第四話~another side~ 治癒と防御
「気さくな風に話してたけど、明らかにあれは偽った顔だよね……ポジティブに考えても考えても悪い考えが残ってしまうなぁ」
あの謎の男性と別れてから30分が経っていた。
悪い考えが出てくる度にポジティブに考えるようにするが、一向に悪い考えが消えない。
「他の能力者の人達の中には私みたいな願いを叶えてもらう人が他にもいてるだろうなぁ。そんな人と会ったとき、あの人どうするんだろう」
まさか、まさか彼の気分次第で私が殺されてしまうのでは……と考える。
ただ、万が一、また彼によって動けなくされた時どうしようか考えてみる。
「“治”せば、あの筋肉の硬直をなんとか出来るかなぁ。でも状態異常とかそういう生ぬるいものじゃない気がするんだよなぁ」
先程からブツブツと独り言を言っているため、すれ違う通行人達に変な目で見られる。
なら、独り言を止めれば?って?
深く考えてる時は勝手に出てしまうのだから仕方ないよ、うん。
そういえば、彼は数名既に倒していたようだけど、この短時間でどうやって能力者に
こんなに歩いていても能力者に会わないのに……
もしかして……すでにこの辺りは彼にやられてる?
彼は他の都道府県に行くのかなぁ?
ここで大人しく待っとくのが得策かもしれない。
今からファミレスに行って休もう。
そう考えた時、さっき彼と会った時感じたものと同じ悪寒がした。
「まさか、能力者?」
目の前には複数名の通行人。この中に
咄嗟の判断で人気の無い近くの路地裏に向かった。
後ろから足音が1つ追ってくる。
路地裏に着くと同時に振り返るとそこに居たのは中学2年生位の男の子。
「あなた、何か用?」
「?能力者なんでしょ?戦わなきゃ」
目がおかしい。
多分だけどゲームに感化されてる子の目だ。
単独行動なのだろうか。
「ま、待って。あなた一人?」
「そうだよ?ゲームは1人で無双するのが楽しいでしょ!」
この子は罪の意識もなく私を殺りにくる。
そう思い、身構える。
だが攻撃する気になれない。
普通当たり前だろう。
殺さなければ殺されると分かっていたとしても、人を殺める様なことはしたくない。
自分より弱いと思える存在に対しては尚更だ。
「私はあなたと戦いたくないの!」
「ならどうしてこのゲームに参加したのさ。このゲームは殺し合いなんだよ?早く僕の生贄になってよ!」
男の子は手をこちらに向け、能力を使った。
「熱い!危ない……!どこも燃えてないよね?」
「もー、戦う気ないなら一方的にやられてよー」
手から炎を出してきたのだ。
ありがちな文字だろうなと予想がつく。例えば“火”とか“炎”とか。
ということは、火を“治”められないだろうか。
「もういっちょ!火だるまになれ!」
男の子の手から炎が出ると同時に“治”めようとする。
が、神様が言った制限分しか能力は発動しないのか炎は真っ直ぐこちらに向かってくる。
死ぬ!
そう思った時、神様のある言葉を思い出した。
『ここでいう病の大半の意味は、一般的な病というより、汝ら人間がするゲームとやらでいう状態異常のようなもののことだ』
つまり、やけどは状態異常に含まれているから“治”せる!
それに気づくやいなや、炎に当たると思われる胸元に“治”す矛先を向ける。
すると、炎は当たっているのに身体に痛みは感じられなかった。
唯一感じたもの。それは恥ずかしさだった。
「わぁお。これは僕も予想してなかったね」
「み、見ないで!」
つい反射的に頬を叩いてしまった。
そう、身体は無傷でも
服が燃えれば、無傷な身体が露になる。
「次見たらどうなっても知らないよ」
とりあえず脅す。
一応脅しの効果が効いているのかこちらを向かないまま男の子は言った。
「戦う気がないお姉さんなんて怖くないね」
怖いからこっち向かないんでしょ。
いや、恥ずかしいのかな?とか考えながらこの状況に困る。
なんとかこの男の子を対処しても家に帰れない。
それどころか外で上半身裸のまま過ごさなければいけなくなる。
「仕方ないかぁ。できるだけしたくなかったんだけどなぁ」
「え、何する気?場合によっちゃそっち向くよ?」
もうどうでもいいや、と思い返答せずに、男の子に集中する。
したくなかったけど、今は仕方ない。
この子を“治”めよう。
「…………」
「右手あげて」
男の子は何も言わずに右手を上げる。
うまくいっている様だ。
「とりあえず、私が着れるシンプルな服を買ってきて。お金は渡すから」
「…………」
ズボンの後ろポケットから財布を取り出し、1500円を渡す。
男の子は無言で服屋の方向へ歩いていった。
「はぁ……とりあえずこれで助かる。でも、こんなところほかの人に見られたらなんて言えばいいんだろ……」
私はただ、男の子が服を買って来るまで、誰もここを通らないことを願うしかできなかった……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます