第5話 ねぇ、翼?そっとひとりで、月の夢をみせて……



翼がいないから、

なにもないといっていい夜に、

星空が、静かな夢をみさせてくれる。


翼がいないから、

あと少し、生きていている意味ないや、

息するのも無意味になるかなぁ。


ただ生き永らえてる、

命のために生き、

涙ながす日のみ多く、

生き永らえるじぶんのみすぼらしさが、

マイナスの光線で、

たまに光り輝いたりするとき、


愛して欲しいと、

こいねがってしまう、

ほんとうがある。


それは、ひとりの問題じゃなく、

人柄じゃなく、

誠意じゃなく、

無心でさえ、ない。


ただ、愛おしい。

翼のすべてが、愛おしい。


じぶんでさえ理解できない

このからだとこころを

愛して欲しいのが、ほんとうなら、

孤独さえ吹き払う、

あたたかな夜風のなか、

煌めく月光の、

水浴びをし、


ばら撒かれる月よ、

何処(いづこ)へと舞う、

追おうとするが、

恥ずかしそうに、

(来るな)

という。


ねぇ、翼?

星空にまぎれる照れ屋さん、

それも、いいものね。


なにがいいたいんだか、

わからない夜に、

ただ、スマホの文字だけか、

時をしらせる無粋なロボさんね?


なにを成したいんだか、

わからない瞳は、

けっして見ることができない、

みなみの空、南十字星をみたといいはる、

未来の天空翔ける希望の色と、

地を這う夢を同時にみるという

優しいさくら色の、奇跡に満ち満ちている。


覆いかぶせられる、奇跡の夜空に、

すべてを委ねる、ああ、翼よ。


それだけが真実だと、言い聞かせ、

翼に殉じても、いいんだ。


あるいは、『翼に殉じたいんだ』

だれにも、気づかれず、そっと…………







……ひとりで、さ……







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