利は、素直に驚いている。
とはいえ、
問題は、レベルがどうやって上がったのか、である。
世間一般的に経験値稼ぎに該当するような行動を、悠利は一切行っていない。魔物の相手なんて御法度である。むしろ、運∞というステータスのおかげで、どこにいても危ないことは自然回避されている節がある。
とはいえ、使えば
むしろ、目を背けることが出来ない問題は、増えた
「主夫って
錬金の
だがしかし、主夫が
しかし、その程度で済ませられる問題とは異なり、錬金の
そもそも、∞とは何ぞや?という状態である。【神の瞳】さんだけならば、これが特殊な
というか、最初に錬金釜を使えるようになったとき、悠利の
原因その他は、考えても考えても解らなかった。そして、悠利は一つの結論を出した。
「アリーさんに相談しよう」
困ったときは、頼れる保護者に相談しようというのが、彼の通常運転だった。自分のステータスについて話が出来るのは、アリーだけである。何しろ、伝説の
というか、他の面々に伝えたら固まるに違いない。……約一名、知的好奇心が爆発しそうな学者先生を除いて。
そんなわけで、悠利は思い立ったが吉日と、アリーが書類仕事をしているだろう彼の部屋へと足を運んだ。コンコンとノックをすれば、
「誰だ?」
「アリーさん、ユーリです。ちょっと聞きたいことがあるんですけど、良いですか?」
「……今度は何をやらかすつもりだ」
がちゃりと開いたドアの向こうから現れたアリーは、物凄く胡乱げな顔で悠利を見下ろしていた。別に何もやらかすつもりなどない悠利は、困ったように眉をハの字にする。その顔を見てため息をつきながら、アリーは悠利を室内へと誘導した。
アリーがそんな反応をしてしまうのも、無理はないことだった。というのも、悠利にそのつもりはなくとも、アリーに質問して色々情報を手に入れた後に、八割ぐらいは何かをやらかしているのだ。悪気は一切無いが、とりあえず、予想の斜め上に突っ走るのはお約束だったりするのである。
「それで、何が聞きたいんだ?」
「実は僕、さっき自分のステータスを確認したんです」
「……で?」
「レベルがちょっと上がってたんですけど、戦闘してないのにどうしてレベル上がったのかなーと思って」
「……」
のほほんと悠利が問い掛けた質問に、アリーは目を点にした。そんなことか?と彼の顔が雄弁に物語っている。もっと斜めにぶっ飛んだ何かを聞かれる可能性を考えていたらしい。……その勘は別に外れてはいない。悠利は順番に聞こうと思っているだけで、最終的には斜めにぶっ飛んだ事実を伝えてくるのだから。
とはいえ、現段階でアリーに投げかけられた質問は、普通の範囲内だった。なので、自然と答える彼の表情も柔らかくなる。
「確かに戦闘で相手を倒すとレベルが一番上がりやすいが、
「なるほど。だから、料理
「……50以上の
「え?」
「気にするな。お前に普通は期待していない」
「アリーさん、それちょっとひどいです」
「規格外が何言ってやがる」
端的な説明は実にありがたかった。悠利は素直に納得して、にこにこと笑っている。しかし、そんな彼に伝えられた新事実。
しかし、悠利はその常識の外側にいるらしかった。どこかで増量補正でもかかっているのか、本来なら殆ど
拗ねたように唇を尖らせる悠利であるが、アリーの返答は素っ気なかった。だがしかし、この場合はアリーが正しい。存在自体が規格外と呼べる悠利である。本人がほわほわしていようと、手にした能力は世界最強のチート様なのだから。……当人にそれを活用するつもりがまったくないのが、実に悠利らしいと言えるが。
「じゃあ、次の質問良いですか?」
「まだあるのか」
「はい。僕、
「そんな珍妙な
「えー……」
「……
「はーい」
面倒そうなアリーに促され、悠利は自分のステータスを確認し、鑑定画面の
――主夫
家事全般を行う男性のこと。主婦の対義語。
この
なお、
「……アリーさん、ユニーク
「特定の条件を満たした者が手にする専用職だ」
「……主夫、僕の専用ユニーク
「……そうか」
ツッコミを入れるのに疲れたらしいアリーが、良かったなと全然気持ちのこもってない声で告げた。悠利もそれを半ば上の空で聞いていた。というのも、二人の脳裏を占めたのは「探求者に続いてまた専用
主夫という、別に特殊でも何でもなさそうな部分すら、ユニーク
解らなかったが、考えても答えなど出てこないし、頭が痛くなるだけなので、彼らはそれを忘れることにした。ユニーク
「アリーさん、実はもう一つ質問があるんです」
「……今度は何だ」
「実は、僕の錬金の
「……は?」
「MAXとかじゃなくて、∞なんです」
「…………またか!」
そろーっとアリーの顔色をうかがうようにして悠利が呟くと、アリーは一瞬呆気にとられた顔をして、次の瞬間天を仰いで絶叫した。なんてこったい再びだ。
だがしかし、別にこの件に関しては、悠利が何かをしたわけではない。悠利だって理由が知りたいくらいだ。普通にレベル1だったはずの錬金
そもそも、
「……心当たりは?」
「ないです」
「鑑定してみた結果は?」
「……無限の可能性を秘めています、って書いてあるんです」
「レベルの説明じゃねぇ……!」
「僕もそう思います……」
二人揃って脱力した。何故そうなったと全力でツッコミを入れたいぐらいだ。だがしかし、そうなっているのだから仕方ない。
そして、彼らが出した結論は、「とりあえず放置しよう」であった。口外しなければ良いだけの話だ、ということで落ち着いた。というか、考えてもどうにもならなかったのだ。
幸いと言って良いのか解らないが、鑑定系の
「何でお前は次々面倒なことばっかり起こすんだ」
「僕何もしてないです」
「意識的か無意識かの差だけだろうが」
「えぇえええ……」
そんなことないのになぁ、と悠利が呟く。アリーがそれに対して、嘘つけと小言を口にする。そんないつも通りのやりとりを続ける二人なのでありました。
とはいえ、日々頑張れば多少はレベルアップすると知った悠利は、うきうきしながら毎日の家事を頑張るのでありました。なお、
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