第23話 飛天
謙信は、京の大徳寺に足を運んでいた。
大徳寺は、
一休の人生も波乱万丈であり、どこか謙信の心と通じるものがあった。
『
人生など……この世とあの世の間のほんの
一休は、十六歳の頃、尊敬する師・
四十三歳、大徳寺内の派閥争いが起こり、大勢の自殺者が出たことで、堕落した僧界(この世)に失望し、山へ入って断食死を試み二度目の自殺未遂をする。
七十三歳の時、「美しいエクボの寝顔を見ると、
死をも覚悟するほどの悲しい出来事……
そして……
一生に一度の……激しい恋も知っている一休に……なぜか謙信は惹かれるのである。
ある日、一休は、琵琶湖岸の船上で座禅を組んだ。カラスの鳴く声を暗闇に聞いて「カラスは見えなくてもそこにいる。仏もまた見えなくとも心の中にある」と悟りを開いた。
一休は死の前年、等身大の
一休は禅僧でありながら酒を呑み、女性を愛し、肉を食し、頭も剃らず……一貫して権威に反発し、弱者の側に立ち、民衆と共に生き、笑い、泣いた人生を生きたのである。
危うさと繊細さは……謙信とよく似ていた。
一休のメッセージがスーッと心に入ってきた謙信。
荒んだ心に答えを見つけたような気さえしてくる。
ここへ来てよかった。
謙信は、ようやく心の平安を見つけた。
謙信は仏殿へと案内される。
「謙信殿……どうぞこちらへ……」
案内をした
天井には見事な飛天の絵が描かれている。
その飛天の姿は……
「………… 伊勢」
まるで天女になった伊勢が舞っているような姿である。
謙信は心を震わせた。
「……伊勢。そなたはこの世にいないが……心はいつもそなたと一緒だ」
謙信は、そっと涙を流した。
のちに、法堂に描かれた「鳴き龍」の天井画は、この時の謙信の涙を伝え聞いた狩野探幽が描いたものだ。
大徳寺参拝でみた、
そして……謙信はこの時、大徳寺・
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