第六章

第六章

東駿河高校、教室。

その日は進路希望調査というものが配られた。

と言っても、普通高校とは違い、大学の名前を必ず書けというものではない。もちろん希望する就職先が書かれていれば、就職という書き方も十分あり得る。

明子は、実家のパン屋を継ぐため、製パンの専門校にいくと書いた。

繭子は、通信制の大学へ行くと書いた。

伝心は、東大とは書かず、文芸学科に行くと書いた。

紫穂は、少し迷っていたが、できることなら、仏教系の学部に行きたいと書いた。

やがて時間がきて、それぞれ調査書を教師に提出した。


授業が終わった後の事だった。

教師「大杉君、みんなが帰ったら、校長室へ来てくれる?」

祐太郎「あれ、佐藤君の補習があるのでは?」

教師「今日は取りやめだって。佐藤君、ごめんね。」

紫穂「どうして取りやめなんです?」

教師「取りやめは取りやめよ。何でも、大杉君のことで深刻な話があるみたい。」

紫穂「困ります。今日もわからないことがあって、宿題も提出しなきゃならないのに。」

教師「でも、今日は、大杉君のほうを優先してあげてちょうだい。補習は明日やってくれると思うわよ。」

紫穂「でも、忘れられたらどうしよう。」

教師「忘れることはないと思うけどね。」

紫穂「わかりました。じゃあ、終わってから、補習に行きます。それまで教室で待たせていただきます。僕にとって、この授業は本当に大事なものですから。それに、僕には時間がないので。」

その一言がやけに生々しかった。時間がない、どういうことなのか。

教師「待っててもいいけど、下校時間になったら、帰ってよ。でないと、校則違反になるわよ。それに、佐藤君だけが特別じゃないんだから。」

紫穂「そこまでかかるんですか?」

教師「ええ、大杉君がしっかり話をしてくれるまではね。」

祐太郎は、紫穂を恨めしそうに見る。

教師「じゃあ、ほかの皆は気を付けて帰ってね。明日も元気に学校に来てちょうだい。今日はこれでしまいね。」

ほかの三人は手早く帰り支度をし、すぐに帰って行った。

祐太郎「佐藤君ごめん。すぐに話をつけてくると思うから。少しここで待ってて。」

紫穂「いえ、構いません。ここで待ってますから。」

祐太郎「ごめんね、ごめん。まったく、校長も変なところに目をつけるよね。」

紫穂「そんなこと言わないで、早く校長室に行ってきてくださいよ。」

祐太郎「うん、ごめん。」

と、立ち上がって、校長室にすっ飛んで行った。

残った紫穂は、ノートと参考書を出して、何か書き始めた。


校長室

祐太郎「失礼します。」

と、ドアをたたく。

声「入り給え。」

祐太郎「は、はい。」

と、こわごわドアを開けて、校長室に入る。

祐太郎「校長先生、いったい何のことでしょうか?」

土屋校長「祐太郎君、この進路希望調査、どういうつもりなのかな?怒りはしないから、隠さずに話してごらん?」

そういって、土屋校長は、進路希望調査書を祐太郎に見せた。大杉祐太郎という名前は書かれていたが、進学欄にも就職欄にも全く文字が書かれていない。

祐太郎「ああ、すみません、、、。まだ、どこの大学へ行こうかとも決まってないんです。」

土屋校長「しかしね、大学受験まで、あと、半年もないぞ。希望する就職先もないのかい?」

祐太郎「ありません。まだ決まってないんです。」

土屋校長「じゃあ、校長先生と一緒に今から考えてみようか?君の成績はさほど悪いほうでもないし、これまでに遅刻も無断欠席もしていないから、かなり優位な大学が、望めるのではないのかな。」

祐太郎「入れるんだったら、どこでもいいです。」

土屋校長「それではだめだよ。大学というのは、今度こそ本当に学びたいことを、勉強する場所なんだから。それに、本当にやりたいことがはっきりしていないと、大学が決まらないばかりか、就職先も決まらないよ。」

祐太郎「やりたいことなんてないですよ。」

土屋校長「そんなこと言わないでさ、若いんだから、思いっきりやりたい学問に打ち込むのも悪くないんじゃないか?」

祐太郎「いえ、そんなこと、僕にとっては、必要ありません。だって、したいことがあっても、健康でなければできないでしょ。」

土屋校長「まあ、体が健康なのに越したことはないが、そうでなくても今の大学は、いろんな支援設備もあるし、それを利用するのも悪くないよ。」

祐太郎「そういうものがあっても、僕みたいなものは、はじき出されて当り前です。僕みたいな人は、毎日をやっているだけでも迷惑な存在になるのですから、社会なんて、出ていくことは到底できませんよ。」

土屋校長「そんなことはないよ。誰でも教育を受ける権利というものはあるよ。」

祐太郎「そんなものはありませんし、僕は持つ必要もありません。」

土屋校長「では、この学校を出たら、何をするつもりなのかな?」

祐太郎「ええ、もう決まっています。」

土屋校長「何をするのかな。」

祐太郎「言わなくてはいけませんか?」

土屋校長「そうだよ。だって、高校は、希望する進路へ確実に送り出してやるのが仕事なんだから。それをしないなんて、職務怠慢になるだろう?高校でおしまいなんて、絶対ないんだよ。」

祐太郎「でも、本人に強い意志があれば、終わりにすることもできますよね。」

土屋校長「そんなことはない。与えられた命があるのなら、寿命が尽きるまで精一杯生きなければいけない。」

祐太郎「終わりにすることだってできるでしょう?」

土屋校長「できるかもしれないが、本来それはやってはいけないことなんだよ。」

祐太郎「じゃあ、じゃあ、どうしたら、、、。」

土屋校長「だから、希望する進路というものをしっかり考えよう。わからないことが有れば、教えてあげるから、何とかして前向きになれる方法を一緒に考えていこうか。」

祐太郎「前向きなんていらないのに。」

土屋校長「どんなことでさえ、前向きに考えなければ、神様を裏切ることにもなるんだよ。」

祐太郎「要らないですよ、、、。そんなの。それよりも、早く死なせてほしいですよ。正直に言えば。」

土屋校長「どうしてそんなにいけないことを考えるのかい?」

祐太郎「だって、楽になるには、それしかないですよ。僕、何も悪いことをしていないのに、なんでこんなに苦しまなければならないのか、そればっかり頭に浮かんできて、それを消すには、やっぱり死ぬしか方法はないんじゃないですか。それに、親だって、いつまでも生きているわけではないんですから、自殺が一番の親孝行だって何度言われたことでしょうか。」

土屋校長「祐太郎君ね、君は確かに苦しいのかもしれないが、死ぬのが一番の親孝行というのは間違いだよ。」

祐太郎「なんでですか。だって、僕は、今でこそ学校に行けてるからいいものの、ここから出たら、ただの精神障碍者ですよ。先生だって、僕みたいな障害は社会的に立場が低くて、何もよい評価なんてもらえないの知ってるじゃないですか。それに、親といつまでも暮らしていれば、いつまでも甘えてるなという言葉しか出てこないのは当たり前ですよ。そういう不利な条件ばかりが出てきて、悪い評価しか出てこないのに、なぜ、僕たちは生きていなければならないのですか?そういう台詞しか出てこないのであれば、さっさとこの世界から退散してもいいんじゃないですか?寧ろ、そのほうが邪魔者がいなくなって、生産性も上がり、偏見もなくなるわけですから、幸せになれるんじゃないでしょうか。それをしようとしているのに、なぜ止めるんですか。もう、邪魔しないで死なせてくださいよ!世の中には、生きている必要がない人間だっているんです。そういう人間は、もう来ないでってはっきりしているのであれば、その通りにするべきでしょう。それなのに、なぜ、生きろというのか、僕にはわかりません。だって、みんな親もお金も限界があり、自分で稼げないのなら死んでしまえとさんざん言いました。でも、一方では、生きていなければダメだと言います。なんで相反する二つのことがまかり通ってしまうのでしょう。どっちか一つにすればいいのにと何度思ったことか!この矛盾した二つのことばがあるせいで、僕がどれだけ苦しんできたか、校長先生にはわかるはずもないでしょうよ。そうやって、高い地位にいる方には絶対にわかるはずがありませんよ。だから、今更病気になった理由なんて語りたくもありません。本当のところ、こういう人間が生きているのは、かえって国家をダメにしてしまうんじゃないですか。そうならないようにするには、自殺が一番ですよ。僕みたいな人間は、消えてしまうのが一番なんだ!それを助けようとしている人というのは、美しい人に見えますが、障害者本人にとっては、ただ余計なことを言っているだけで、かえって苦しめていることを忘れないでください!」

土屋校長「祐太郎君。」

祐太郎「何ですか。」

土屋校長「そこまで言うんだったらね、君の親御さんが、なぜ、いままで君を生かしてくれたのか、聞いてきてご覧。それを作文としてまとめてきなさい。これが宿題だ。明日までに書いて、提出しなさい。」

祐太郎「そんなの必要ありません。親には、確かに申し訳ないことをしました。でも、親が今ここで生かしているせいで、僕が世間的に悪い評価を受けているから死なせてくれと、一生懸命訴えても、許してくれないから、かえって邪魔になるだけで、嫌な存在なだけです!」

土屋校長「親御さんにとっては、そうじゃないかもしれないよ。」

祐太郎「いえ、そんなことありません。僕から言わせてもらえば、精神障碍者に仕立ててしまった、責任をとってもらいたいほどですよ!だって、どうせ一人で生きていかなければならない時代が誰でも必ず来るでしょう!その時の為に皆さんお金をためてて、それを得るために働いているのですよ!それができなかったらどうなるのか、火を見るよりも明らかじゃないですか。それができない人間なんですから、その時が来るまでにこの世から出ていって、何がおかしいのですか!何も間違ってはいませんよね?理論的にいえば!でもそれを実行しようとしたら、みんなきれいごとを言って止めようとして!ああ、もうやめてください!もう僕の前から消えてください!皆、邪魔しないでください!もし、それが嫌なのなら、この世に一人だけで生きれるようにしてください!」

土屋校長「そうかそうか、それだけ、君が受けた心の傷は深いということだな。」

祐太郎「ええ、もちろんです!だから、もうこの世とはさようならしていいんじゃないですか?自殺予防とか、そんなきれいごと言っているけど、それは自殺志願者にとっては一番の迷惑であることをもっとかんがえてほしいものです!」

と、その時校長室のドアをたたく音。

土屋校長「何だね、どうしたのかな?」

ギイと音がしてドアが開き、紫穂が入ってくる。

紫穂「校長先生、佐藤です。あと30分で下校時間になってしまうのですが、その前にどうしても聞きたいことがあって、、、。」

ぎょっとした表情をする祐太郎。

土屋校長「ああ、まだ、祐太郎君との話が終わってなかったのだが、、、。」

紫穂「そうですか。ごめんなさい、ちょっと立ち聞きしてしまいました。でも、他言はしませんから、安心してくださいね。だって、他言したら、また止めに入ってこられて、祐太郎君にとって、苦しみを増やしてしまうことになるから。」

土屋校長「二人とも、確か同じ駅だったよね。」

紫穂「はい、僕は歩いて帰りますが、祐太郎君は電車でしょう。」

土屋校長「まあ、生徒個表によればそういうことになっている。しかし、今日はすまないが、一緒に帰ってやってくれないだろうか。」

祐太郎「校長先生、また余計なことを。」

土屋校長「いや、生徒を、しっかりと立ち直らせるのも、教師の仕事だよ。祐太郎君の話の通り、確かに働いて、賃金で生活している。それをするためには、生徒を立ち直らせることもしなければいけないんだ。それをしなかったら、校長として失格になってしまうからね。」

祐太郎「何を言われたって、僕の気持ちは変わりませんから。」

土屋校長「祐太郎君、今日一日だけ、それをやってみてごらん。実行するのは君が決めてからでいいが、それをするのは、宿題を提出してからにしなさい!わかったね!」

祐太郎「はい、わ、わかりました、、、。」

土屋校長「じゃあ、もう下校時間になってしまったので、今日はこれでおしまいにするが、何度も言うようだけど、決行するのは、宿題をきちんとしてからにしなさいよ。」

祐太郎「わかりました!」

土屋校長「もうよい。帰ってよろしい。」

紫穂「じゃあ、一緒に帰ろうか。」

祐太郎「わかったよ。失礼しました、、、。」

紫穂「また、補習をつづけてくださいね。校長先生。僕はそれを楽しみに学校へきているようなものですから。」

土屋校長「わかったよ。佐藤君。」

二人、軽く敬礼して校長室を出ていく。

夜の道。

学校から出て、駅に向かって歩いていく紫穂と祐太郎。

紫穂「どこか、入りましょうか?」

祐太郎「いいよ、駅に行ったら、すぐに電車に乗るよ。」

紫穂「僕も電車で帰りますよ。今日は。」

祐太郎「でも佐藤君の駅は、急行が止まらないよね。同じ電車で帰るのはできないよね。」

紫穂「だったら、一度急行に乗って、祐太郎君の駅で出て、また戻ります。」

祐太郎「なんでそんなことするの?」

紫穂「電車に飛び込もうとしてるんじゃないかなっておもったから。」

祐太郎「な、なにを言っているんだ。」

紫穂「校長先生が意図したのは、そういうことじゃないですか?」

祐太郎「佐藤君、、、。」

紫穂「図星でしょう。だったら、思いっきり話してしまったほうがいいですよ。だから、どこかに入ろうかと言ったんです。取り合えず、今日は決行する日にはなれませんね。」

祐太郎「そうかあ、、、。無理かあ、、、。」

紫穂「入りましょうか。」

と、近くにある、古ぼけた喫茶店を指さす。

祐太郎「すごく古い、、、。」

紫穂「いいじゃないですか。こういうところですから、だれも来ませんよ。」

確かにそうだと思えるほど、古い建物だった。

祐太郎「そうだね。」

紫穂「入りますか。」

二人、その古ぼけた喫茶店に入る。


喫茶店。

紫穂がドアを開けると、確かに客は誰もおらず、バロック音楽が流れる中、年を取ったマスターが一人いるだけだった。

マスター「いらっしゃいませ。」

紫穂「あの、奥の席、いいですか?」

マスター「どうぞ、空いてますよ。」

紫穂「じゃあ、お借りします。」

祐太郎「おかり、します。」

二人、一番奥の席に座る。窓から、美しい夜景が見える。

マスター「ご注文は何ですかな?」

紫穂「僕は、紅茶で。コーヒーは少し苦手なもんですから。祐太郎君は、」

祐太郎「僕はコーヒーでお願いします。」

マスター「コーヒーと紅茶ね。じゃあ、しばらく待っててね。」

紫穂「はい、わかりました。」

祐太郎「お願いします。」

マスター「わかりましたよ。」

と、足早に、席を後にする。

紫穂「ごめんなさい、校長先生と話していたの、立ち聞きしてしまって。でも、祐太郎君も大変だったんですね。それでは本当に、おつらかったでしょう。」

祐太郎「まあ、今更口に出して言うほどでもないけど、、、。」

紫穂「ううん、それでも、顔に出てますよ。大変苦しんだなって。前の学校で、酷いことされたでしょう。」

祐太郎「まあね。でも、それに同情されても、困るだけだけど。」

紫穂「そうですよね。他人にはどうにもできないことですから。でも、ご自身で決めることもできないくらいのところまで行ってしまっていますよね。」

祐太郎「そうなんだ。」

紫穂「どこで躓いたんです?」

祐太郎「うーん、やっぱり進路指導かな。ほかの生徒さんが、望んていた進路とは全然違ってたから。」

紫穂「ああ、例えば、みんな国立を目指していたけど、一人だけ私立だったとか?そうですよね、本来行きたい大学があると、そこの付属高校へ行く人が多いですからね。」

祐太郎「うん。でも、僕はお金がなくて、そこへいけなかったから、地元の公立に行ったの。」

紫穂「そこでいじめにあったとか?」

祐太郎「うん、生徒から直接いじめられたわけじゃないよ。でも、先生が、僕を国立に行かせようと必死だったんだ。もう、放置しておいてくれればいいのにさ。全員国立に行かないといけないみたいで。そのために、国立でないと仕事にありつけないという手を使った。仕事にありつけなかったら、もう、ホームレスか、売春婦しかないって、怒鳴ってた。そして、親が先に死んで、その時に仕事にありつけていなかったら、もう、何も生活できないから、先に死んでしまえって、毎日のように言われた。ある時は授業をしているときに、僕に校舎から飛び降りろとも怒鳴った。その怒鳴り声が、毎日毎日聞こえてきて、先生がいないときでも聞こえてきて、もう、我慢できなくなってしまって、家じゅうの物を壊した。もう苦しくてたまらなかったから、病院に連れて行ってもらって、病院の先生は、それを幻聴と言った。そして僕は、そのまま、措置入院となった。」

紫穂「ああ、なるほど。そうですか。」

祐太郎「気が付くと、もう学校は退学になってたよ。幸いすぐに帰ってくることはできたけど、近所の人も、親戚も、みんな僕のことを、家族を苦しめる悪人としてしか見てくれなくなったんだ。そして、僕に与えられたのは、生徒手帳ではなく、精神障碍者手帳だった。それをもって歩くようにと医者に言われた。でもね、先生に言われた言葉がいつまでも消えなくてさ、思い出せばまた家の物を壊したくなるんだ。幸い、うちの家族は、何も言わないけど、周りの人からは、ただの悪人としか見られないで、あの子は、仕事もしないで、親を困らせているダメな子だという。だから、必然的に死のうと思ったんだ。」

紫穂「じゃあ、どうして、東駿河に来たんです?」

祐太郎「いやあ、病院の先生が、もう一度学校生活をやり直せば、症状も軽くなるのではないかと、家族に言ったようで、、、。」

紫穂「でも、大間違いだったと。」

祐太郎「そうだよ。だから早く死にたいの。僕なんて、結局生まれてこないほうがよかったんだよ。」

紫穂「そうですかね。」

祐太郎「だってそうじゃないか。」

紫穂「まあ、祐太郎君のいうことも、確かに事実ではあると思いますよ。だったら、徹底的に悪人となってしまえば?」

祐太郎「どういうこと?」

紫穂「それを商売にするんです。」

祐太郎「商売?売れるものなんかないよ。」

紫穂「経験というものを得たじゃありませんか。やっぱり、悩みのあるものが、悩みを解決するにあたって、一番役に立つものは経験者の助言以外役に立つものはありません。」

マスターが、コーヒーと、紅茶をもってやってくる。

マスター「いいこと言うじゃない。ある映画で、不良の気持ちがわかってあげられるのは、不良しかないと言っていたことがある。そこまで辛い思いをしてきたんだったら、不良たちの辛い思いをとことん聞いてやることもできるだろう。実際、そういう経験をもとに、カウンセリングとかやってる人を、おじさんはたくさん知っているよ。」

祐太郎「でも、そんな能力、果たしてあるでしょうか。」

マスター「養成講座というものがある。そこで訓練すればいいじゃないか。」

祐太郎「家族が、許してくれるかな。」

紫穂「いや、何かしたいと言ってくれるのを待ってるのかもしれませんよ。」

祐太郎「そうかな、、、?」

マスター「とにかく、一歩踏み出すことを恐れるなよ。はい、コーヒーと紅茶ね。」

と、二人の前に、器を置く。

紫穂「ありがとう。あ、あれ、、、?」

思わず、額に手をやる。

祐太郎「どうしたの?」

紫穂「いえ、なんとなく痛いなと。でも、大したことないですよ。」

祐太郎「そう、ならいいけど、、、。」

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