第14話 人ではないもの
「クロードなの?」
私はおずおずと少年に真偽を確かめた。
少年はコクリと1度うなずいた。
おぉ、さすが攻略キャラである。
小さいながらも顔は整っており、耳としっぽが残ってるところがたまりませんなぁ。
するとマジマジと舐めまわすかのようにみていたクロードがさっと耳を両手で隠す。
そのしぐさもかわいらしい。
「お嬢様……心のお声が漏れております」
庭師がたしなめる。
あまりの感動で耳としっぽが残っているところがたまりませんな部分が口からでていたようだ。
「クロード?」
私が名前を呼ぶと走って逃げてしまった。
「待って」
慌てて後を追う。
何で逃げるの?
すごい性的な嫌悪を感じたのだろうか……でも、一応私の見た目はまだ少女だし、許されるんじゃないのか。
人と獣人では基礎能力が違う。
しかし私だってMPが悲惨な前衛タイプである。
一応レベルも1ではない。
だんだんと離されるけれどそれでもなんとかついていく、ここは私の家だ。
身体面で多少劣るのを、自分家ということで知識でカバーして追いかける。
あそこを通るならばこっちからくるに違いないという風に。
チラチラと後ろを気にしながら走る彼より、追いかける私のほうが心理的にも圧倒的に優位である。
だけど、こんなに沢山走ったことなくて、足がもたつく。
私はとうとう自分の足に引っ掛かり転んでしまった。
久々に派手に転んだ。
ビタンというのがふさわしくそれはもう派手に打ちつけた。
両手がすりむき、膝もすりむいているだろう。
痛い、子供の身体ということもあるのか、じわっと涙がでそうになる。
でも、それをなんとかこらえる。
クロードの足が流石に止まって、泣きそうな私を遠巻きに見つめる。
どうする、このまま痛みに任せて半分嘘泣きで大泣きしてみようか、でもそしたらクロードは私を泣かせたことで使用人に怒られる?
ハンカチを取り出すときに、ちょうどいいものを持ってるのに気がついた。
最初からこうすればよかったのだ。
足が速くなるハーブである。
私は粉っぽいそれを口に含む。
とてもじゃないけれど、単体では水なしに飲めた物ではないけれど、少量ならなんとかごまかしが効く。
彼の尻尾が私の動作をみてピーンとなる。
そんなにしっぽピーンとなったら、走る時お尻見えちゃうぞと思いつつも私は服の埃を払って立ち上がる。
私は風を切った。
でも、おいつかない。
さっきまでは手加減して走ってたってこと?
尻尾が下がったのでお尻がチラリはさけられているけれど。
しっぽ上がると、みえるかもとなんともいかがわしい光景である。
残っている粉末をさらに口に含む。
唾液じゃ嚥下できなくて少し咳きこむけれど、私はさらに速度を上げた。
手を伸ばす、もうちょっと。
私の手は彼の服をつかんだ。
グッと引っ張る。
速度が落ちる。
「パンツ履いてないでしょ!止まって」
私のその一言でやっと止まった。
これで止まるなら、最初からパンツのことを切りだせばよかった。
白い肌が真っ赤に染まる、獣耳だからわからないけれど、普通の耳ならきっと耳まで真っ赤だったことだろう。
見えないようにと必死に服の裾を押さえつけるその姿は…男女逆だったらやばかったのではないかなと思う。
「どうして逃げたの?」
クロードは何も言わない。
言えないのかもしれない。
ゲームでは確かに話せていたのに、なぜ話さないのだろう。
「その服のままじゃ困るよ。誰かにちゃんとした服をみつくろってもらおう?」
私がそう言うと彼は無言で何度もうなずいた。
下を隠すべきか、耳を隠すべきかといった動作をするのがかわいらしい。
それするくらいなら、また豹の姿に戻ったら?と言えばいいのだけれど。
その動作が可愛いからあえて言わない。
誰かに服をと言う割に、人が来ると隠れて耳と下を隠そうとするしどうしたらいいのか。
「よくわからないけれど、こっちは私に任せて」
そういって、クロードの耳を両手で押さえる。
モフっとした感触がたまらない。
ビックリとした顔でこっちをみる。
「隠したかったんじゃないの?」
「気持ち悪くないの?」
あっ、やっぱり話せたんだ。
「気持ち悪くないよ。モフモフしてる。この姿でも気持ちいいね」
私がそう言うと、クロードが泣き出してしまったのだ。
大声でそれはもうワーンがふさわしいくらいに結構派手に。
すると、そこをフランに見つかった。
耳を触られておおなきする少年。
少年は下半身が見えないように、シャツを両手で一生懸命に引っ張っていた。
「お嬢様!!!!!」
「えっ!? ちょっとまって」
「待ってではございません。今度は何をと思ってきてみれば!! 何をされてるんですか!!!!」
それはもうひどい剣幕で。
「大きな誤解があります、ありますよ! 私はただ耳を隠してあげようとしただけで」
「ほう……お話はべつのところで聞きましょう」
「本当なのよ。私はなにもしてないわ」
クロードの下半身はフランがしていたエプロンで見えないようにキュッと縛り隠されたのち、子供服を何か着せるようにと他のメイドに命令してからフランは私を引きずっていった。
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