第25話 戦国時代から未来へ

 どれくらいの時間、意識を失っていたのだろう……


 目を覚ますと……人通りの多い道に倒れていた。




「……きゃー。目を覚ました!!」


「死んでるのかと思ったわ」


 横たわったまま目を開けると、女が二人立っていた。




「……大丈夫ですか?」


 どこか見覚えのある女が、話しかける。



「……あぁ。大丈夫だ」


 見覚えのある女……なのに……どこか違う。


 この女たちの着ている着物だ。


 なぜか……ヒラヒラした裾野が広がった着物を着ている……


 まだ、意識が朦朧もうろうとした頭で考える。




「お前たちは……何者だ」


「私は近衛公爵の妹・絶です」


「私は直江男爵の娘・ふえです」



「……なんだと!! ……今なんと申した」



 よく見ると、髪型や服装は違っていても、絶とふえである。



「上杉伯爵様ったら……どうなさいましたの? 」





「……なぜ……お前たちはここにいるのだ? 」


「もぅ……上杉伯爵様ったら……ご冗談がすぎますわ!! こんな所に倒れていただけでも驚きましたのに……ホホホ」


「私たちをお忘れになるなんて……ひどいわ」




「なぜ……俺はここにいるのだ? 」


「ここに倒れていらしたのを私たちが、お助けしたのですよ」


「私たちの馬車でお送りいたしますので、どうぞこちらへ……」



 かすむ頭で……馬車に乗り込む。


 馬車から見る景色は、まるで違う世界のようだ。



「ここは……どこなのだ? 」


「あれは……鹿鳴館ろくめてかんですわ。謙信様……是非わたくしとご一緒してくださらない」


「絶様……何を言っているの。謙信様は私と一緒にパーティに出かける予定なのよ」


「まっ……ふえさんったら……謙信様は私と一緒に行きたいに決まってるのに、何言ってるのよ」


 二人が口喧嘩を始める。



「今の……元号はなんだ? 」


「まっ、謙信様ったら……今は……明治ですよ」


「西暦1884年ですわ! 」



「330年後の未来に……俺は生きているというのか!!」




 絶望感に襲われる謙信のことなど、誰も気づかずに馬車は上杉伯爵邸へ到着する。





「おかえりなさいませ」


 そこに立っていたのは……影家だった。


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