第21話 俺は何なんだ……

俺は負けたんだ……


誰もが倒せるはずの泥人形に……


それもひん死で死にかけの泥人形に……


俺はカンストしてるんじゃないのか?……


ステータスカードにはちゃんとなってたのに……


最初のモンスターにすら……


あの泥人形は裏モンなのか?……


そんなわけがない……それならもう被害者がいるはずだ……


俺は弱いのか?……




バシャッ!


「……んっ!!」


何だ?


目を開けると……


泥人形が瓶を持っていた


「…………」


「…………」


見つめ合う二人


俺が動かないでいると……


泥人形が近くにある水たまりに行き瓶を使って水を掬う……それを……


バシャッ!


「うわっぷ!」


俺の頭にかけた


「…………」


泥人形は俺を見て……首を傾げた


「…………」


この泥人形は何をしているんだ?

……俺を殺さないのか?


こいつもしかして……俺がしたことの真似して……


馬鹿にしているのか?


「…………」


泥人形は俺をじっと見る


くそ! ちくしょー! 俺はカンストしてるはずなのに! なのに! 最初のモンスターに負けて……


俺の真似して馬鹿にされる……


泥人形はまた水を掬いに行こうとしたので……


「……やめろ!」


「…………」


泥人形がこちらを向く


「……もうやめてくれ!!」


俺はモンスターに……懇願する


「…………」


泥人形は瓶を持ったまま何処かへと去って行った


「…………」


「……負けたんだ……俺は……」


「……くそぉ〜」


「……ぢぐじょ〜」


俺は仰向けのまま泣いた


「……おれはぁ〜! ガンストなんだぞぉ〜……何で! 何で何だよ〜女神様!! 俺なんで〜こんなに……


弱いんでずがぁーーー」


俺は顔をぐちゃぐちゃにして泣く


「……チーレム……無双……カンストしてればなれるはずなのに……俺はなぜ! 今、俺は倒れてるんだぁ!?」


「…………」


「……俺は倒れてるんだぁ……」


「……もういい……こんなの生きてけるわけないよ……異世界に来たら……楽しいなって今も思いたいよ……でも! 生きてけない!! 最初のモンスターにすらこれだ! 俺はカンストしてる!! 確かに見たからわかる……俺は……俺は……



……これ以上強くなれない……」


カンストとはそういうものだ……限界になっているからもうレベル上げは出来ない……


「……魔王なんて絶対無理だ……」


ごめんなさい……女神様……俺は魔王を見ることはこれからないでしょう……泥人形は誰でも倒せるモンスターらしいですよ? そのモンスターに俺は……完敗です。そして……見逃された


戦闘では殺すことより、生かして捕まえる方が難しいらしいです……抵抗されるから……でも俺は何も出来なかった……顔に水をかけられた……


あの泥人形は俺を、おちょくれるほど余裕だったらしい……


「……はぁはぁはぁ♪……へへへへ♪」


「……俺は弱いんだ……」


泥人形に水をかけられビショビショになり……

負けた悔しさから涙と鼻水でぐちゃぐちゃになり……


生きていける希望すら無くなり……笑った


「あははははははは」


悲しげな笑い声が森に響く


「お疲れ! 俺! 諦めよ! な!?」


「……無理だったんだ俺に異世界は……厳しすぎだ……なにもかもがどうでもいい!!」


「……門番ちゃん……あなたに救われたこの命……恩返し出来なくてごめんね?


……あなたの優しさや笑顔が……好きでした!」


「……串焼きのおっさん! 串焼き10本無理だったわ……最後まで冷やかしてごめん!!


……あなたの串焼き食べて見たかった」


「……ローブ男さん!! 忘れてました! ご飯ありがとう!!」


「……受付嬢ちゃん!! 勝てなかったよ!! 誰もがクリアして来た冒険者の試験……無理でした


……初めては俺がもらいたかった!!……間違えた……試験失敗の初めては俺が貰いました!!」


「……君に何もしてあげられなかったよ……虐待から……」


俺は弱いんだ……何も出来ねーし、デブスで……こんな俺この異世界から早めに消えた方が良いよな……


「……寝るよ……このまま……」


なんだろう……前にもあったような気がする……


「……おやすみなさい……皆んな」


俺は目を閉じた……


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