十四点五本目 秘密のままの方がいいこともあるでしょう

「犬斗君は、その、何者です?」

「え?ただのバイトよ。一番仲良しで話してたのに、知らなかったの?」

「いや、そうじゃなくて。あの最後の方の、いつもとは全然ちがったじゃないですか」

「それは僕も気になったのです」

「さあ?昔なにかあったんじゃないの?何にしたって、どうでもいいでしょ。今は一所員として頑張ってるんだから」

「それは、そうかもしれないですけど」

「何の話してたんですか?」

「あ、犬斗君………」

「水を操るって、どこまでが水なのかなって考えてたのよ」

「あー、なんとなく透明だったり、ですかね。消毒とかして色々溶けてるであろう水道水も操れますからね。僕が水だと思いさえすれば、操れるんじゃないかな」

「え、そんなふわっとした」

「キードは、精神と密接な関係があるという研究結果も出てるし、そんなものよ。私の『穴』だって、壁にしか開けられないから、わざわざ自分の体を、自分の前と後ろを隔てる壁だと意識しているんだもの」

「そんな大変なことしてたのですか」

「このことに気付くのはなかなか苦労したよ。それに精神と関係してたから、あまりに精神力の弱い人では使えないし、極端に強すぎたり高ぶったりしたら暴走し」

「由良さん」

「あ、ごめん」

「いやいや、大丈夫ですよ。それにしても、キードがこんなに奥が深いものだったなんて驚きましたよ」

「ええ、僕もまだまだ勉強が足りないのです。今の話は、これからの捜査に応用できるかもしれないです」

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