第7話 コラボ動画で遊んでみた! Aパート

「魔王様、もうすぐごはんできますよー? また“勇通部”観てるんスか?」


「うむ。昨日みたいなゲーム実況またやらないかと思って……おっ、投稿されたぞ」


「って魔王様、もしかして投稿時間までずっと待ってたんスか!? いつでも観られるのが“勇通部”の利点って言ってたじゃないスか!」


「うるさいうるさい! どれ、今日の動画は――」


『ゆーゆー! 勇者アマリリスです! 今日はですね、大陸東にありますフォスの町を散策してみたいと思います!』


 来た来た! 今日も可愛いなぁMARIRINは!


「お……? この隣にいるのは誰だ?」


『それでですね、今日はなんと! この町で出会った勇者仲間のスノードロップちゃんと一緒です! コラボ企画ですよ!』

『は、初めまして……あの、スノードロップです。よろしくお願いしますっ!』


 ほう、勇者スノードロップ。初めて聞く名だ。


 勇者同士のコラボというのは、たまに耳にする。勇者どもが徒党を組んで我が軍団に逆らうという、愚かしい企みだな。


 まぁ、烏合の衆がどれだけ集まろうが、我が魔王軍はまったく動じないが。弱い勇者など、何十人でもコラボするが良い。


「しかし……このスノードロップという勇者……その……」


「うわっ、エロいッスね!」


「ストレートに言うな、デモーニア。しかし本当に扇情的な格好だな……」


 身体の大部分を露出している鎧。

 短い金髪と褐色の肌が相まって、とても淫靡だ。


『この町は二〇〇年の歴史があって、中央の塔は先の魔王大戦で見張りの役割をしていたんですって。その塔の周りにある市場がとっても有名で――』


 MARIRINが説明していても、隣のスノードロップの衣装が気になって頭に入ってこない。


 道行く町人も彼女の姿に驚いて振り向いている。


 人間の文化はよく知らないが、奴隷だってもう少しマシな服を着るのではないか?


「これは……男性に受けそうな勇者だ……しかし……」


「魔王様、ちょっとこっちの水晶玉借りていいスか?」


「お、おう」


 旧式の水晶玉を操作して、別の動画を呼び出すデモーニア。

 私はもっと大画面で動画を観たいので、この水晶板を買ったのだ。


「スノードロップって勇者、アマリリスよりずっと前から旅しているみたいッスね。ある時を境にそういう格好が増えて、アクセス数もうなぎ登りになったッス。ご想像の通り、男性視聴者にそこそこ人気があるみたいで」


「ここまでやって“そこそこ”なのか……」


 何がウケるか分からないのが“勇通部”の恐ろしいところだ。


「……いや、本人が好きでやっているのであれば、私は何も言うまい」


「そうッスけど……」


『それじゃ、市場に突撃したいと思います! 見て見てスノードロップさん! 美味しそうな食べ物がいっぱいあるよ!』

『そ、そうですね、とても美味しそうで……色んな食べ物が、その、いっぱいで』

『あっ、見て見て! 綺麗な服も売ってる!』

『は、はい、綺麗……ですね』


 さっきからアマリリスの言葉を繰り返してばかりのスノードロップ。

 これでは彼女が出演する意味がない。


『スノードロップさん、もうちょっと奥まで行ってみよう!』


 そう言ってアマリリスはスノードロップの手を引く。

 まるで姉妹のようだ。


『…………?』


 そこでアマリリスの動きが止まった。


 かと思いきや、急にカメラの方を向いて手を振る。


『え、えっとぉ、買い物シーンは長くなるから、カットしますね! 次回は買ったものをひとつずつレビューしていきたいと思います! 今日は短いですけど、このへんで!』


 今日はやけに短い動画だった。


 せっかくのコラボなのに、そんなんでいいのか?


「ね、魔王様。アタシの気のせいじゃないといいんですけど、あのスノードロップって勇者――」


「言うなデモーニア。私にも分かっている」


 色々な意味で、次の動画は目が離せなくなりそうだ。

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