第五章
第五章
東駿河高校、教室。
明子、伝心、祐太郎、紫穂がいる。
明子「繭子さん、来ないわね。」
伝心「まあ、大方そんなことだろうと思ってたよ。」
紫穂「もしかして、本当に退学になってしまったのでしょうか。」
伝心「まあ、ライバルが一人いなくなって助かるには助かるけど。」
祐太郎「でも、どこか、かわいそうな気もするよ。」
紫穂「本橋さん、そういう考えはいけないんじゃないですか。」
ガチャンと、教室のドアが開く音。
繭子「あーあ、今日も遅刻しないでよかったわ!また遅刻したら、本当に退学になるもの!」
明子「繭子さん!」
祐太郎「無事に、試験に受かったの?」
繭子「ええ!幸い、二けた以上点数が取れたから、退学は免れた。」
明子「よかった!また一緒に勉強ができれば、寂しくないわ。」
繭子「それにしても、こんだけ必死になって、勉強したのは初めてだったわよ。なんせ、家族は退学になったら勘当だというし。まあ、勘当されたら、すぐにあっちへ逝けばいいやと思ったんだけど、それは、絶対許してくれないだろうなって、考え直した。」
明子「そうよ。あたしたちは、これまでも一緒に馬鹿をやってきたんだから、いなくなったら寂しいわ。」
繭子「そうよね。ごめんなさい。」
祐太郎「僕も、繭子さんがいなかったら困るなあ。だって、繭子さんに会いに来たいから学校へ行ってるようなもんだから。」
明子「まあ、私より、繭子さんのほうがきれいだしねえ。」
確かに繭子は、容姿も美人であるから、それも理由の一つかもしれない。
祐太郎「そういう理由ではないよ。」
明子「じゃあ何なのよ。」
祐太郎「まあ、それはその、、、。」
繭子「それから、佐藤君。」
しかし、反応はなかった。
繭子「佐藤君。」
紫穂「は、はい。」
繭子「私、ひどいことしちゃって、本当にごめんね。あの時にぶちまけた教科書とか、後でちゃんと弁償するから、いくらかかったのか言ってね。」
反応はない。
祐太郎「どうしたの?」
紫穂「は、はい?」
繭子「だから、あの時、カバンを放り投げちゃったでしょ?きっと、教科書はとっくにダメになってるわよね。だからそれ、弁償するから、いくらかかるか言って頂戴。」
紫穂「ああ、とっくに出版社に電話してしまいました。もう、支払いも済ませてしまったから、弁償はしなくていいです。」
繭子「それじゃあ、ダメよ。だって、大事な勉強の道具をダメにしたんだから。」
紫穂「気にしないでいいですよ。お金をもらったとしても、使い道がないので、かえって困ります。」
祐太郎「かえってこまるかあ。紫穂さん、本当に欲がないんだね。」
紫穂「まあ、教科書を調達しておくのは当たり前のことですし。」
伝心だけが、会話に加わらなかった。
と、がらりとドアを開けて、教師が入ってきた。
教師「さ、授業を始めようか。みんな揃ってよかったわ。やっぱり、五人そろって卒業してもらわないと、私たちも悲しいもんね。繭子さん、これに懲りてしっかり勉強してね。」
繭子「はい、すみませんでした。これからは、真人間になります。」
教師「いつもそうだといいのにね。まあ、いい薬になったことは確かね。じゃあ、教科書の170ページを出して!」
繭子は、教科書を出せない紫穂の机に、そっと教科書の半分を置いてやった。
一方、その反面、伝心は、教科書など開かず、ひたすらに予備校の教科書と格闘するのに夢中になっている。
教師「本橋君。」
返事はない。
教師「その、教科書ではなくて、別の教科書を出してくれないかな?」
なおも返事はない。
教師「本橋君!」
伝心「教科書なら、これですよ!」
予備校の教科書を指さす伝心。
教師「違うでしょ、それは予備校のテキストブック。教科書は、こっち!」
伝心「僕にとって、そんな物は教科書ではありません。そんな教科書に載っていることなんか、もうわかり切っていることです。そんな物を利用して何になるというのですか。それをするより、大学受験の準備をするほうが先でしょう。」
教師「でも、学校は、進学することも大切ではあるけれど、それ以外でも大切なことがあるのよ。だから、いくら簡単すぎるかもしれなくても、しっかりと授業は受けましょうね。」
伝心「結構です。学校なんて、何も役に立ちはしませんよ。学校でもうわかり切っていることを子供に教えるみたいな講義を聞いている暇があったら、受験勉強したほうが先ですよ。」
教師「それは違うわ。本橋君。学校の授業というのはね、受験勉強と違うものを得るためにやるってこともあるのよ。」
伝心「何を得るというのです?高校なんて、大学に入るための通過点でしょう?それに手を入れたら、本当にやらなければならないことをする時間がなくなって、かえって必要なものが得られないでしょう。それだったら、本当に必要なものをやったほうがいいと思いませんか?」
教師「じゃあ、本橋君、あなたはなぜ、高校に来たの?なぜ、この高校を選んだの?」
伝心「だから、大学にいくには、高校にいかなきゃなりません。海外には、バカロレアのような、それに受かれば大学に誰でも行けるという制度もあるけど、日本では必ず高校に行くことが求められる。本来は、高校の勉強なんて、しっかりとした大学にいくためには必要ないんですけど、高校に行かなければなりませんよね。だから、その負担がなるべく少ないと思われるこの高校を選びました。」
祐太郎「だったら、バカロレアを受ければ?日本にも、大検という、バカロレアと同じものがあるよ。」
伝心「はい、海外ではバカロレアに合格して大学にいっても何も恥ずかしくありませんが、日本では、そうじゃありません。日本で、バカロレアに代わる大検は、とったとしても、高校へ行っていない、即ち学力の低いものとみなされます。だから、高校に行っていないと、大学に入ったとしても、馬鹿にされて本当にやりたい勉強ができなくなってしまうので、それでここに来ました。」
教師「今の話、校長が聞いたら、きっと悲しむわ。それなら初めから名門の進学校にいけばよかったじゃない。」
伝心「いえ、そこには行きたかったけど、いけなかったんです!それは僕の学力がなかったせいです。だから、それを補うためにも高度な受験勉強が必要だ。でも、レベルの低い高校は、余計なことばっかり注目されて、肝心の勉強に専念できる環境ではありません。」
祐太郎「例えば?」
伝心「はい、レベルの低いところは、生徒を黙らせたり、スマートフォンを取り上げるだけで、授業が終わってしまって、肝心のものは何も得られないと聞いています!それに、生徒が汚い声で動物園のごとくしゃべっているのを聞きながら授業を受けるのは、とても耐えられるものではありません!」
教師「そうねえ、確かに、中流の学校ってのは、本橋君のいうとおりになるのよね、、、。その対策をどうするかは、私たちにも正直に言えば、答えが見つかっていないのよ。」
伝心「だったら、受験勉強に専念してもいいんじゃないですか?この国では、バカロレアのような試験も存在しないし、学校もよいところと悪いところとで落差がありすぎるので、本当に受験勉強をさせてくれるような環境は全くありません。」
教師「でも、受験勉強だけが、すべてじゃないわ。」
伝心「そうでしょうか?だって学校にとって一番うれしいのは、上級学校へ進学させることじゃないですか?」
教師「少なくとも、うちの校長は、そういうことは思わないと思うわよ。」
伝心「でも、よほど印象に残る生徒であれば別として、この学校に名を遺すのであれば、やはり、上級学校に進学することでしょう。だって、歳が変わるごとに、怒涛のように新しい生徒がやってくるんだ。それを繰り返していけば、一人一人の生徒のことなんて、忘れていきますよ。そのような状態で、学校の名誉を上げることなどできますまい。この世で真実を示せるのは、数字だけでしょう。だから、少しでもこの学校の名をあげて、生徒を獲得していくためには、やはり上級学校に進んだ人数を増やすしか、方法はないんですよ。」
教師「本橋君、あなた、何か勘違いをしていると思うわ。それ、気が付かないと、大人になってから絶対後悔するわよ!」
伝心「僕はしません、良い大学に入れば、この苦しみも消せます。同時に苦しみに打ち勝つ力も身に付きます。」
教師「本当にそうなるとは思わないけどな。」
伝心「いえ、そうなります!というより、そうならなければ、幸せは得られません。なぜなら、日本では、少しでも他人より上の立場に立たなければ、幸せは得られないようにできています。他人より上になって、高い評価をもらわなければ、生活だってできないし、文化的な活動に従事することも許されない。そのためにはいまから、良い大学にいっておかなければ、何も始まらないんですよ!」
教師「ちなみに目指しているのは?」
伝心「決まってますでしょ。東京大学!」
教師「東大ねえ、、、。果たしてそれが役に立つのか立たないかはわからないけど、せいぜい頑張ってやって頂戴!じゃあ、みんな授業を始めるわよ!」
ほかのものは静かに教科書を開く。
教師が話しているのを尻目に、東京大学の過去の入試問題に取り組んでいる伝心。
伝心の自宅。とても東大を受験する人間が住んでいるとは思えないほど、みずぼらしい家だった。
伝心「ただいま。」
と引き戸を開けると、
母親「おかえり。今、郵便が来ていたよ。」
と、一枚の茶封筒を渡す。
伝心「ありがとう。」
そっけなく、それを受け取る伝心。
母親「模試、受けたの?」
その袋には、「模擬試験結果通知書在中」と書かれていた。
伝心「受けたんだ。」
母親「また勝手に?」
伝心「仕方ないだろ。受験前なんだから。もし、合格して東大に行けたら、こんなみじめな生活をしなくてもよくなるんだから、しばらくの辛抱だと思ってくれ。」
母親「無理して受けなくてもいいのよ。」
伝心「でも、こうしなきゃ、うちの家は救われないよ。お父さんだって一生懸命働いてくれたのに、死んじゃったでしょ。東大に行って、いい会社に入れば、うちの家だって少し楽になるんだよ。だから、もうしばらく辛抱すればと思って!」
母親「あんた、自分の体の事も考えなさいよ。」
伝心「ああ、それは気にしないで。若いんだもん、まだまだやれるさ。」
母親「あんまり寝てないでしょ?体に悪いわよ。せめて、模試が終わったんだから少し休んだら?」
伝心「そんなこと、必要ないよ。」
母親「お父さんそっくり。そういうところ。」
伝心「だって、うちはそもそも、借金をしなければやっていけない家庭なんだから、そこから脱却するためにいい大学に入ろうとしているんだ。そのどこが悪いのさ!自分の始末くらい自分でするから、手出しはしないでくれ!」
母親「困ったものね。悪いところが親に似るものね。」
伝心「もう、時間がないから、勉強させてくれ。邪魔ばっかりしないでくれよな。」
と、すぐに自室に引き上げてしまう。
自室に入った伝心は、鋏を出して、封を切ってみた。
中には、一枚の紙が入っていた。紙には、模試の結果が書かれていたが、得点は三割程度しかとれておらず、志望大学である東京大学への合格の可能性は、わずか、10パーセント程度としか書かれていなかった。つまり、可能性は限りなくゼロに近いということだ。
伝心は、机の上に突っ伏して泣きはらした。さすがにその日は、勉強する気になれなかった。
母親「伝心、ご飯できたけど、食べる?」
伝心「すぐ行く。」
すぐに食堂に移動する。
食堂
食事といっても、ご飯と、インスタントのみそ汁だけの、粗末な物であった。
母親「ごめんね、これくらいしか出せるものがなくて。」
伝心「いいよ。」
母親「どうしたの?なんでそう元気がないの?」
伝心「いや、大したことないよ。」
母親「あんまり無理はしないでね。」
伝心「今日も夜勤?」
母親「そうよ。」
当然のように言う。
伝心「そうだよね、看護師はそういうもんだよね。ごめん、いつまでも苦労させて。僕も、高校が終わったら、公園の掃除くらいしかできないかもしれないけど、頑張って何かするよ。」
母親「あら、あんなに大学へ行くって、張り切っていたじゃない。」
伝心「それはもう無理なんだ。それに、うちの環境だって、勉強に専念できるような家庭ではないでしょ。やっぱり、僕みたいな人が、大学にいくのは無理なんだよ。学力的にも、金銭的にも。」
母親「でも、お父さんも私も、あんたが本当にやりたいことをやってくれたほうが嬉しいけどね。無理して自分を隠して働くよりも。」
伝心「できないよ、そんなこと!」
母親「どうしたの?」
伝心「だってそうじゃないか。きっと、大学というのは、金持ちのやる気がない人のための施設なんだ。僕たちみたいな家庭の子が行くところじゃない。」
母親「でも、国立の大学であれば、何とかなるわよ。それに、奨学金をいただくとか、やり方はいろいろあると思うわ。」
伝心「国立だって、予備校にいったり、模試を受けたり、家庭教師をつけたりしないと合格できないんだから、同じくらいお金がかかるよ。それに、国立のほうが、入るのだって大変じゃないか。その逆ならまだわかるけど、、、。」
母親「いったいどうしたのよ。昨日まで一生懸命勉強していたじゃない。」
伝心「それに、学校だけでは、大学にいくための必要なものが全く得られない。今の学校の勉強は、本当にレベルが低くて、話しにならないほどだ。でも、学校には行かなきゃいけないし、必然的に予備校にも通わなければならないから、結局、大学に合格するために必要なものは、こういう家庭だと何も得られないんだよ。だからもう、大学へ行くのは無理なんだって、はっきりわかったから。」
母親「なんだか、もったいない気がするわ。あれだけ頑張っていた子が。」
伝心「そうだね。欲を言えばもっとお金がある家に生まれてきたかった。そもそもお父さんが、障害年金で暮らしているのが間違いだった。どうせ、そういう人は子供を育てる経済力などないんだし、得られないことも知っているはずなのに、どうして、子供というものをほしがるんだろう。」
母親「そんなことは言ってはいけないわ。お父さんだって、生きている間は幸せだったと思うわよ。」
伝心「でも、生まれた側の身にもなってくれ!」
母親「ごめんね。あんたを幸せにしてやれなかったね。」
伝心「ううん、いいよ。仕方ないことだもの。だから、大学がどうのこうのは、もうこりごりだ。これからは家のために、働くよ。」
母親「ごめんね。」
伝心「いいよ、お母さんが悪いわけじゃないよ。お父さんだって、さんざん迷惑かけたけど、悪い人ではないことを知っているから、もう、人並みの幸せを求めることはやめにするよ。今まで本当にごめんなさい。これからは、違う面で幸せを探すよ。」
そうはいっておきながら、心の内では別の事を思っていた。
母親「ごめんね。」
伝心「いいよ、気にしないで。お母さんが泣かれるのは、本当に辛すぎる。ちょっと、外へでてもいい?もう東大は受験しないから、そんなに力を入れて勉強する必要もないし、今まで、勉強ばかりしてたから、久しぶりに外へ出てみたいんだ。」
母親「いいわ。」
伝心「ごめんね。すぐに帰ってくるから。お母さんの前で泣くのは見せたくないから、、、。」
逃げるような気持で、伝心は椅子から立ち上がり、急いで玄関から外へ出た。
外は真っ暗だ。外へ出たとしても、ショッピングモールで爆買いをすることもできないし、ゲームセンターに行くお金もない。仕方なく公園に行って、池の周りをぐるぐると回った。
歩きながら、涙が瀧のように流れ出した。本当は思いっきり叫びたかった。でも、そんなことをしたら、おかしな人と思われてしまうことも知っていた。いっそのこと池に飛び込んでしまおうか。伝心は、泣きながら池のほうへ近づいていった。
声「どこへ行くんですか?」
はっと気が付く伝心。
声「こんな時間に池に行って何をするんです?」
振り向くと紫穂だった。
伝心「佐藤君。」
紫穂「生憎ですが、そこの池では死ねないです。たった50センチくらいの深さしかないから。」
伝心「佐藤君こそどうしてこんな時間に?」
紫穂は、また本のたくさん入った風呂敷包みを抱えている。
紫穂「ああ、校長先生と、補習をやってました。」
あの、秘密の授業がまだ続いていたのか、と思うと、伝心はさらに池に飛び込みたくなった。
伝心「佐藤君、君はどうしてそんなに勉強しようと思うんだ?行きたい大学でもあるのかい?もし、大学にいきたいのなら、ご家族はOKって言ってくれているの?」
紫穂「いえ、ありません。国公立を狙っているわけでもなければ、他の名門私立を狙っているわけでもありません。ただ、勉強ができる時間は今しかないからです。」
伝心「そんなの、果たして理由になるのかな。」
紫穂「事実そうですから。」
伝心「でも、君がいくら勉強したいといっても、家族の都合で、あきらめなければいけないこともあるんだよ。だって、うちの家族を見ればわかるだろ。」
紫穂「確か、お母様だけでしたよね。お父様が亡くなられて。」
伝心「うん。正直に言うとね、お父さんが亡くなってくれた時は、うれしいと思ってしまったこともあった。でも、亡くなったからといって、障害というものが消えるわけではないんだね。お父さんが存在しなくても、あのうちは精神障碍者がいたということで、誰からも相手にはされないし、お母さんだって余計に働くのが大変になった。人間は、死んでおしまいだというけれど、こうやっていつまでも残ってしまうものだから、永遠の命というのはもしかしたらそういう事なのかもしれない。」
紫穂「お父様、鬱になったんでしたっけ?」
伝心「いや、それどころじゃないよ。もっとひどいのだよ。少なくとも亡くなるまでに、五回くらい医療保護入院になっているから。」
紫穂「それでは、ものすごい人件費がかかりますね。」
伝心「そうなんだ。だから、一気にうちは貧乏になってしまった。家を売ってお金を確保して、病院に払ったこともあったけど、それでも足りなかった。もう、毎日毎日貧乏貧乏とからかわれて、学校に行っても生きた心地がしなかったよ。」
紫穂「なるほど。それで東大に行って見返してやろうと思ってたんですね。」
伝心「でも、お金がないと何もできないよね。それをするためには、いろいろ準備が必要で、それを確保するにはお金がないとできない。これに早く気が付いて、別の道を取れば、また幸せになれたかもしれないけれど、もう遅すぎるよ。だから、僕、生きていたって仕方ないんだ。」
紫穂「紙に書いたらどうですか?」
伝心「書く?何を?」
紫穂「だから、今言ったセリフをです。」
伝心「それを紙に書いて何になるの?」
紫穂「どっかに投稿してみたりとか。少なくとも同じ失敗をしてしまった人には、ものすごい勇気づけというか、参考書になると思います。それに、」
一瞬、言葉が止まってしまう。
伝心「それに?」
紫穂「ああ、ごめんなさい。頭の中でいつまでも悩んでいて、どこかに吐き出さないで置くと、お父様の二の舞になりますよ。つらいものをため込んでおくとね、おかしくなっていくのが人間というものだし、ご自身もつらいまま生きていくのはまず不可能ですから。そうなる前に、紙にかいて、出しておくことも必要ではないですかね。」
伝心「でも、そんな紙、どこにあるの?」
紫穂「原稿用紙のことですか?なら、コンビニでも買えますよ。じゃあ、僕は、用事があるのでこれで失礼しますけど、、、。」
紫穂は、軽く敬礼して、頭が痛いらしく、額に手をやりながら、公園を歩いて行った。
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