陽炎の森(現代偏)88 太郎がいやはやビックリしました幸恵の本家が残っているのも、真一朗さんのお父さんのお陰ですよ、あの戦争で信一さんのお父さんが戦死していれば、信一さんは生ま


陽炎の森(現代偏)88


太郎がいやはやビックリしました幸恵の本家が残っているのも、真一朗さんのお父さんのお陰ですよ、あの戦争で信一さんのお父さんが戦死していれば、信一さんは生まれてこなかった、

のですよ、しかも偶然声をかけた人がその人の息子さんとは世間は狭いですね、信一さんのお父さんが真一朗さんに引き合わせてくれたのでしょうと、酒を注ぐので真一朗も注ぎ、メイ、

が信一に注ぎ杯を重ねたのです、


しかしマルと聞いたときは驚きました、大きな犬で小学校の校門までついて来て、どこかに遊びに行くのでしょうが、帰る時は校門で待ってくれていた覚えがあります、とても利口な犬、

でした、なつかしいです、明日はマル良かったなあと声をかけてやりますと言と、メイが旦那様が子犬を取り上げても怒りませんでしたね、ここで飼っていたマルが乗りうつったのかも、

しれませんというと、


奥さんがきっとそうだと思います、マルが帰って来てくれたんだわと目頭を押さえたのです、今日は愉快ですねおおいに飲みましょうと信一がいい、ひとつ太郎さんのブラジルでの話し、

をしてくれませんかと頼むと、そうですねと考えると、幸恵があの遭難話はというので、そうかといい話はじめたのです、日本で考えられない事ですが、自分の農園で遭難しかかった、

のです、


広いとうもろこし畑がありまして端までが10KMですから農薬は飛行機でまくのです、農場には大体滑走路がありましてセスナという小型飛行機を持ているのです、ある日農薬散布の為、

飛び立ち農薬を散布していたのですが3回目の折り返しをした時、エンジンがプルン、プルンと言うので見ると燃料が0を指していたのです、一番下の赤線までハリが下がったのに気づ、

けば簡単に滑走路まで戻れるのです、


しかし0以下ですからすぐエンジンが止まったので降りる場所をさがすととうもろこし畑の先に開墾していない野原があるのでそこに降りたのです、セスナはグライダーと同じで、

エンジン、が止まっても滑空で着陸できるようになっており、とても安全な飛行機なんですよ、降りたのはいいですが自宅からは40KM位離れており車があれば一時間もあれば帰、

れるのですが、


歩くと10時間はかかります、当時は携帯電話もなく、農薬散布の時は農薬を被るおそれがあるので、農場には誰もいないのです、気がついてくれるのは随分時間がたつてからの事に、

なります、その時間だと夜になり、飛行機による夜の捜索は困難ですから一晩飛行機の中で寝るしかないのです、無線で助けを呼ぼうとスイッチを入れましたが、使った事もない、

のでバッテリーが上がっていたのです、


何か知らせる方法はないかと考えていて父の話しを思い出したのです、父は3世ですが日本の戦国時代の武将が好きで日本語が読めるものですから沢山本を読んでいたのです、その中、

でも武田信玄が好きで子供の頃から信玄の話しを聞かされたものです、その中に信玄は戦いをする時には敵より早く戦場にかけつけ有利な場所を確保する為直進の道を作ったのだ、

そうで、


山梨の屋形から扇じょうに直進の道を作り、これを棒道とよんだそうです、道を作っても敵の情報がいち早く伝わらなければ兵を動かせません、そこで遠いところから屋形までに、

情報が直ぐ伝わる工夫をしたのだそうです、それはのろしです、山の頂上にのろし台を作り、山から山に伝えれば100キロ先でもアッという間に届きます、赤けむりは敵が攻めて、

来た、緑は引き上げた、黄色は敵が来そうだ、と種類を分けて、


いつでも分かるようにしたという事を思い出し、火をたいて赤いけむりのでる草を探しのろしを上げたのです、赤いけむりは遠くからでも見る事が出来、使用人が気がつき飛行機、

が格納庫にないのでどこかに不時着したに違いないと、総員で車を使いとうもろこし畑の周辺を探して見つけてくれたのです、これも父が話して聞かせてくれたお陰だったんです、

よと話しをむすんだのです、


太郎さんの農場はそんなに広いのですか、日本では考えられませんと皆が感心したのです、それでは房子三味線を弾いてくれ一曲歌おうというとお前さんが歌うなんて久しぶりです、

ねと、奥から三味線を取り出し音あわせをすると、会津磐梯山をやりますよと歌い始めると、奥さんが三味線で会わせ、皆が手拍子を入れたのです、


メイが三味線を貸してくださいというので、房子がメイさんは弾けるのですかと三味線を渡したのです、それでは私と旦那様で芸者ワルツをうたいます、太郎さんと幸恵さん、

信一さんと房子さんは踊ってくださいというと、え~私達がですかというので、若いころは踊ってでしょう、ハイ立ってと二人を立たせて、三味線をあわせ歌い始めたのです、


最初ははずかしそうにしていましたが、段々慣れてきていい雰囲気です、曲が終わると、幸恵と房子が冷や汗がでましたわというので、とてもいい雰囲気でしたよとメイが二人、

に酌をすると飲み干し、何十年ぶりかしら貴方とおどるのはと房子がいうと、幸恵も私も同じですよと笑ったのです、それにしてもメイさんは三味線が上手いですよと二人が誉、

めたのです、


それから次々と順番に歌いメイが三味線であわせて盛り上がったのです、マルは楽しく皆が騒いでいるのを聞いて、これから毎日お乳を出す為に餌探しをしなくてもいいと思った、

のか、いびきをかいて寝ていたのです、子犬達は母犬に寄り添い幸せそうでした、


真一朗が信一さんは航空自衛隊でどんな仕事をしていたのですかと聞くと、輸送機のパイロットでした、父が歳をとったので後を継ぐ為に退官したのです、空の上はいいですね、

雲の上を飛んでいるとスカッとしたものです、でも山歩きもいいですよ山で野宿する時もありますが、マルがピタリ傍に寄り添って寝るのです、温かくていい気持ちですよと言、

うので、


またマルと一緒に山歩き出来てよかったですねと房子が酌をすると、早く子犬が大きくならないかなあと笑ったのです、それでは遅くなりましたので休みましょう、二部屋に寝間、

の用意と風呂上りのビールを用意しておきます、温泉に入って来てくださいというので三人で温泉に行ったのです、湯船につかると、信一が今日は楽しかったですよと言うので、

太郎が又日本に帰ってきたら寄りますと言ったのです、


太郎が私が生きているうちにお二人とも是非ブラジルにも来てくださいというので、真一朗が米軍のIDカードをもつていますから米軍機なら簡単にブラジルにいけます、信一さん、

こんど行きましょうというと、え~米軍にも所属していたのですかと聞くので、米空軍の予備役少佐でもあるのです、大統領命で一年に一回訓練を受けなければなりません、


私が言えば真一さんも元パイロットですから米軍のIDカードを取得できます、奥さんともども太郎さんを表敬訪問しましょう、勿論マルと子供達も一緒ですというと、信一がそれは、

すごい、是非真一朗さんと雲の上を飛んでみたいものです、父が羨ましがる事でしょうと笑ったのです、


温泉から上がり部屋に行くとメイがビールを渡し、私達も温泉に入って来ますと風呂へ行ったのです、暫くして戻って来てビールを飲み、美味しい、今日は順風な巡察で良かった、

ですねというので、そうだね、色んな人と出会って楽しい旅だねと乾杯したのです、





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