第20話 これが初戦だ……初戦だよ?

泥人形がこっちを見てる……


「…………」


俺と泥人形は見つめ合っていた? 目が無いからわかんない……


……てか泥人形がどんなのか聞いてないからわかんねーよ! うつ伏せで寝てるって言っといてくれよ! 後ろ姿泥まみれの人にしか見えねーから!


受付嬢ちゃん……


すると泥人形が……


「…………」


ズリッ……ズリ


と俺から逃げるようにほふく前進し始めた


「…………」


あいつもしかして……ひん死か?


ズリッ……ズリ


……全然進んで無いな……


泥人形は本当にギリギリなのか前に進めていない


「……これはラッキーなんじゃないか? ここまで弱ってるなら余裕だな……」


泥人形は俺に振り返り、すぐに逃げるように前進する


「…………」


俺は泥人形の前に立った


「…………」


泥人形と俺は見つめ合う


どうする俺……このひん死の泥人形を倒し冒険者になるか?


「…………」


ガサガサ


俺は瓶を取り出す


キュポーン


その瓶の中身を……


泥人形の頭に垂らす


「……!!」


泥人形は俺を見ながらビクッ! とした


だよな……受付嬢ちゃん……これでいいよな


受付嬢ちゃんは言っていた。これは試験だと……


ひん死の泥人形を倒し冒険者になったとしても後々もっと凄いモンスターは出てくるはず……


その時まぐれで冒険者になったとしても……


死ぬ


「……受付嬢ちゃん俺は……冒険者になるよ!」


瓶の中が空になった


俺は空の瓶その場に置き泥人形から5mくらいの位置に離れる


「……泥人形お前は俺の初戦闘の相手だ……いやあれはノーカン」


あの……ね? あれはなしよ……裏モンだぜ? ナシナシ


「……初戦だ! お前を倒し俺は冒険者になる!」


俺はファイティングポーズをとる


「……武器は使わないでやる……手加減ではない……ガチの殴り合いだ!」


剣使えないからとは言えないのだよ……


だって俺だぜ?


すると泥人形はゆっくりと立つ


自分の体を見て、瓶を見たりを繰り返す……そして俺を見た……目がないからわかんないけど


「……すまんな……俺はカンストしている……だから正直、お前は勝てない……だが勝負はそういう者だ!」


「…………」


泥人形は俺をじっと見る?


「……目が無いから怖……動きが読みにくそうだが、俺のスピードの方が速いはずだからいける!」


「…………」


「……来ないのか? ならこちらから行かせてもらおうか?」


俺は自分の出せるかっこいい声で言う


「……ふっ! 怖気ついたか? 俺の強さに……」


「…………」


じーー


「……うぅ……こちらから行かせてもらおう!」


「…………」


なかなか進めない……いやね? 言い訳じゃ無いよ? 相手がね? やる気ないのかわかんないけど、全然動かないの……攻めていいのかな?


「……冒険者になる為だ! 俺はカンストだー!」


俺は走り出し、 右腕を振り上げる!


「…………」


「うおぉぉぉーーーーー!!」


泥人形との距離が近づき攻撃範囲に入った


「…………」


「ぉぉーー!! 一撃で決めるぜ〜!!」


パンチが当たる瞬間……泥人形が消えた


なんだとー!! どこ行った!! ……ん!?


泥人形は屈んでいた


……今のを避けるか……だがもう一発……


泥人形は拳を握りしめ……俺の顎めがけ振り上げる


「避けら……ンンッ!!」


俺の顎にその拳が入った


ケイゴはある人気格闘ゲームの戦闘敗北シーンのスローモーションみたいに宙に舞い仰向けに倒れた


泥人形はそのゲームのアッパーのモーションを完コピしたような綺麗なフォームをしていた


「……まるで濁竜が昇っていくようだ……ガク」


泥人形のアッパー……ロッパー


俺の意識は暗闇に落ちた


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