第4話 朝
倫の風邪が全快した。
鼻水も熱も引いて、久しぶりに元気な休日をぴょんぴょん飛び跳ねながら謳歌している。
「ママ、サンドイッチにトマト入れた?」
「もちろん」
キリが顔を歪めた。全部じゃないよ、とは教えてあげない。ご機嫌な倫がころころと笑う。
「キリ、このズボン似合ってる?」
「最高だ」
きゃあ、と倫が青のズボンを履いた足をぴょんぴょんと跳ねさせてはしゃいだ。
冬にしては珍しく、暖かな日差しが降り注ぐ今日、近くの公園にピクニックに行くことにしたのだ。倫の全快祝いとして。
ここしばらくばたついていて、倫に構ってやれなかった穴埋めも兼ねて。
私と倫の準備は大方終わった。問題はキリだ。
意外にも寝汚いキリは、今さっき倫の体当たりで目を覚ました。
キリが眠るソファーから鈍い悲鳴が上がったのを気の毒に思いながら、せっせとサンドイッチにトマトを詰めた私も私だけど。
寝癖まみれのボブカットを、手櫛で乱暴になでつけながら、その辺にぽいぽいと脱いだ服を脱皮した皮のように捨てて行く。そのあとをしかめ面の倫が服を拾い集めながらついていく。
「キリ! パジャマは畳んでしまわなきゃダメなの!」
「う〜ん、向いてないんだ」
サンドイッチを詰め終わった手を休めて、ご立腹の倫からキリの抜け殻を受け取る。
「シワになっちゃうでしょ、もう」
「結局ママがやるの……」
ふわ、とキリの大きなあくびが聞こえた。これは、出発が遅くなりそうだ。
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