第21話 学園
遂に学園生活は始まることとなった。
家では慌ただしく準備が始まる。
私の物に関しては、あらかじめ準備や手配のされていたものが多かったけれど。クロードは一からの準備のため大慌てのようだった。
私が学園に入学できないかもってことでスッカリクロードは入学するってことを言いそびれていた。
公爵家に滞在しているクロードの準備が終わりませんでしたというわけにはいかないようで、学園の入学に向けて沢山の業者が家に出入りする。
フランの婚期問題も深刻だ。私が学園に行くなら行かねばなりませんと言いだしたのだ。
私が学園に入学したことで、マリアの公爵家への養子の話はお流れになった。
赤で呼ばれるほどの魔力がある者が外に養子に行ってもいいのか! などという話も出たようだが父と母にしたら、いくら魔力が高いとはいえ実の娘がいるのに、さらに女の子を今さら養子にする必要はないと思ったようで私の入学をこれ幸いにと断る材料にしたようだ。
マリアの代わりにクロードの養子の話が持ち上がったのだ。
性別が違うこと、子供のころから家にいたこと、赤で呼ばれるほどの潜在能力の持ち主だったことも大きい。
けれど一番は身分が平民であるクロードに他の貴族が多少強引な手段で養子に迎えたいとお願いしてきたり、後見人の話を持ちかけてくることが懸念された。
クロードと普通の生活を送れるようになり我が家に使えるようになっていたクロードの母には後見人として我が家がつくこともできるが、やはり養子に入ったほうが貴族社会で一番クロードを安全に守れるのではないかという話がされた。
クロードに養子の話が持ち上がった理由はそれだけではない。
マリアが養子に入らなかったことで、私に縁談が舞い込んできたからだ。その相手はマリアの穴を私が埋めるかのように、第二王子ジュリアスだった。
いろんなことがトントンと持ちこまれ私は混乱していた。
そして、養子のこと私への縁談が持ち込まれたクロードがまさかの行動に出たのだ。
縁談に関しては王族からのお話だったけれど。謎の葉っぱの研究にいそしむ変わり者だけど可愛い娘が王妃候補として務まるか問題などがあったようで。
よく考えなさいと判断は私に一任された。
どうしたものかしらと廊下を歩いていると、獣姿のクロードが私に向かって一直線に走ってきた。
今日は自らモフモフされにくるなんて。よし、ドーンときなさい、存分にモフってさしあげましょう。モフモフし続けたことでスーパーテクニックを身に付けたこのゴールドフィンガーで。
悠長なことを考えいた私にフランの金切り声が聞こえた。
「お逃げくださいお嬢さま」
そんなこと言われても、もう思いっきり跳躍されたら捕まる射程圏内なのだけれど。
えっ、我が家にいる黒豹だからてっきり、私に一直線で駆けてくる獣がクロードだと思ってたけど、本物の豹なの? だとしたら私死ぬよね……。
広げた腕を戻す暇もなく、クロードは私のところに到達した。
「アイリス、背に乗って」
あっ、話したということは豹ではない。噛み殺されたり、爪の餌食になる心配はなさそう。
「いや、でもフランがめちゃくちゃ怒って……」
後ろではアランも網を持って走ってきてるし、ただ事ではない。
「乗って! 一生のお願い」
そういって、ぐりぐりと私の手にクロードは頭を擦り付ける。クソ、これに弱いのを知ってやがる。ここで一生のお願いを使われるとは。
ちょっと怒られるくらいよね。私は後ろの騒動を尻目にクロードの背中に飛び乗った。
制止の声が聞こえるけれど、止まるつもりがあればクロードはとっくに止まってるわけで。
私は振り落とされないように首にしっかりとしがみついた。
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