第16話 フランの血管切れないか心配

 フランはすごい剣幕で部屋のノックもせずに入ってきた。

 何も悪いことしてないのに、再びもふもふしようと手を伸ばした私と。

 私になでられまいと毛を逆立てているクロード。


「ちょっとまってください」

「何をされていたんですか?」

「いや、ただちょっとお腹をモフモフと」

「無理やりされてたんですか?」

 まってまってこの流れはまた私怒られるルートじゃないの。


 結局クロードは私から逃げてしまうし。

 フランは血管が切れるんじゃないかってほど怒ってたし。

 もう、その怒り方は前回の比ではなく、私も思わずその剣幕にベッドの上に正座するほどだった。

 やってることは今までフランの前でもしてたことなのに…なんで今回は怒られちゃうのかななんてことを思っていた。


 そして、あの称号が恐ろしい効果を発揮しだしたのだ。

 といっても、誰にでもかれにでもラッキースケベになるわけではなく。

 主人公が一定レベルの可愛い女の子、とくに幼馴染や憧れの先輩なんかには念入りに発動するかのように。

 まさに人を選んでますよね?と言わんばかりに見事発動。


 となると、常時この屋敷にいる容姿が整ったクロードが当然の筆頭犠牲者となった。

 ルートお兄様ともあったけれど、そこは血縁である。

 ぶつかる→上に乗っかる→ごめんなさいお兄様→こちらも急いでいたんだ、すまない。でおしまい。

 お兄様はクロードと違って、従者がついて歩いてるのでぶつかった場合でも私が走ってたのではなく、お兄様が走ってて私とぶつかるところをみていたのもよかった。


 ただ、何度もいうけれど、わざとではない。

 クロードにしてもお兄様にしても、むしろあっちからきてましたよ!ってことが大きい。

 向こうの不注意でのことや不可抗力でしかたなくっていう。

 クロード自体怒るに怒れないような感じ。

 私の場合は、男性が女性に対してラッキーすけべってのと違い、女性が男性に対してラッキースケベのため『エッチ!』などと言われて頬を叩かれるようなことはなかったのだけど。

 いかんせん回数週に2度はある。



 たとえば、廊下でぶつかる。

 私が上に乗って、クロードの胸には私の手がしっかり、これ年齢をもっと重ねていて、男女が逆だったら絶対おっぱいムニュってなってたよ…ってことや。


 あらまぁ、大変お水をかぶってしまって、服が透けてしまっているじゃありませんかってところに遭遇。

 フランに見つかれば私のせいじゃないのにこっぴどく怒ってくるものだから、あえて遭遇しないように部屋にこもり、窓から外を眺めていただけでも、まさかの称号のすごさを発揮。


 あら、庭にクロードがいるのね、庭師の仕事を手伝っているだなんて感心からの虫でもはいったのか、突然上を脱いでパタパタと振ってるところで、庭を見つめていた私とクロードの目が合うこと1回。

 もううっかり窓から外すらも眺められない。



 もちろん、クロードだけではなく。

 スライムの粘液を持ってきたお兄さんがイケメンであればもう私の称号の餌食となった。

 ぶつかるからのおっぱい触るルートや、無駄に腹筋がチラリとなる。

 何だこれは…本当になんなのだ。

 持ってきたのが一度さえないおじさんだった時はまさにピタゴラスイッチ的なことがおきて、おじさんころぶ→粘液のはいった袋が宙を舞う→私のほうに落ちるのを何とかしようとしたクロードが私の前に立ちはだかる→正義感あふれるルートお兄様が剣で一刀両断→当然袋が破れて中身が…→クロードがローションまみれのように卑猥なことになる→私汚れない。



 クロードは可愛い、可愛いけれど、私のせいじゃないのにまるで私が悪いことのようにその都度いわれ、おやつはなしになるのでもう散々である。

 かといって部屋にずっと閉じこもってるのは嫌ということで、クロードに手紙を書くことにした。



『しばらく距離を置きましょう』

 っと。



 そしたらさらに大変なことになった。

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