十点五本目 内海榠樝という人

 私はいい子ちゃんで通ってきた。私は常に多数、上に従ってきた。当たり障りなく生きてきた。最大多数の幸福、上の指示こそが正義なのだ。そうだと教えられてきたし、そうだと信じてきた。多数、上の期待に答え安心させることが自分の使命と思ってきた。

 警察官になった後も変わらなかった。いわゆるエリートコースだった。トントン拍子に今の地位につき、新設課の指揮を任された。「期待しているよ」の言葉に打ち震えた。私は使命を果たせるのだと。

 でもちがった。期待はされていた。でもこれは世間のためのハリボテだった。対策をとれという世間を上手くやり過ごす事だけを期待されていた。ただ用意されたイスに座って、流されてくるそれっぽい書類に目を通す日々。これが私の使命なのだろうか。私の求めていた使命なのだろうか。こんなハリボテが私の正義だったのだろうか。

 もう分からないのです。

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