第26話 一夜の夢
『極楽も 地獄も先は 有明の 月の心に 懸かる雲なし』
この先が極楽だろうと地獄だろうと、心は雲のない月のように晴れ渡っている ……上杉謙信・辞世の句
◇ ◆ ◇
「……おかえりなさいませ、謙信様」
「……影家?!」
「……謙信様……どうなされたのですか? ご気分が悪いのですか? 」
「……私たちが謙信様をお助けしましたのよ。お怪我はしていないようだけど……少し頭を打たれているようなので、今日はゆっくりお休みになられると良いわ」
「……そうでしたか。絶様、ふえ様……ありがとうございました」
「……じゃ、私たちは先を急ぎますので、今日のところは失礼いたしますわ」
「あっ……そうそう。謙信様……今週末の鹿鳴館でのパーティーは、謙信様がエスコートしてくださる約束をしてくださったと父の直江から聞いております。私……今から楽しみにしておりますのよ」
「……まっ。ふえさん……お父様に頼むなんて……ずるいわよ」
「私も、兄・近衛と一緒にパーティに出席しますのよ。謙信様……ぜひ、私とも一曲踊っていただきたいわ」
「……だめよ。絶さん。謙信様は私をエスコートしてくださるの」
「まっ……ふえさん……私も兄に頼みますわ!!」
ゴホッ……、ゴホッ……。
影家が二人を見かねて咳をする。
「あら……はずかしいわ。それでは……謙信様、早く良くなってくださいね。それでは……ごきげんよう」
二人が去った後には、静けさが漂う。
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