第15話 冤罪で

 やってない、彼が自主的にそうなったんです。

 私は無実です、冤罪だ!

 私は必死にそう訴える。

 しかし信じてもらえない。


 あやしげな実験もとい薬品の効果を試すのに、同じような感じで迫ってお願いして試してもらっていた前科があった私はメイドからの信用がなかった。

 確かに、実においしいアングルで追いかけていた。

 なんか途中から目的がちょっとずれてる感じになってるなぁって実感もありました。

 ですが、私はあのような卑猥な格好をお願いなどしてないし、追いかけっこは不可抗力だった。

 それに彼も私が追いかけるのを待ってた、うん、待ってたのよ余力があったもの余力が…。

 それに対して、「お触りされてましたよね」と冷たくツッコミが入る。

 耳じゃん、耳は別に触ってもいい部位でしょうが!!

 でも、私も耳を誰でも触っても気持ち悪くない…とは言えないけど、私とクロードとの間柄だと友達だしセーフセーフでしょ!

 だんだんセクハラじゃない同意がありましたって感じになってきたけど、本当に冤罪だ。


 言えば言うほどメイドの視線は冷たく私に刺さる。

「お嬢様」

 フランの声は凄く冷たい。

「はい…」

「当分、おやつはなしです。そしてクロードの近くに寄りませんように」

「そんなぁ!!!完全に黒の人に対する対応じゃない。というか、私まだ7歳よ。追いかけっこしてただけで、この仕打ち重すぎる」

「追いかけっこですかぁ…お嬢さまは パ ン ツ を脱がせて、見えそうで見えない状態の人を追いかけまわす遊びを鬼ごっこだとおっしゃると…」

 パンツを強調するの止めて。

 確かにお尻見えちゃうとか見えなかったとか、しっぽが上がってればアウトだったとか思ってたけれども…けれどもよ。

「いや、改めてそう言われると…実にヘンタイチックな行動なんですけれど……。本当に事実は違うのよ。私だけじゃなくてクロードにもきちんと話を聞いてから罰を言い渡すべきだわ!」

「罰をってことから少しは罰せられる可能性はあったと思われているでよろしいですか?」

「違うってば!!あーもう信じてよ。変態じゃないわぁぁぁあ」

 変態疑惑が晴れない。


 その時であった、扉がノックされたのだ。

 クロードがちゃんと服をきて登場したのだ。

 私のような上等なものではなく、質素なものだったけれど。

 七分丈の黒のズボンに白のシャツだけど似合っている。

 耳は相変わらず尻尾はズボンの中なのか見えない…せっかく生えているのだからズボンに穴をあけて出しておけばいいのに。

「あの僕が逃げ出したんです…。お嬢さまは悪くないです」

 ほら、聞いた、聞きまして?聞きましたわね?と言わんばかりにフランを見つめる。

「クロード庇ってはいけませんよ。やっていいことと悪いことがあるのですから、たとえお嬢様だとしてもアレはアウトでございます」

 フランはそれをバッサリと切る。

「いやいやいや、それが本当に真実ですからね。なんでか走り出したから追いかけただけよ」



 結局信じてもらえず、こっぴどく怒られた。

 無実なのに……。

 ひどい、あんまりだ。


 クロードがそれでも私に寄ってくるけれど、フランが引きずって連れていった。

 ルート兄様からも「アイリス駄目だよ」としかられる始末。


 しかも、ステータスを見たら恐ろしい称号が増えていた。

 ラッキースケベ、これ普通主人公につくやつだよ。

 確かにラッキーはラッキーであったようなそうじゃなかったような感じだけど。

 もし、私のほかにステータス見れるような人がいればどんびきだ。

 少なくとも女性についていい称号ではない。


 部屋でしょんぼりとして過ごしていると、夕食終わりに、獣の姿でクロードがやってきた。

 いつもは触らせてくれるまでに、いろいろあるのに。

 慰めるかのように、腹見せちゃって…、もうもう、もふもふはするけれど。

 するけれど。

「ごめんなさい」

 突然獣の姿で話したのだ。

「この姿で話せたんだ!」

 素朴な疑問がポロリと出た。

 てっきりミャーミャーとかしか言えないのかと。

「人型になれるのビックリした…よね?」

 えっ、人型のむしろ青年バージョンを知ってるので、まさか人型になれるかどうかを気にしてるかだなんて考えたこともなかった。

 ビックリどころか、なんでならないのくらいの気持ちでいたわ。

「えっと…獣人って聞いた段階で人型になれるのは知ってましたよ………」

「………」

 間である。

 気にせず私は腹の柔らかな毛並みを堪能する。

 お腹は温かなところもたまりませんなぁ。


「し…」

 あれ、何かまた話し始めた。

「ん?」

「知っててアレだけなでまわしてたの?」

「えっ?」

「僕人型になれるんだよ。動物と違うんだよ」

 私のモフモフからすり抜けてクロードが私から距離を取った。

「いや、そりゃ獣人さんなら…人型にもなれるものなのじゃないの?」

「だって、僕と話せたらいいのにって言ってたのに」

「そうね、だから獣人はいつから話せるか知らなかったから、早く話せるようになればいいなと思っていたけれど。そんなことよりもうちょっとだけ、ねっ」

 クロードにむけ手を伸ばす。

 その手から彼は逃れる。



「し…」

 ん?また『し?』

「し?」

「知ってたんなら僕のことなでまわさないでよ!!!!どんな気持ちでなでられてたと思ってるの。てっきりアイリス様人になれるって知らないと思ってたから僕も僕も」

「ちょっと、落ち着いて声を落として」

 だんだんとクロードの声が大きくなるので、フランが来ないか焦る。

「触らせてあげてたのに!!!!!」

「お嬢様ぁぁぁぁぁぁああああ」

 またタイミングの悪いところに!!!!!!!







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