十六点五本目 今は昔

「なんで由良さんと所長さんは苗字が違うのです?」


「え、どうして?」


「だって、親子でしょう?」


「違いますよ、保護者ではあるけど」


「え……………聞いても?」


「いいですよー」


「じゃあ、あなた方の関係は?」


「話すと長いんですけどね。ヴィーナスインパクトって知ってますよね?」


「もちろん。15年前に火星が爆発してキードの原料の鉱石が飛来したやつですよね。幸い、ほとんどが海に落ちて死傷者はなかったって」


「うん、そうそれ。実は、アレ、死傷者、出てるんですよね」


「え?!でもそんな話」


「公にはなってないんですけどね。それが私たち。それで父さんと母さんは死んじゃって、美浜は事故より前のことをほとんど忘れちゃったんです。私は特になかったんですけどね」


「それは、その」


「いいんですよ、知らなかったんですし」


「では、所長さんは?」


「あの人は父さんの同僚の人で。父さんと特に仲良くしてた人、らしいです」


「お仕事は何を?」


「科学者でした。天文学と地質学が合わさったみたいな、よく分からないけど、火星の研究をしてたんだって聞いてます」


「へー、そうだったのですか。所長さんは思いっきり体育会系ぽいのに」


「あの人ああ見えてめっちゃ賢いですよ。キード作ったのもあの人だし」


「うそぉ?!」


「ホント」


「えぇ、何にも知らなかったのです」


「それで、話は戻るけど、父さんにも母さんにも親戚がいなくて、それでおじさんが引き取ってくれました。おじさんには、感謝してもしきれないですよ」


「そんなことがあったのですか。すみませんでした、軽率だったのです」


「いいですよ。大体みんなに話してますし」


「お姉ちゃーん、りんさーん、進むよー」


「「はーい」」


「では行きましょうか」


「ええ」

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